ヘッド・ビハインド・ザ・ボールとは、インパクトの瞬間まで、頭がボールよりも後ろ(右打ちなら右側)に残っている状態のこと。これにより、クラブヘッドが走り、適正な軌道でボールを捉え、飛距離と方向性の確率を高める基本のひとつ。
では、この基本を意図的に崩し、トップから頭を突っ込ませてボールの前側まで流した〝ヘッド・フロント・ザ・ボール〟で、プロが打ってみたらどうなるのか?
テスト&解説は、今回もみんゴル実験室のレギュラーテスター松本一誠プロ。松本プロには、1ラウンド18ホール中、4つのパー3を除いて14回ドライバーを使うと想定、6割程度の力感で14球勝負として打ってもらい、その過程や結果を解説する。

テスト&解説●松本一誠プロ/「みんゴル実験室」でおなじみのレギュラーテスター。2026年JPDAロングドライブ日本チャンピオン。本年3月のJPDAプロドラコンツアーで、男子の無差別級と80キロ級で優勝、2階級制覇の飛ばし屋にしてショットメーカー、アマチュアの指導もしているティーチングプロ。
今回も横浜駅東口から徒歩約5分にある松本プロ主宰のISSEI Golf Laboで実験。
テスト概要/ 弾道計測器「トラックマン4」を使用、ボールはブリヂストンゴルフ「ツアーB X」。 ドライバーは松本プロのエースドライバー、キャロウェイ「パラダイム Aiスモーク ♦♦♦」のロフト8.0度。
「切り返しで、頭を目標方向へ流すわけですよね。難しいけど、やってみます…」と困惑気味の松本プロ。ゴルフの基本を根底から覆す、無謀な実験が幕を開けた。
1球目から惨事!
“下半身リード”ではなく
“ヘッドリード”です
注目の1球目。松本プロが放った打球は、右へなんと64.5ヤードも曲がる超スライスとなった。後述する「14球のデータ」を確認すると、スピン量は3750回転に達している。トータル飛距離は239.5ヤード。
6割の力加減とはいえ、ドラコンチャンピオン松本プロのヘッドスピードが、44.7m/sしか出ていない。仮に、これがコースの朝イチショットなら、右OBが確定する危険な球だった。

注目の1球目。右へ60ヤード以上曲がる大スライスとなった(写真/三木崇徳)
続く2球目も、トータル飛距離は250.9ヤード出たものの、右へ18.8ヤードのスライス。コースでは、右ラフに止まる球だ。
この事態について、松本プロはスウィングのメカニズムをこう解説する。
「頭ひとつで、すべて台無し。アッパー軌道には絶対にならない、というかできません。上からしかヘッドが当たらない状態で、ヘッドも走らないからスピードも出ません。ボールにヘッドを当てるので精一杯です」
さらに松本プロは、この動きを「下半身リードじゃなくて、まさにヘッドリードです」と表現。頭が先走ってしまうことで、運動連鎖が完全に崩壊してしまうことを実感したようだ。
しかし同時に、「でも、アマチュアの人がコースに行くと、ボールに意識が行き過ぎてしまって、確かに、よくあるミスショットの陥りパターンかもしれません」と、アマチュアが陥りがちなミスであるとも指摘した。
スピン激増の超テンプラ!
驚愕のミスショット
実験は続く。3球目は、右1.2ヤードと狙い通りの方向へ飛んだが、飛距離は222.7ヤードと伸びない。そして、少し落ち着いてきたかと思えた4球目。ここで無残なショットが出てしまう。
ミート率は、なんと1.26という超ブレの1打。スピン量は5760回転に跳ね上がり、右に19.8ヤード曲がって、飛距離は200ヤードにも届かない181.6ヤードという結果。弾道頂点は38.1ヤードと高く吹き上がるテンプラだ。

「頭を残さず、ヘッドリードで突っ込ませると、まったく当たりません。当たっても飛ばないし、信じられないほど曲がってしまいます」
「1球目右、2球目も右、次(3球目)にやっと真っすぐ、4球目にテンプラ。もうここまで悪かったら(上からぶつける)フェードで行くしかない」と松本プロも苦肉の策に出る。ヘッドリードしながらも、「さらに力感を抑えた、フェード狙い作戦で行きます」と解説。
と言ったのも束の間、松本プロの嘆き節が入る。「スライスばかり出て、チー(チーピン)も出そうな雰囲気…。フェードのイメージで、やっと真っすぐ飛びましたが、飛距離はまったく出ていません」との通り、5球目の飛距離は221.0ヤードの右7.8ヤード。フェード気味の球ではあったが…。
プロが必死にアジャストしようとしても、根本の“頭の位置”がズレるだけで、ここまで苦労する。「一生懸命、こんなにきちんと振っても、球がどこに飛ぶかわかりません。スコアはよくて100を切るぐらいか…」と、松本プロの嘆きが止まらない。

