「樋口久子 三菱電機レディス」では佐久間朱莉選手が今季4勝目を飾った。本連載「勝者のスウィング」は通常、大会優勝者を解説する企画だが、今回は最終18番で劇的なバーディを奪い、優勝した佐久間選手を1打差まで猛追した単独2位の小祝さくら選手を特別に取り上げる。怪我からの完全復活を強く印象づけたその卓越したスウィングを、プロゴルファーの中村修氏が徹底解説する。

今季開幕戦から復帰し最高位で終えた小祝さくら

画像: 最終ホールでバーディを奪い、佐久間朱莉選手と1打差の単独2位でフィニッシュした小祝さくら選手(撮影/有原裕晶)

最終ホールでバーディを奪い、佐久間朱莉選手と1打差の単独2位でフィニッシュした小祝さくら選手(撮影/有原裕晶)

2018年のツアー本格参戦以降、実質的な連続出場記録が「228試合」に達し、「鉄の女」と称されてきた小祝さくら選手。しかし昨夏、左手首の故障により無念の戦線離脱を余儀なくされました。手術と過酷なリハビリを乗り越えて迎えた今季の開幕戦からツアーへ復帰したものの、本来の調子を取り戻すまでには時間を要していました。

昨年(2025年)は離脱の影響で規定ラウンド数に届かず公式記録が残っていないため、怪我をする前の2024年と今季のスタッツを比較してみます。

最も顕著な変化が現れているのは「ショット精度の指標」です。2024年はフェアウェイキープ率が54位(64.88%)にとどまりながらも、パーオン率は10位(73.15%)とツアー屈指の高さを誇っていました。対して今季は、フェアウェイキープ率が81位(58.79%)へ後退したことに加え、パーオン率も47位(66.31%)まで下落しています。ティーショットのブレが、彼女の最大の持ち味であったアイアンショットの精度(パーオン率)に影響を及ぼしている状況が読み取れます。

今大会でも、優勝した佐久間選手がフェアウェイキープ率85.71%(36/42)、パーオン率94.44%(51/54)という圧倒的な精度を記録したのに対し、小祝選手はフェアウェイキープ率71.42%(30/42)、パーオン率75.92%(41/54)。ショット力には依然として差が見られました。

それでも最終的に1打差まで詰め寄ることができたのは、磨き上げられたショートゲームの冴えがあったからです。大会期間中は切れ味鋭いナイスショットも数多く見られ、復調の手応えは確実に掴みつつあります。

胸を右に向けたまま切り返す――安定したドローのメカニズム

小祝選手のスウィングを分析してみましょう。

アドレスではオーソドックスなスクエアグリップで構え、始動では手元とおへそを同調させながら一体感を持ってテークバックしていきます。左ひざを適度に緩め、骨盤をしっかり回すことで体全体を右へ深く捻転させているのが大きな特徴です。

画像: オーソドックスなスクエアグリップで握り、手元とおへそを同調させながらテークバックする

オーソドックスなスクエアグリップで握り、手元とおへそを同調させながらテークバックする

ドローヒッターである小祝選手は、上体を右に向けたまま切り返すことで、クラブをスクエアプレーンに乗せ、インサイドからインパクトゾーンへとアプローチします。左右への余分なスウェーはほとんど見られず、回転軸をセンターに保ちながら、地面反力を使って上半身を一気に巻き戻していきます。

画像: 上半身が右を向いたまま切り返すことでインサイドから下ろしドローを打つ

上半身が右を向いたまま切り返すことでインサイドから下ろしドローを打つ

足裏の圧力測定器のデータによると、テークバック始動で右足、切り返しで左足、インパクト付近で再び右足へかけ直し、フィニッシュで左足へと移動。左右の足裏で素早く交互に地面を踏み込み、地面反力を効率よく引き出していることが分かります。連続写真を見る際も、足元の踏み込みに注目するとその力強さが伝わってきます。

チーピンを防ぐ「右肩の回し込み」

小祝選手本人は、左へのミス(チーピン)を防ぐために「フォローで右サイドをしっかり押し込んで回す」意識を大切にしていると語ります。

上半身を右に向けたままインサイドからクラブを下ろす際、インパクト手前で体の回転が止まってしまうと、フェースが急激に返りすぎて左への大きなミスにつながります。それを防ぐ最大のポイントが、フォローにかけて右肩がターゲットを向くまでしっかりと体を回し切ることです。

画像: 左へのミスを防ぐためにフォローでは右肩がターゲットを向くようにしっかりと回し込む

左へのミスを防ぐためにフォローでは右肩がターゲットを向くようにしっかりと回し込む

今週開幕する「TOTOジャパンクラシック」から、最終戦「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」まで残り4試合。初優勝を飾った2019年以降、毎年勝利を積み重ねてきた小祝選手が、完全復活の勝利を挙げる瞬間はすぐそこまで迫っています。

撮影/姉崎正

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