茨城県の太平洋クラブ美野里コース(6598ヤード・パー72)で開催中の日米共催ツアー「TOTOジャパンクラシック」初日、勝みなみが思わぬアクシデントに対して、プロとしての技術と心のこもった気遣いを見せた。舞台となったのは3番ホール(パー3)。勝の放ったティーショットはターゲットを外れ、グリーン右で待機していたホールの担当係員を直撃。跳ね返ったボールがカート道上に残るという波乱の展開となった。打球の行方を確認した勝は、すぐさまボールが当たってしまった係員のもとへ駆け寄った。

「痛いなんてもんじゃないよ(笑)」――被弾した係員が明かした一部始終

画像: 勝のイラストが描かれたサイン入りボールと、今まで使用していたグローブをプレゼント

勝のイラストが描かれたサイン入りボールと、今まで使用していたグローブをプレゼント

直撃を受けた係員は「何十回もこの係をやっているけれど、当たったのは初めて」と苦笑い。ボールは内ももを直撃しており、直後は痛みのあまり少し足を引きずる様子も見せていた。勝は相手の無事を最優先で確認すると、すぐにお詫びのしるしとしてサイン入りのボールと、直前まで着用していた自身のグローブを手渡した。

事故直後の激痛はあったものの、「勝選手がすごく丁寧に対応してくれてね。グローブとサイン入りのボールまでもらえるなんて嬉しいです」と、係員は痛みを吹き飛ばすような笑顔でプレゼントを見つめた。周囲でその様子を見守っていたコアなファンからは、「グローブとボールを貰えるなら(ボールに)当たりたい」といった冗談も飛び出すほど、緊迫した場は一気に和やかな空気に包まれた。

カート道上からの救済、そして執念のパーセーブ

画像: カート道上にあるボールの処置について、競技委員と話し合い冷静に対応する勝みなみ。写真左下はティーショット後にボールが止まった位置

カート道上にあるボールの処置について、競技委員と話し合い冷静に対応する勝みなみ。写真左下はティーショット後にボールが止まった位置

係員の無事を確認して笑顔でコミュニケーションを交わした後、勝はカート道上に止まった自身のボールへと向かった。すぐに競技委員を要請し、ゴルフ規則に基づき無罰の救済処置をとる。入念に規則を確認した勝は、横へのドロップではなくカート道後方にドロップすることを選択した。動揺してもおかしくない状況だったが、抜群の集中力で放ったアプローチをピンそばにピタリと寄せ、見事に緊迫したパーパットを沈めてみせた。

ゴルフ界に受け継がれる「お詫びのしきたり」

プロが放った打球がギャラリーやボランティア、コース係員に当たってしまった際、選手が自らのグローブやボールにサインをしてプレゼントする行為は、ゴルフ界で長年受け継がれてきた伝統的なしきたりだ。

どれほど注意を払っていても、風やミスショットで観客エリアや係員の待機場所へ飛んでしまうリスクはゼロにはならない。そのため、選手たちは何よりもまず相手の無事を確認し、驚きと痛みを負わせてしまったことへの謝罪と敬意の証として、その場で身につけていた道具を贈る文化が根付いている。

思わぬアクシデントを「生涯の思い出」に変える心遣い

米男子ツアーでは、リッキー・ファウラーが観客の持つカップにボールを直接入れてしまった際、新しい飲み物をおごった上でサイン入りグローブをプレゼントして場内を和ませた例や、アーニー・エルスがギャラリーに当ててしまった際に翌日の観戦パスやサイングッズを手配してアフターケアを尽くした例など、誠意ある対応がファンの心をつかんできた。

痛みを伴う打球事故という緊迫した状況を、誠心誠意の謝罪と敬意によって温かな交流へと変える姿勢は、ゴルファーとしての品格そのものだ。

不測のアクシデントにも動じずパーセーブをもぎ取った勝負強さと、コースを支えるスタッフへの迅速で温かい気配り。太平洋美野里の3番ホールで見せた勝みなみの立ち振る舞いは、ツアープロとしての確かな技術と人間性の豊かさを強く印象づけるシーンとなった。

なお、勝は14時35分現在、14番をプレー中で3バーディノーボギーの10位タイに位置している。(文・写真/幅克成)


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