とにかく上からしか当たらない。アッパーブローの低スピン&高弾道は、夢のまた夢…
迎えた7球目、最悪の事態が起こる。ミート率“0.95”というミスヒットで、スピン量は異次元の9310回転! トータル飛距離はわずか99.5ヤードという、4球目を上回る超テンプラ。
これには松本プロも「頭ひとつで、ここまでひどくなるんですね…」と絶句するしかなかった。
その後も、悪戦苦闘で打ち続け、いよいよラスト14球目。
最後の1球を前に、松本プロは気を引き締める。「ヘッドリードのスウィングでも、集中して打ちます!」。渾身の1発だったが、結果は飛距離238.7ヤード、右へ29.7ヤードのプッシュスライスとなって終了。
最後まで、“ヘッドリード”の呪縛から、逃れることはできなかった。
実験終了
14球のデータが示す「基本の重み」
以下が、今回の「14球のデータ」全結果。
| HS(m/s) | BS(m/s) | ミート率 | キャリー(Y) | トータル(Y) | スピン(rpm) | 左右ブレ(Y) | 弾道頂点(Y) | |
| ① | 44.7 | 64.6 | 1.45 | 209.7 | 239.5 | 3750 | 64.5R | 17.3 |
| ② | 45.3 | 67.6 | 1.49 | 220.1 | 250.9 | 3680 | 18.8R | 15.2 |
| ③ | 42.1 | 59.3 | 1.41 | 190.8 | 222.7 | 3160 | 1.2R | 13.8 |
| ④ | 44.6 | 56.3 | 1.26 | 178.6 | 181.6 | 5760 | 19.8R | 38.1 |
| ⑤ | 40.9 | 58.3 | 1.43 | 182.8 | 221.0 | 2580 | 7.8R | 12.1 |
| ⑥ | 41.9 | 60.0 | 1.43 | 196.6 | 227.2 | 3410 | 30.0R | 16.3 |
| ⑦ | 40.4 | 38.6 | 0.95 | 96.5 | 99.5 | 9310 | 1.4R | 33.2 |
| ⑧ | 43.5 | 62.8 | 1.44 | 193.3 | 230.5 | 3440 | 35.2R | 11.1 |
| ⑨ | 45.1 | 56.3 | 1.25 | 175.8 | 178.2 | 6340 | 5.4R | 37.0 |
| ⑩ | 37.5 | 49.8 | 1.33 | 147.6 | 182.5 | 3240 | 2.5R | 11.1 |
| ⑪ | 41.3 | 56.5 | 1.37 | 180.9 | 212.1 | 3340 | 11.5L | 14.4 |
| ⑫ | 39.5 | 55.3 | 1.40 | 173.5 | 205.6 | 3160 | 0.8R | 12.9 |
| ⑬ | 42.6 | 53.1 | 1.25 | 168.4 | 176.2 | 5550 | 10.8R | 27.2 |
| ⑭ | 43.9 | 64.2 | 1.46 | 207.6 | 238.7 | 3510 | 29.7R | 15.0 |
| 14球平均 | 42.4 | 57.3 | 1.35 | 180.1 | 204.7 | 4302 | 15.5R | 19.6 |
14球の平均データに注目したい。 プロゴルファーのドライバーショットとは思えない飛距離の落ち込み、スピン量の増加(平均4302回転)、ミート率も低く、右へのミスが多発していることが分かる。
ボールを上から潰すように打つしかなくなるため、スピン量が過剰になって、前に飛ぶ推進力が完全に失われてしまうのだ。
また、11球目で唯一、左へのブレ(11.5L)が出ているなど、方向性のコントロールも極めて難しくなっていることが証明された。

14球のキャリー(落下地点)データ。1番右は1球目、1番下は7球目。全体にプッシュ&スライス傾向で飛距離はまったく出ていない
この動き、まさにデスムーブ!
松本プロから切実なメッセージ
実験終了後の松本プロは、染み付いてしまったヘッドリードスウィングを元に戻すべく、ひたすら練習を続けていた。みんゴル実験室チームが「無謀な実験をお願いしてしまい、申し訳ない」と平謝りする事態に…。
松本プロは苦笑いしながら、「この動き、体に残りますよ(苦笑)。ヘッド・ビハインド・ザ・ボールがどれだけ大切なのか、いい教訓になりました」

こちらが松本プロ本来のスウィング。見事に頭が残り、ヘッド・ビハインド・ザ・ボールが守られている
そして最後に、アマチュアに向けて大事なアドバイスを残してくれた。「コースに出たら、本当に、この悪い動きだけは注意した方がいいです。ヘッドリードになった瞬間、練習で積み上げてきたモノが、あっという間に崩れちゃいますから」
今回の無謀な実験、どう感じましたか? プロが打っても、100切りがやっとのレベルにまでスウィングが崩壊してしまう、ヘッドリードの恐ろしさ。
「ヘッド・ビハインド・ザ・ボール」は、絶対に疎かにしてはいけない、本当に大切な基本だった。コースでボールの行方が気になっても、インパクトの瞬間までは「頭を残す」こと。次回のラウンドで、ぜひ思い出してみてほしい。

