男子プロのスペックはパワーが違いすぎて参考になりにくいが、ヘッドスピード38〜43m/s前後の女子プロのセッティングは、我々アマチュアゴルファーにとってまさに「飛びと安定感の宝の山」。そこで本連載では、いまツアーで活躍する女子プロのドライバースペック(ヘッド、シャフト、グリップ)を完全再現! 試打するのは、世に出たほぼすべてのクラブを打ってきた“キング・オブ・試打”こと堀越良和プロ。なぜ女子プロはこの組み合わせを選んだのか? アマチュアも参考になるのか? 女子プロが使用するギア選びを探ってみた。
画像: 今季スタンレーレディスホンダで優勝を飾った岩井明愛(撮影/有原裕晶)

今季スタンレーレディスホンダで優勝を飾った岩井明愛(撮影/有原裕晶)

今回取り上げるのは、米女子ツアーを主戦場に目覚ましい活躍を見せ、国内でも2026年10月の「スタンレーレディスホンダ」で見事優勝を飾った岩井明愛プロ! 日本ツアー参戦時は平均257ヤードだった飛距離を、現在は米ツアーの舞台でほぼ270ヤード(269.87ヤード・38位)にまで伸ばし、そのロングヒッターぶりに磨きがかかっている。芝の上から果敢にドライバーを振り抜く「直ドラ」でもギャラリーを沸かせる彼女の持ち味は、ライナー性の強弾道ドローだ。

今回完全再現した彼女の相棒は、ヘッドにカーボンクラウン採用し、フェースは高い反発性能を誇るヨネックス「EZONE GT TYPE S ドライバー」(ロフト角9度)、シャフトも同じくヨネックスの「REXIS KAIZA-M(レクシス カイザ M)」(50S)という組み合わせ。ヘッドカラーは彼女が大好きな「ターコイズブルー」に仕上げられており、ヘッドもシャフトもすべてヨネックスで統一されたこだわりの1本を用意した。

試打環境はインドア、計測器はトラックマン4、計測用ボールは室内測定でも高精度に測定可能なタイトリスト「ProV1 RCT」ボールを採用

画像: トラックマン4、タイトリスト「ProV1 RCT」を使用

トラックマン4、タイトリスト「ProV1 RCT」を使用

「2度のフックフェース×素直な中調子」が生む低スピンライナー

画像: (画像:「EZONE GT TYPE S(9度・可変ポジションで+1.5度寝かせ)」、シャフトは「REXIS KAIZA-M(50S)」 ※プロはクラブを替える頻度が高いため、バランスは一般的なD2程度で試打(グリップは同ブランドを用意)

(画像:「EZONE GT TYPE S(9度・可変ポジションで+1.5度寝かせ)」、シャフトは「REXIS KAIZA-M(50S)」 ※プロはクラブを替える頻度が高いため、バランスは一般的なD2程度で試打(グリップは同ブランドを用意)

ヘッドとシャフトを同一メーカーで統一したプロでは珍しい純正カスタム。ロフト9度をカチャカチャ機能で1.5度寝かせ、2度フックフェースに設定した彼女独自のセッティングの秘密に、堀越プロと編集部が迫る。

試打者/ほりこし・よしかず 試打経験に裏打ちされた豊富な知識と確かな試打技量で、大手メーカーのシャフトやヘッドの開発にも携わる。クレアゴルフフィールド所属

編集部:岩井プロといえば、トーナメントでの直ドラや、米ツアーでもトップクラスの平均270ヤード近い飛距離が代名詞です。そんな彼女のドライバーですが、ヘッドもシャフトも全て「ヨネックス」で統一されている点が大きな特徴です。

画像: 強すぎないアッパーブローで打ち抜く岩井明愛(撮影/姉崎正)

強すぎないアッパーブローで打ち抜く岩井明愛(撮影/姉崎正)

堀越プロ:そうですね。ヘッドのカーボンテクノロジーだけでなく、自社で高性能シャフトを製造できるヨネックスならではの強みが生かされたセッティングです。ヘッドの『EZONE GT TYPE S』は、低スピンで強弾道が打てる引き締まった形状のアスリートモデル。そこに合わせる『REXIS KAIZA-M』は、クセのない素直なしなり戻りが特徴の中調子シャフトです。手元から先端までスムーズにしなってエネルギーを効率よく伝えてくれるので、クラブ全体の振り心地の一体感が非常に高そうですね。

編集部:そして注目したいのがネックの調整です。ロフト9度をスリーブで1.5度寝かせて実質10.5度前後に設定し、フェースアングルが約2度フック(クローズ)フェースになっています。本人も「つかまる仕様のヘッドが好き」と語っているそうですが、この意図はどう分析されますか?

