最終組の重圧と、耐えて掴んだ後半「33」のチャージ

惜しくも優勝は逃したものの、収穫の多いラウンドとなったと話す田中裕基
「岩﨑選手や桂川選手と最終組でラウンドできたことは、僕にとってはめちゃくちゃ嬉しかったです」
ラウンド後のインタビューで田中は、ツアー屈指の実力者たちと優勝争いを演じた高揚感を率直に振り返った。だが同時に、最終日最終組特有の重圧も背負っていた。「最初すごく立ち上がりが難しかった」と吐露したように、序盤は思うようにスコアを伸ばせず我慢の展開を強いられた。
それでも、決して大崩れはしなかった。
「良いショットも少なかったんですけど、我慢、我慢ということで。その中でスコアを落とさずに来られたのが良かったかなと思います」
前半を耐え抜くと、サンデーバックナインに入って一気にギアを上げた。11番、13番、15番と要所でバーディを奪取。プレッシャーのかかる後半を3バーディ・ノーボギーの「33」でまとめ上げ、首位争いへと完全に踏みとどまった。
17番を終えて11アンダー同首位――極限のデッドヒート
象徴的だったのが、難関の17番(パー4・単日難易度4位)だ。
田中は「ティーショットが良かっただけに、セカンドショットを乗せられなかったのは優勝争いをしている難しさだと思う」と振り返る。しかし、ここからの小技が冴えた。「なんとかパーで行けたのは良かった。アプローチも頑張ったし、よくパーパットが入ってくれました」と泥臭くパーを死守した。
この17番を終えた時点で、通算11アンダーで桂川と並ぶ首位タイ。ラスト1ホールまで優勝の行方が分からない極限の緊迫感の中、運命の最終18番(パー4)を迎えた。
勝者への敬意と、研ぎ澄まされた勝負師の本能

最終18番のバーディパットは惜しくも外れ、優勝した桂川有人とは1打差の2位に終わった田中
18番グリーン、同組の桂川が先に長いバーディパットを沈め、地元ギャラリーの大歓声がコースを包み込んだ。その瞬間、田中は「本当にすごいな、強いなと思いました。元々すごい選手なので」と勝者へ惜しみない敬意を抱いた。
しかし、勝負師としての闘志は消えていなかった。桂川の一打を見届けた直後、追いつくためのバーディパットへ向かう際、「もう入れるしかないなと思っていた」と腹をくくって強気にねじ込みにいった。
ボールは惜しくもカップを外れてパーとなったものの、通算11アンダー・単独2位をしっかりと死守してみせた。
ポイントランキング26位へ急浮上——掴んだ未来への確信
「初めての優勝に向けて、足りないものを掴めた4日間だったか?」という問いに、田中は迷わず力強く答えた。
「そうですね。もちろん、すごい良かったなって思うところのほうが大きいですね。またこれから、もっともっとレベルアップしていきたいなと思ってます」
最終組特有の重圧、我慢の連続、そしてトッププロの土壇場での勝負強さ。そのすべてを肌で体感し、最後まで優勝争いを演じきった経験は、何物にも代えがたい財産となった。
さらにこの単独2位(315pt獲得)により、JGTOポイントランキングでも26位(672.841pt)へと一気に順位を跳ね上げた。
久常涼、金子駆大、細野勇策らと同学年の若武者・田中裕基が、シード権獲得にとどまらず、ツアー初優勝に向けて大きな弾みをつけたのは間違いない。壁に跳ね返された悔しさ以上に未来への手応えを掴んだ彼の次なる挑戦から、目が離せない。
写真/岡沢裕行
