
優勝にはあと一歩届かなかったものの、混戦のなかで順位を伸ばし続けた菅沼
緊迫の優勝争いを和ませる“アイドル人間力”
首位と一打差の通算11アンダー、3位タイから優勝を狙った菅沼。前半は6番までパーが続く我慢の展開から、7番で待望の初バーディを獲得。もちろんギャラリーを沸かせたわけだが、彼女のパフォーマンスは意外な場面でも発揮されていた。続く8番で、放ったバーディパットがカップの縁すれすれでストップ。このもどかしさに、自ら「入れ、入れ!」と手で合図を送ると、観客からも「入れ!」「風吹いて!」と声援が飛び交うという光景が見られた。
これは一時首位タイに6名の名前が上がるなど、混戦真っただ中の出来事。自身も2023年以来の複数優勝がかかり、重圧がかかる局面だというのに、天性の“アイドル”パフォーマンスで、周囲を和ませていた。
順位が目まぐるしく変わるなか、2日目・3日目と4バーディノーボギーのプレーを展開し、かつ、順位を16位タイ→8位タイ→3位タイ→2位と上げ続けてこられた要因は、このいつ何時も変わらない明るいメンタリティだ。
3日目終了後には「最近優勝争いできてなかったので、すごい楽しみ」「自分のショットも調子がいいしパターもいい感じ」と自信をのぞかせながら、「15本入れてスタートしちゃった夢を見て、スタート前にすごい数えました」と寝ている間に見た悪夢を笑い飛ばす一面も見せていた。
磨き抜かれたアプローチと冷静な試合運び

2日目、3日目は4バーディノーボギーという成績を残していた菅沼。ピンチの場面は、アプローチの精度でしのいでいた
最終日後半は、11番でボギーを叩くも、13番と16番でバーディを奪取。16番ではイーグル狙いの2打目がグリーン左のラフへこぼれたが、ナイスアプローチで確実に沈めた。
しかし、16番のティーグラウンドに立った時点でリーダーボードを見て「(単独首位を走る鈴木と)そこで2打差あったので」と冷静に状況を客観視していた。このできることをやり遂げるという切り替えは、プロ人生の9年間で味わってきた悔しさ、そしてそれを乗り越えてきた経験値があるからだろう。
9月の単独取材では「23年以来の複数回優勝」を目標に掲げていた菅沼。4月末の「NTTドコモビジネスレディス」で今季初優勝以降、トップ10入りを4回記録。しかし終盤戦に入ってからは予選通過を果たしつつも順位は下がり気味だった。そんな状況の中、今大会では初日16位タイ、2日目8位タイ、3日目3位タイ、最終日2位と、「混戦のなかで順位を伸ばし続けられる」確かな実力を証明した。
念願の複数回優勝へ、すがすがしい笑顔の幕切れ

ホールアウト後に見せた笑顔には、清々しさが漂っていた
たしかに順位だけ見れば落ちていた時期もあったが、決勝ラウンドで磨きがかかったアプローチの精度を武器に、今大会ではパーセーブし続け、伸ばすところでバーディを取る本来の強さを見せつけた。
17番のボギーを乗り越え、難所の18番では意地のバーディフィニッシュ。ホールアウト後は「今日はずっとパターが入らなかった。最後だけラインが読めて入ってくれてよかったです」と、その喜びを最大限に表し、最後の最後まで観客を沸かした。
優勝には届かないと悟ったあとも最後まで全力でやり切り、充実感からあふれるすがすがしい笑顔を見せた菅沼だからこそ、残り数試合の中で念願の複数回優勝を達成してくれるかもしれない。
写真/岡沢裕行
