ニュージーランドのテ・アライリンクス サウスコース(6842ヤード・パー71)で開催された第17回「アジアパシフィックアマチュア選手権」。すべての競技が終了し、トロフィーを掲げたのは前年覇者のフィファ・ラオパクディー(タイ)だった。逆転で大会連覇を果たしたこの快挙は、2010年・2011年大会を制した松山英樹以来、大会史上2人目となる歴史的偉業である。
画像: 18番ホールでボールをカップに沈め、優勝の喜びを爆発させたフィファ・ラオパクディー

18番ホールでボールをカップに沈め、優勝の喜びを爆発させたフィファ・ラオパクディー

「松山選手が成し遂げたことは、常に自分の目標の一つでした。これまで達成したのは彼だけでしたから。この仲間入りができて、本当にうれしいです」

偉大な先駆者と肩を並べた喜びに浸るラオパクディー。しかし、この華々しい連覇の裏には、トップアマ特有の深いスランプと、それを乗り越えるための知的な自己改革のプロセスがあった。

暗闇の中で読んだ心理学本――「Awarenessモード」の発見

実はラオパクディーは、今年3月以降一度も優勝がなく、深刻な不振に苦しんでいた。

「自分にはもう以前のような力はないのではないか」

自問自答を繰り返す日々。先月、日本で開催されたアジア大会後(1アンダー19位タイ)には、酷いラウンドに落ち込み「部屋に戻って泣こうとしたけれど、泣けなかった。自分が十分ではないと感じる暗闇の中にいた」と、どん底の心理状態にあったことを明かしている。

しかし、彼は現実から逃げなかった。打開策を求めてボブ・ロテラなどのゴルフ心理学の本を読み漁り、自分の精神状態をコントロールする術を模索。今大会でも、スタート前の朝には部屋で読書をし、日記にメモを書き込んでからコースに向かうという探求を繰り返していた。

そして掴んだのが、自ら「Awareness(意識・自覚)モード」と呼ぶ独自の心理状態だ。

彼によれば、何かを証明しようと力む「Tryモード」は自己不信を生み出しやすい。目指したのは、完全に無意識になる「Unconsciousモード」と「Tryモード」の中間点だという。

「Awarenessモードでは、リラックスしながらも高い目標を持ち、自分のルーティンだけに集中します。今週はずっとそれを実践していました」

11番で起きた「4打差逆転」と、完全アウェイを突っぱねた強心臓

このメンタルコントロールが、最大のドラマを生む。

舞台となったのはサンデーバックナインの11番ホールだ。2打差を追って出たラオパクディーは10番まで首位スワンウィック(ニュージーランド)にリードを許していた。しかし、この11番でスワンウィックが痛恨のトリプルボギー「7」を叩く。手堅くパーを拾ったラオパクディーとの間で一気に「4打差」がひっくり返り、劇的な大逆転で単独首位へ躍り出た。

「11番のパットを決めて単独首位に立ったと知った瞬間、手が震え出しました。それでも『自分はまだ追いかける立場だ』と心に言い聞かせてプレーを続けました」

最終組は地元ニュージーランドのクーパー・ムーア、ザッカリー・スワンウィックと同組。NZ勢への大声援が飛び交う完全アウェイのプレッシャーの中、ラオパクディーは「終盤にかけて自分のほうが落ち着いてプレーできた」と振り返る通り、冷静さを保ち続けて我慢比べを制した。

画像: 松山英樹以来、2人目となる連覇を達成した

松山英樹以来、2人目となる連覇を達成した

親友キャディと口ずさんだ歌――成熟した王者が再び大舞台へ

コース上で彼を支えたもう一つの存在が、ルームメイトであり親友でもあるキャディのサンティ(ティアゴ)だ。張り詰めた空気の中でも、2人はフェアウェイを歩きながらバックストリート・ボーイズの曲を口ずさむなど、リラックスした関係性で「Awarenessモード」を保ち続けた。

「昨年の優勝よりも、今年のほうが自分を誇りに思っています。苦しい1年だったにもかかわらず、自分を信じることをやめなかったからです」

技術の研鑽にとどまらず、心理学を学び、自らの心をコントロールする術を身につけたラオパクディー。2027年のマスターズと全英オープンの切符を再び手にした若き王者は、精神的な成熟という確かな武器を携え、次なる大舞台へと歩みを進める。

写真/大会提供


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