このビッグスコアを根底で支えたのは、グリーン上での圧倒的なパフォーマンスだ。パーオン率72.2%(13/18)と手堅くチャンスを作りつつ、18ホールをわずか「24パット」で駆け抜けた。パーオン時の平均パット数は驚異の「1.38」を記録し、3パットは「0回」。
ラウンド後、山下は「なかなかショットはつかなかったですけど、ミドルパットもそうですし、久しぶりにロングパットも決まってくれたので、今日は本当にパットに救われたなと思います」と謙虚に振り返った。ショットでベタピンを連発したわけではない。しかし、乗ればミドルやロングのパットを沈め、外しても確実に寄せワンで凌ぐ粘りと研ぎ澄まされた集中力が、「65」というロースコアを手繰り寄せたのだ。
さらに、精神面でも理想的な状態でラウンドに入っていた。初日のペアリングは、セリーヌ・ブティエ(2023年覇者)、イン・ルオニン(2024年覇者)、そして山下(2025年覇者)という、歴代チャンピオン3名が揃い踏みした大注目組。ディフェンディングチャンピオンとして受けて立つ立場でありながら、彼女の心は極めてフラットだった。
「変わらずに1番ホールのティーグラウンドにも気持ちよく立てましたし、今日のペアリングもいい組み合わせで回れましたし、いいリズムで回れたと思います」
過度なプレッシャーを抱え込むことなく、歴代女王同士のハイレベルなプレーに刺激を受けながら、心地よいリズムを掴んでいった。
海外転戦において結果を残し続ける背景には、ベテランキャディであるジョン・ベネットとの綿密な連携もある。「風が強い中でもいいイメージで、キャディさんと話しながら風の読みをやっている」と語る通り、変化する突風に対しても一打一打丁寧に対話を重ねてイメージを共有した。
そして何より、彼女の真骨頂は自然条件に対するしなやかなマインドセットにある。

昨年、プレーオフで優勝を飾り、ディフェンディングチャンピオンとして大会に挑む山下美夢有(写真は26年ソニー日本女子プロゴルフ選手権)
「(風の読みが)当たったり、ちょっとショートしてしまったりっていう部分もありますけど、それもラウンドしていてすごい楽しいなと思うので。明日からも風が強いかは分からないですけど、強くても変わらず自分のスタイルで頑張りたいなと思います」
計算通りのナイスショットだけでなく、読みが外れたミスさえもゴルフの一部として受け止め、「楽しい」と笑顔を見せる。強風という難敵に対抗するのではなく、自然体で寄り添いながら自らのスタイルを貫く強さ。大会連覇へ向けて視界は極めて良好だ。
写真/姉崎正
