アジアで唯一開催されるPGAツアー「ベイカレント・クラシック Presented by LEXUS」(横浜カントリークラブ)の会場で、タイトリストが2027年モデルの新「プロV1」「プロV1x」のツアーシーディングを開始した。2000年の初代登場以来、伝統的に米国ラスベガスで行われていたツアーローンチの舞台が、史上初めて日本へと移されたのだ。
画像: メディア向けに開催された2027「プロV1」シリーズのツアーローンチイベント。左から看板選手のジャスティン・トーマス、アクシネットのフォーディ・ピッツ氏、フレデリック・ワデル氏

メディア向けに開催された2027「プロV1」シリーズのツアーローンチイベント。左から看板選手のジャスティン・トーマス、アクシネットのフォーディ・ピッツ氏、フレデリック・ワデル氏

打感は軟らかく、初速は速い。JTが漏らした「ソフト・ファスト」の真意

その会場で誰よりも熱く進化を語ったのが、世界最高峰のプレーヤーであり屈指のギア通でもあるジャスティン・トーマス(JT)だ。彼のリアルな証言とともに、新プロV1シリーズの真価に迫ってみよう。

画像: メジャー2勝を誇るジャスティン・トーマスは一貫してプロV1xを愛用。そんな彼が2027年モデルではさらなる進化を実感しているという

メジャー2勝を誇るジャスティン・トーマスは一貫してプロV1xを愛用。そんな彼が2027年モデルではさらなる進化を実感しているという

「今回の2027年モデルを打った瞬間、思わず口をついて出たのが『ソフト・ファスト(Soft Fast)』という言葉でした」

ステージに登壇したジャスティン・トーマスは、2027年モデルの新「プロV1x」を初めて手にした際の驚きをそう振り返る。彼が新しいボールをテストする際、特にロングアイアンでの挙動は重要な判断基準となるという。

「4番アイアンのようなロングアイアンでテストする時は、グリーンが硬くてもしっかりと球を止められるか、イメージ通りの高さやスピン量が出ているかを細かく確認します。そのうえで今回の新しいプロV1xを打った時、これまでにない感覚がありました。打感は前作よりも軟らかいのに、初速が驚くほど速く飛んでいく。相反する2つの要素が同居していたんです」

打感のソフトさと圧倒的なボール初速。この二律背反の進化こそが、世界のトップを納得させた新プロV1xの核心だ。

「ボールは唯一替えのきかないギア」。JTが明かす絶対的信頼

「私のプロのキャリアは、常にプロV1xとともにありました。打音や打感、イメージ通りの高さで飛び出し、狙ったところにピタッと止まってくれる信頼感は、私のプレーに不可欠な存在です」

画像: 27年モデルを打って思わず口を突いた言葉が「ソフト・ファスト」

27年モデルを打って思わず口を突いた言葉が「ソフト・ファスト」

トーマスにとって、ゴルフボールは14本のクラブ以上に特別なギアだ。

「ゴルフボールはラウンド中に唯一替えのきかないギアですし、すべてのショットで使用する道具です。だからバッグに入れる決断は、クラブを決める以上に慎重になります」

そのトーマスのもとへ、ツアーリサーチ&バリデーションディレクターのフォーディ・ピッツ氏は長年、開発中のプロトタイプ(白箱)を届けてきた。トーマスはピッツ氏との信頼関係を、笑いを交えて明かす。

画像: ツアーローンチの際に出現する「白箱」。新たなサイドスタンプが確認できる

ツアーローンチの際に出現する「白箱」。新たなサイドスタンプが確認できる

「フォーディは毎回、突然現れて『これ、ちょっと試してみて』って白箱のボールを渡してくるんです(笑)。何の予備知識もないまま打って、感じたことを伝える。でもその背景には、彼らが既存の性能を崩すことなく、毎回確実にクオリティを向上させてくるという絶対的な信頼があります。だから新モデルのテストは、いつもワクワクしながら楽しんでいるんです」

画像: 白箱を小わきに抱えるピッツ氏。これが選手に帯同する時のお決まりのスタイル

白箱を小わきに抱えるピッツ氏。これが選手に帯同する時のお決まりのスタイル

「ノーススター」へ到達するための「AI依存」を排するリアルな検証

トーマスが絶大な信頼を寄せる開発陣は、この進化をどのように生み出しているのか。ゴルフボール プロダクトマネージメントディレクターのフレデリック・ワデル氏とピッツ氏が明かしたのは、AI全盛の時代にあえて「リアルな検証」を重視する確固たるポリシーだった。

