メインディッシュとして用意されたのは、「認定近江牛A5ランクのシャトーブリアン(燻製)とサーロイン(グリエ)の食べ比べ」。無花果ソースや塩バターとともに、極上の肉の味わいが提供された。
さらに、「子持ち鮎の煮浸し」や「国産松茸と鱧の吸い物」、そしてシメには「琵琶鱒塩焼き」や「日野菜とジャコ」などを竹皮で包んだおむすびが並ぶ。秋の味覚と滋賀の地産地消をふんだんに取り入れた究極のおもてなしが、頂点を極めた男たちの宴の舞台装置として整えられていた。

前列左から小平智、田中秀道、中嶋常幸、奥田靖己、深堀圭一郎、今平周吾
後列左から蟬川泰果、片岡尚之、岩﨑亜久竜、稲森佑貴
この非日常の空間には、1985、86、90、91年と4度の優勝を誇るレジェンド・中嶋常幸をはじめ、2003年覇者の深堀圭一郎、2015年覇者の小平智、そして前回覇者の片岡尚之まで、計10名の歴代チャンピオンが集結した。
彼らを迎えた主催者・日本ゴルフ協会(JGA)の津賀一宏会長のスピーチは、ゴルフというスポーツの本質を浮き彫りにするものだった。
津賀会長は、プロアラウンドでのエピソードを明かした。28歳の片岡尚之に対し、同組でプレーしたのはタラオカントリークラブの岩永峯一理事長、御年85歳であった。
「28歳から85歳までの人が、和気あいあいと教えていただきながらゴルフができるというのは、こんな素晴らしいことはないといつも思っております」
半世紀以上の年齢差を超え、同じフィールドで共に歩き、プレーを楽しむことができる。それがゴルフという競技の真髄であり、日本の日の丸を背負い、普及振興に尽力してきた歴代チャンピオンたちの存在の上に成り立つ光景であると説いた。

乾杯の挨拶をした片岡尚之
豪華な食事と、世代を超えた交差。その宴の主役であり、乾杯の音頭を任されたのが前回王者の片岡尚之である。
「昨年優勝させていただいて、今年はマスターズ、全英オープンと非常に貴重な経験をさせていただきました」
片岡のこの肉声は、日本オープンという大会が持つ“タイトルの重み”を何よりも雄弁に物語っていた。ナショナルオープンを制することは、単に国内の頂点に立つことだけを意味しない。それは、世界のメジャー大会という最高峰の舞台へ直結する重い扉を開くパスポートに他ならない。
さらに片岡は、自身の原点を振り返り、こう言葉を継いだ。
「JGA様には僕がジュニアの時からナショナルチームで非常にお世話になったので、昨年優勝することができて、少し恩返しできてよかったなと思っております」
自らを育ててくれた組織への感謝と、ディフェンディングチャンピオンとして臨む連覇への熱い決意。極上の「食」でもてなされ、歴史を創った「人」と交わり、世界へと繋がる「勝負」の価値を再確認する夜。28歳の若き王者の乾杯の発声とともに、ナショナルオープンの幕は静かに、そして熱く開いた。(文/山口哲平)
撮影/姉崎正

