埼玉県の武蔵丘ゴルフコース(6690ヤード・パー72)で開催された「樋口久子 三菱電機レディス」の最終日、地元・埼玉県出身の佐久間朱莉が歓喜の瞬間を迎えた。この日もスコアを4つ伸ばして「68」でホールアウトし、通算15アンダー。後続の猛追を振り切り、地元・埼玉での初優勝を飾った。2025年に続く2年連続の「年間4勝目」を達成。メルセデス・ランキングでは優勝ポイント200ptを加算して通算2,445.55pt(単独2位)、年間獲得賞金も約1億7516万円(2位)に到達。首位・桑木志帆を追う年間女王争いに向けて、極めて大きな1勝となった。

ツアー新記録「114ホール連続ノーボギー」の金字塔

地元ファンの前で遂げた戴冠劇というだけでも十分に劇的だが、今大会の佐久間の凄みは、スコアカードに刻まれた歴史的偉業にある。

画像: 伊澤秀憲コーチとショートゲームを磨いてきた佐久間朱莉。より大きな花が開花したようだ

伊澤秀憲コーチとショートゲームを磨いてきた佐久間朱莉。より大きな花が開花したようだ

彼女は今大会の54ホールを一度もボギーを叩くことなく完走。それどころか、前週の「NOBUTA GROUP マスターズGC レディース」第1ラウンド4番ホールから数えて、実に「114ホール連続ノーボギー」という大記録を打ち立てた。

これは、山下美夢有が持っていた従来のツアー記録(113ホール)を塗り替える新記録だ。しかし、この記録について問われた佐久間は、「全く頭になかったです」と屈託なく笑った。

「終わって(アテスト後に)教えてもらいました。新記録と知って『そうなんだー』ぐらいでした(笑)。やっぱりボギーを打たなければスコアは伸びてくるので、そこは自分を褒めてあげたいなと思います」

記録に縛られることなく、目の前の1打に没頭していた無心の強さがうかがえる。

スティンプ13フィートを攻略した「ミリ単位のギア調整」

もっとも、114ホールもの間ミスをスコアに直結させないためには、確かな技術的裏付けが不可欠だ。

最終日の武蔵丘GCは、スティンプメーター13フィート、ファームネス287と極めて硬く速いセッティングに仕上がっていた。この過酷な条件下でノーボギーを継続できた理由を、佐久間はショートゲームの精度に求めている。

「ここのコースでボギーを打たなかったことも嬉しいですし、ショートゲームをたくさん練習してきたのが結果に表れてくれました。シビアなパーパットを決め切ることができているのが大きいです」

その安定感を支えたのは、練習量だけではない。今大会に向けて施した「ミリ単位のクラブ調整」が勝負を分けた。

18番でピンそば4メートルにつけた50度と54度のウェッジは、インパクト時に球がフェースに乗る感触を出すためソールを微妙に研磨。5番ユーティリティは左へのミスを防ぐためロフトを1度立てて鉛を貼り、3番ウッドもロングホールの2オンを狙うためにロフトを1度立てて飛距離を約5ヤード伸ばした。技術とギアを極限まで突き詰めた準備が、高速グリーンを制する原動力となった。

18番の決着、そして2年前の悔しさを晴らす地元初V

画像: 「勝ったー!」という思いから大きな万歳を披露した佐久間

「勝ったー!」という思いから大きな万歳を披露した佐久間

迎えた最終18番(パー5)。同じく最終組で回る小祝さくらが先にバーディパットを沈めた。「シンプルに『さすがだな、上手だな』と思いました」と敬意を抱きつつも、「入れ返して、ここで優勝を決めたい」と自らの一打に集中した。

下りのフックスライスという難解なラインを読み切り、最後のバーディパットがカップに吸い込まれた瞬間、佐久間の顔にこの日一番の笑顔が弾けた。

「勝ったー!と思いました(笑)」

佐久間にとって地元・埼玉は特別な舞台だ。「自分のゴルフ人生で、強くなるきっかけをくれた大会が2年前のスタジオアリス」と振り返る通り、かつて悔し涙を流した地元で掴んだ歓喜の初タイトル。毎ホール温かい大歓声を送ってくれたファンへ、最高の恩返しを果たした。

画像: 樋口久子大会名誉会長から優勝カップが贈られた

樋口久子大会名誉会長から優勝カップが贈られた

そして、ツアー新記録となった「114ホール連続ノーボギー」は今大会で途切れたわけではなく、現在も継続中だ。偉大な記録の続きは次戦の初日へと持ち越される。年間女王奪還へ向けてギアを上げた佐久間朱莉の快進撃から、目が離せない。

写真/有原裕晶


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