タラオカントリークラブ西コース(7411ヤード・パー70)で開催中の日本オープン。第3ラウンドで「74(4オーバー)」を叩き、「今年全体的に調子が良いだけに、やっぱり自分としてはあんまり納得がいかないですね」と強い不満を募らせていた20歳の小林翔音(日本大学3年)。彼が自らに課した最終日のテーマは、「ボギーを打たないこと。攻めすぎず丁寧に」という忍耐のゴルフだった。
画像: この日、4番ホールで唯一のイーグルを奪取したのが小林翔音だ

この日、4番ホールで唯一のイーグルを奪取したのが小林翔音だ

強風が吹き荒れるタフなコンディションの中、前半の4番(パー5)でドラマが起きる。アゲンストの風の中、フェアウェイからの第3打は残り40ヤード。「手前にバンカーがあったので入るのは嫌だった。少し奥でもいい」と58度のウェッジを振り抜いた。ショットはピン奥4ヤードに着弾すると、そこから鮮やかなバックスピンで直接カップに吸い込まれた。我慢のゴルフの中に生まれた劇的なイーグルだった。

「前半は結構良かったんですけど、後半の3つのボギーはちょっと良くなかったですね。特に16番のパー5。3打目はいいところからのアプローチだったんですが、自分の距離感が合わなくてグリーン奥に行ってしまいました」

反省点を残したものの、最終日を「73(3オーバー)」でまとめ上げ、通算6オーバー(69-70-74-73)で耐え抜いた小林。見事にローアマチュアのタイトルを手にした。

画像: 優勝した細野勇策と一緒に

優勝した細野勇策と一緒に

ナショナルオープンでのローアマ獲得という快挙。しかし、彼の自己評価はどこまでも厳しい。

「今までのローアマチュアの選手たちはもっと上位で獲得していたと思います。今日、アンダーで回れていればもうちょっと上に行けたはず」

最終順位が40位となった彼は称号に甘んじることなく、上位に入れなかった悔しさを包み隠さず口にした。

彼が自らの最大の持ち味として胸を張るのが「ショット力」である。「プロにも劣っていない気がする」と確かな自信を覗かせる一方で、「パターとアプローチがまだまだ」と課題の認識も明確だ。

その長所と課題は、彼のクラブセッティングにも色濃く表れている。アイアンは「顔が本当に綺麗で構えやすい」と絶賛するミズノ「Mizuno Pro S-3 アイアン(4I~PW)」。プロ顔負けのショット力を生む、ドライバーはキャリー285ヤードのキャロウェイ「クアンタム トリプルダイヤモンド(10.5度)」、3番ウッドは260~265ヤードのミズノ「Mizuno Pro フェアウェイウッド(3Ti)」。その下に、250ヤードを狙うミズノのアイアン型UT「Mizuno Pro FLI-HI ユーティリティ」の3番と、230ヤードを狙う「Mizuno Pro」の3番を投入。実質的に“3番アイアン2本”でロングゲームを厚くしている。

画像: チップインイーグルは58度で。こういうプレーが増えれば課題がなくなるはずだ

チップインイーグルは58度で。こういうプレーが増えれば課題がなくなるはずだ

一方で、課題としているアプローチを担うウェッジの構成にも特筆すべきものがある。近年のトレンドである3〜4本体制ではなく、ピッチングウェッジの下は「52度、58度」の2本のみ。その理由は至ってシンプルで、実に微笑ましい。

「兄(小林大河)が52度と58度なんで、自分もそれでいいかなと思って。兄はアプローチが本当に上手いんです」

日大ゴルフ部から今年プロ入りした兄・大河への深い信頼と影響が、このセッティングの根底にある。「兄が(ウェッジを)3本にするなら自分も変えようかな」と笑う20歳の素顔と、こだわり抜いたセッティングで大舞台を戦い抜く頼もしい姿には心地よいギャップがある。

「納得のいかない通算6オーバー」を胸に刻み、日大のエースはすでに前を見据えている。直近の目標は「来週の団体戦(「常陸宮杯全日本大学ゴルフ選手権競技」)でチームを引っ張り、優勝すること」。日大の看板とローアマの誇りを胸に、チームの牽引役として挑む。

そしてその先には、「日本でたくさん優勝して賞金を取って、海外でプレーしたい」というスケールの大きなビジョンを描く。現状への不満を成長のエネルギーに変え、タフなコースを攻略した20歳のリアルな現在地。厳しい自己評価を持つ若き才能の覚覚悟と高い意識が、そこには確かにあった。(文/山口哲平)

写真/姉崎正


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