滋賀県のタラオカントリークラブ西コース(7411ヤード・パー70)で開催中の第91回日本オープンゴルフ選手権。今年のカットラインは、パー70設定において「2オーバー(142)」という大会最少ストローク記録を更新する、歴史的にハイレベルな戦いとなった。しかし、その過酷なカットラインをくぐり抜け、週末の切符を手にしたトップアマチュアたちは、第3ラウンドに入り一斉にスコアを崩すこととなる。決勝ラウンドには、目に見える「コースの罠」と、目に見えない「心理的な罠」が潜んでいた。

難セッティングと「プレッシャー」という二重の罠

画像: 日本大学3年生の小林翔音

日本大学3年生の小林翔音

アマチュア勢トップの通算3オーバーにつける小林翔音(日本大学3年)は、決勝セッティングの恐ろしさをこう語る。

「今日は風も強かったですね。ピンポジションもやっぱり池の近くに切られていて、10番でも池に入れてしまいました」

さらに、彼を追う西山陽斗(東北福祉大学1年)も「JGAさんがかなりピン位置を振ってくるので、乗せたいんですけど球が散らばってしまい、バーディが取れない」と証言する。ナショナルオープンの週末特有の、選手をじわじわと追い詰めるシビアなピン位置が、若き才能たちの行く手を阻んだ。

画像: 東北福祉大学1年生の長﨑煌心

東北福祉大学1年生の長﨑煌心

だが、それ以上に彼らを苦しめたのは「ローアマチュア獲得」という称号がもたらす、あまりにも重いプレッシャーだろう。その欲と重圧がいかに選手の歯車を狂わせるか。それを最も痛切に体現してしまったのが、2日目までローアマにつけていた18歳の長﨑煌心(東北福祉大学1年)だった。

第3ラウンド、長﨑は「83(13オーバー)」と大崩れし、通算11オーバーへと大きく後退した。

「何年ぶりだろうっていうスコアです……。いろいろと考えすぎたのかなと思います。コースコンディションもそうですし、(ローアマを取ればナショナルチームに近づくという)今後のことも含めて」

キャリアの扉が開くかもしれないという重圧は、大舞台で堂々とプレーしていたはずの若武者の冷静さを、いとも簡単に奪い去った。ゴルフというスポーツの残酷さが垣間見える瞬間だった。

同じ「4オーバー」が映し出す三者三様のメンタリティ

波乱の3日目を終え、ローアマ争いは小林翔音(通算3オーバー)、西山陽斗(通算5オーバー)、石口寛樹(通算6オーバー・興国高校2年)の実質3名に絞られた形となった。もちろん、長﨑の3日目(13オーバー)が突きつけたように、ひとたび歯車が狂えば誰もが大叩きする危険を孕んだ難セッティングだけに、何が起こるかは最後まで分からない。それでも現実的な打数差を見れば、この3人によるハイレベルな決着になると見ていいだろう。奇しくも、この日の第3ラウンドのスコアは、3名全員が「74(4オーバー)」。トータルスコアの差は前日から全く変わらないまま、最終日を迎えることになった。

画像: 東北福祉大学1年生の西山陽斗

東北福祉大学1年生の西山陽斗

しかし、スコアカードに記された「4オーバー」という数字は同じでも、3人の心境は見事なまでに対照的だ。

首位に立つ小林の心境は「不満」である。

「今年全体的に調子が良いだけに、この4オーバーは自分として納得がいかないですね。ショットも左に行って、パターも全然入りませんでした」

自身への期待値が高い分、現状のゴルフに対するフラストレーションを隠そうとしない。

対照的に、2打差で追う西山は「自信」に満ちている。

「スコアを落とした割には耐えているほうなんです。調子は悪くなくて、運がなかった一日でした」

パー5でボールだけがバンカーに入り、スタンスがラフになるという不運に見舞われたものの、「4オーバーなら、まあしょうがない」と気持ちを切り替えている。

画像: 興国高校2年生の石口寛樹

興国高校2年生の石口寛樹

そして、3打差につける石口が得たのは明確な「教訓」だった。

「決勝ラウンドなので少し攻めてみようと思ったのですが、朝イチからダボを打ってしまい、そこから立て直せずに前半はグダグダでした」

だが、後半から予選と同じ「パーを取るゴルフ」に切り替えたことでショットが安定した。

「攻めずに守りに徹した切り替えが良かったのかもしれません。気持ちが出過ぎても良くないと学びました」

最終日に描くそれぞれのシナリオ

画像: 左から小林翔音、西山陽斗、石口寛樹、長﨑煌心

左から小林翔音、西山陽斗、石口寛樹、長﨑煌心

スコアボードの数字だけでは見えてこない、三者三様のメンタリティ。それが最終日のゲームプランを大きく分けることになる。

逃げる小林は、「明日のほうがさらに難しくなると思う。攻めすぎず、一打一打集中して丁寧にやっていきたい」と、堅実なディフェンスゴルフで逃げ切りを図る。

一方、得意のロングアイアンとゼクシオのドライバーに絶大な信頼を寄せる西山は、「もったいないミスをなくして、しっかりいいゴルフができたら絶対ローアマを取れる」と、攻撃的なマインドで逆転を狙う。

そして石口は、3日目の失敗を糧に「チャンスを待ちながら、ずっとパーで耐えて、来たチャンスを確実にモノにしたい」と、極限の忍耐からワンチャンスを狙い澄ます構えだ。

「丁寧」か、「自信」か、「忍耐」か。同じ「4オーバー」から別々のシナリオを描いた3人のアマチュアのうち、最後に歓喜の瞬間を迎えるのは誰なのか。歴史的激戦の結末は、まもなくタラオカントリークラブで明かされる。(文/山口哲平)

写真/姉崎正


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