画像: 「AIやシミュレーターも使いますが、それに頼り切ることはない。ゴルファーのリアルな声、屋外でのロボットテストのデータ以上に信頼できるものはありません」(ワデル氏)

「AIやシミュレーターも使いますが、それに頼り切ることはない。ゴルファーのリアルな声、屋外でのロボットテストのデータ以上に信頼できるものはありません」(ワデル氏)

「開発は常に2年周期で回っています。米国マサチューセッツ州フェアヘブンのR&D施設に在籍する約80名の研究員が生み出す技術と、世界のトッププロをはじめ、多くのゴルファーからのリアルな声が不可欠です。シミュレーターやAIは補助的に使っても、AIの答えを優先させることはありません。ゴルフは自然の中で行うスポーツ。外のフィールドで実際に打って測定する以外に信頼できるデータは生まれません」(ワデル氏)

画像: 「もちろん性能には自信を持っていますが、ボールチェンジに関しては急ぐことはなく、十分に納得したうえでプレーヤーごとに適切なタイミングで進めてもらう。それがベストだと思っています」(ピッツ氏)

「もちろん性能には自信を持っていますが、ボールチェンジに関しては急ぐことはなく、十分に納得したうえでプレーヤーごとに適切なタイミングで進めてもらう。それがベストだと思っています」(ピッツ氏)

「私たちはテスト人数に上限を設けていません。PGAツアープロからジュニアまで幅広く打ってもらいます。ツアーの1大会に156名の選手がいれば、そのうち約110名が私たちのボールを使用しています。100名以上のトッププロに一度に試してもらえる環境こそが最大の強みです。選手に手渡す際も『ここを変えた』といった誘導はせず、『感じたままを教えてほしい』とだけ伝える。そのうえで、『フィール』『フライト』『スピン』の3要素を評価軸として設定し、開発に落とし込んでいます」(ピッツ氏)

新モデルにおいてトーマスが感じ取ったという「ソフト・ファスト」について、ワデル氏とピッツ氏はこう補足する。

画像: トーマスをはじめとしたツアープロからのフィードバックは、「ノーススター(目標)」の設定に欠かせない

トーマスをはじめとしたツアープロからのフィードバックは、「ノーススター(目標)」の設定に欠かせない

「JTはキャリアを重ねる中で、さまざまなスピードや打ち方で球を操る技術を身につけてきました。ハーフショットやアプローチでボールがフェースに食いつき、思い通りの挙動をしてくれるか。彼が求める高い操作性と初速性能の両立こそが『ソフト・ファスト』に結実しています」(ワデル氏)

「JTのような選手が信頼し続けてくれることは大きな誇りです。彼のフィードバックは、私たちが目指すべき『ノーススター(目標)』を設定するうえで極めて大きな影響を与えています」(ピッツ氏)

ツアープロたちのインプレッション

会場となった「ベイカレント・クラシック」では、白箱を手にしたプロたちが早くもテストを開始している。

【アダム・スコット】(プロV1・テスト中)

画像: ピッツ氏と意見交換するアダム・スコット。27年モデルの「プロV1」にも好感触を得ている

ピッツ氏と意見交換するアダム・スコット。27年モデルの「プロV1」にも好感触を得ている

「新しいプロV1は、ドライバーやフェアウェイウッドで、非常にフラットで力強い弾道が出ることに驚いています。アイアンでは、これからフォローやアゲンストといった状況でさらに突き詰めたテストを繰り返していきますが、新モデルのフィーリングには非常に好感触を得ています」

【米澤蓮】(プロV1x・実戦投入)

画像: 新モデルが出るごとに毎回進化を感じ、ボールチェンジしているという米澤蓮

新モデルが出るごとに毎回進化を感じ、ボールチェンジしているという米澤蓮

「良い意味で変化が小さいので、すんなり切り替えることができました。その中でも進化したのはショートゲームでのスピン性能ですね。タイトなライや微妙なライで、スピンが入るのか入らないのか判断が付きにくい状況の時に、きっちりスピンが利いてくれる。これはとても大きなメリットに感じています」

このほか、ジョーダン・スピースをはじめ、早くも最新プロトタイプを実戦投入する選手たちの報告が届いている。本格的なオフシーズンに入れば、さらに多くのプレーヤーが新モデルを手に取り、自らのパフォーマンスを極限まで高めるためのテストに没頭していくはずだ。ツアープロたちの実戦さながらの検証を経て磨き上げられた新しい「プロV1」「プロV1x」。我々アマチュアゴルファーがその進化した性能を味わえる日を楽しみに待ちたい。

撮影/田中宏幸


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