NCAAからのスカウトを越え、航空エンジニアの道とゴルフの両立へ
ダグラスさんは現在24歳。日本人の両親のもと、ニューヨークで生まれ育ちました。
生まれつき右足首から下と右手の指に一部欠損がありますが、「物心ついたときからこの状態ですので、不自由を感じたことはありません」と笑顔で語ります。
ゴルフとの出会いは7歳のときでした。ゴルファーであるご両親の影響で練習場に行ったことがきっかけです。
「ママのほうが上手かな。ハンディキャップ13か14くらい。でもパパもハンディキャップ15、16くらい。妹もゴルフをするので4人で回ったりします」
スノーボードや空手に取り組んだ時期もありましたが、高校ではゴルフ部に所属し、ゴルフに熱中していきました。もちろん、ジュニアの大会にも出場していました。
「高校卒業時、NCAAのディビジョン3の大学からリクルートされたんですけど、ちょうどコロナ禍で……スカラシップをもらえないということになって、勉強をメインに考えて大学を選びました」
進学先は、マサチューセッツ州にある理工系研究の名門・WPI(ウースター工科大学)です。大学で航空宇宙工学を専攻してロケットやエンジンについて学んだダグラスさんは、卒業後の現在、コネチカット州で航空エンジニアとしてジェットエンジンを扱う仕事に携わっています。カッコいいですよね。
「プロゴルファーも面白いでしょうけど、僕が生活していくための仕事としてはエンジニアのほうがいいと考え、この道を選びました」
それでもゴルフには今も真剣に取り組んでおり、障害者ゴルフの世界大会にも積極的に参加しています。
「USアダプティブオープン(USGA主催)の予選会が始まって今年で3回になりますけど、レベルは高くて、通過できたのは1回だけです。でも、とても楽しい大会ですよ。イギリスで行われるG4Dオープン(R&A主催)も、2023年のウォーバーンGCで行われた大会に出場しました。ただ、イギリスは雨ばかりだし寒すぎるんです。僕は、ニューヨーク、コネチカットとずっと寒いところに住んでいるので、できれば暖かい場所でプレーしたい。それに5月に開催されるので、オフシーズンが終わって、ほぼゴルフクラブを触っていない状態でいきなり試合することになるのでなかなか難しいです」
ダグラス白倉さんが驚いた日本のゴルフ文化と、吉田隼人プロとの友情
日本には親戚も暮らしており、これまでにも旅行で訪れたことがあるそうです。
「(吉田)隼人とは仲がいいんです。2年前に旅行で来たときは、元木(健二)さんと3人で初めて日本のコースでラウンドして楽しかった。大学生のときは、授業などもありこの日本障害者オープンにはなかなか出場できなかったのですが、就職して2年目、やっと今回来ることができました」
日本のコースの印象について尋ねると、日米のゴルフ文化の違いに驚きを隠せない様子でした。
「日本のゴルフ文化は面白い。まず、昼ごはんがあることに一番ショックを受けました。プレーの間で休憩するなんて考えられない。ハーフが終わったとき、いきなり『カツカレー!』って。でも、美味しいから意外と食べられました(笑)。
また、障害者ゴルフということではなく、普通にゴルフのやり方がいろいろと違います。まずペースが違う。遅いということではないんですけど……それにアメリカのほうがもっとカジュアルでリラックスできて自由がある感じ。2人乗りカートで、フェアウェイに入ることは珍しくないですしね」

吉田隼人プロと練習ラウンド。アメリカの大会で知り合って以来の仲。「日本にはぜひまた来たいです」。関西のゴルフ仲間もたくさんつくって、食事もコースも堪能してほしいですね!
切断と指の欠損を補うデータ計測と、雨・汗に負けないギアの工夫
ゴルフ上達のための工夫や努力にも妥協はありません。
「僕は、足がひざの下で切断されているので、ひざがない人よりは動きやすく力も入ります。でも逆に、ゴルフスウィングの考え方に関して、健常者とも違うので微妙な調整が難しいんです。大学の頃からコーチと話をしながら、ゴルフパフォーマンスセンターでデータを測ったりもして、スタートラインと、クラブヘッドのパスがブレる部分などをチェックしています。また、右手の指がないので、グローブをすることが難しく、雨と汗が敵になるのですけど、最近、いろいろと工夫しています。タオルは4枚くらい持っていきますね」
目標は世界障害者ゴルフランキング(WR4GD)を上げること。
「プロとして毎日ゴルフをしているわけではないので難しい部分もありますし、仕事があるので大会も選んで参加しないといけない。でも、普通の社会人アマチュアとして、頑張ればトップのほうに行けると思うので努力したいです。プラスハンディキャップにもなりたいですね。この3年間、就職活動や仕事を始めたばかりだったので調子が悪くて、今はHC3~4ですから」

韓国から参加した若い初参加組は、しっかり結果も残していきました。グランプリの部で3位となったホ・ドヨンさん(左・知的障害)は、「雨だったのでグリーンが難しかった。将来PGAツアーで勝つ選手になりたい」。女子の部で優勝したキム・スンヨンさん(右・知的障害)は、「グリーンが難しかった。男女が一緒に出る大会でいい成績を出したいです」
そして、ダグラスさんはゴルフが持つ最大の魅力について次のように語ってくれました。
「日本の(障害者ゴルファーの)コミュニティの方々とももっと知り合いになりたい。日本にはまた来たいです。そもそも日本食は最高です。お寿司、焼き肉、何でもOK。食べるものを決めてから予定を立てるくらい。次に来たら関西のほうに行ってみたい。京都は以前一度行ったことがあるので、食べものが美味しいと聞く大阪に行きたいですね。誰か教えてくれるかな(笑)」
終始「日本語は自信がない」と言いながら、聡明に答え続けてくれたダグラスさん。これからの人生も、ゴルフと多くの仲間と並走しながら続いていくことでしょう。