堀越プロ:岩井プロはもともとドローヒッターで、ハンドファーストをキープした状態で体を力強くターンさせながら前へ前へと強い球を押し出していくタイプに見えますね。低スピン系のヘッドは右に抜けてしまうリスクがあるのですが、あえてロフトを寝かせてフックフェースにすることで、右への不安を完全に消して思い切り振り抜いていけるクラブを作っているように思えます。しっかり球がつかまる安心感があるからこそ、強烈なライナー性のドローや、地面から打つ直ドラのような高度なテクニックもできるのだと思います。

編集部:構えたときの印象はどうですか?

堀越プロ:やっぱり鮮やかなターコイズブルーのカラーリングが爽やかで目を引きますね! 構えてみると、ロフトを寝かせたぶんフェースがわずかに左を向いて見えますが、ターゲットに対して違和感なく構えられます。つかまりの良さを視覚的にも感じ取れる顔立ちですね。

実際に試打を開始!

一般的なアマチュア男性ゴルファーを想定し、平均ヘッドスピード42m/s前後で試打
※10球試打したうちの平均値を算出

●キャリー/219.4Y
●総飛距離/254.1Y
●ボール初速/60.3m/s
●打ち出し角/14.0度
●スピン量/2135rpm

堀越プロ:思った以上にしっかりしていますね。本当にこれと同じスペックを使っているの? と思うぐらい。正直、この企画の中で打ってきた中でも一番ハードな1本です(笑)。でも、分厚いインパクトとともに、打ち出しから一直線にターゲットへ向かう力強いライナー性のドローが出ました。ロフトを寝かせているぶん球がしっかり浮いてくれて、グングン伸びていきます。

編集部:ハイドローというよりは、風に負けないような強い中弾道ドローですね。海外で戦う彼女にとって、少し抑えた球のほうが安心感があるのでしょうか?

堀越プロ:その可能性はありますね。海外は気候がさまざまでしょうし、国内よりも風の影響を受けやすいのかもしれません。海外は地面が硬いコースも多く(ライナー弾道なら)ランも期待できます。また、スウィングを見る限りややアッパー~レベルブロー気味で、ロフト10.5度程度の打ち出し角は欲しいけれど、ややつかまり顔にしたいということでヘッドは9度を選択していると思います。

編集部:この強弾道を生み出すシャフトの相性はどうでしょうか?

堀越プロ:この『REXIS KAIZA-M』は、手元側にしっかりとした重量感を感じる設計で、かなり手応えがあります。そして何より先端剛性が非常に高い。つまり、ヘッドを2度フックにして右へのすっぽ抜けをケアしつつ、強く叩きにいってもシャフトの先端剛性の強さで左への引っかけを防ぐという、絶妙なマッチング。ヘッドとシャフトが互いの弱点を消し合っているからこそ、私が思い切り振ってもエネルギーロスなく前への推進力に変えられていると感じます。

堀越プロの総評

画像: 堀越プロの総評

今回の岩井明愛プロのセッティングは、まさに同メーカーによる「ヘッドとシャフトの完璧な一体感」と「右に行かせない低スピン強弾道仕様」が見事に調和したセッティングでした。

ロースピンで叩ける『EZONE GT TYPE S』のロフトをスリーブで1.5度寝かせ、2度フックフェースにすることで、右へのすっぽ抜けを防ぎながら適正な打ち出し角と低スピンを確保し、米ツアーでも上位の平均270ヤード近いビッグドライブを生み出す原動力になっていると実感しました。また度々話題になっている直ドラですが、ミスの傾向としては右方向が一般的です。その直ドラを行う上でもフェースアングルがややクローズになることは、右へのミスを消すうえでプラスに働くでしょう。

このセッティングは、バックスウィングでコッキングを使い、リリースを遅らせて強いタメを作れるプレーヤーに合いやすいように感じました。「ダウンスウィングで手が前に出てフェースが開き、右に抜けてしまう」というミスの傾向がある方でも、ヘッドをややフックフェースに設定しておくことで右へのミスをり防ぐ緩和することができます。ただし、球をしっかり浮かせて飛ばすには、トラックマン計測で最低でもヘッドスピード43m/s以上は欲しいところですね。

全体的にややハードなセッティングとなりますので、重量とロフト角だけを見て取り入れてしまうと、球が上がりにくくなってしまったり、つかまらないため手を返してしまったりする可能性があります。

そして、可変スリーブでロフトを寝かせると、構造上どうしてもフェースアングルがややクローズ(フックフェース)になります。つかまる安心感がほしい方にはプラスになりますが、アドレス時にフェースが左を向いているのが視覚的に苦手な人や、構えたときにスクエア感を重視したいゴルファーは、10.5度のロフト角のヘッドをおすすめします。そうすれば、スクエアな顔のまま、岩井プロのような直進性に優れた高初速ライナードローを目指すことができます。

次回の「女子プロドライバーほぼ完コピ試打」もお楽しみに!

協力/トラックマン、ヨネックス、クレアゴルフフィールド


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