茨城県の太平洋クラブ美野里コース(6598ヤード・パー72)で開催中の日米共催ツアー「TOTOジャパンクラシック」の第1ラウンド、LPGA競技委員会より「プリファードライ」の追加ローカルルールが適用された。降雨やコースコンディション不良の際に出されることの多い救済ルールだが、今回の通達には、一般ゴルファーも知っておきたい実践的なポイントや、注意すべきルールの落とし穴が含まれているので、お伝えしたい。

そもそも「プリファードライ」とはどのようなルールか?

画像: 雨で土が軟らかくなることによって、着弾時に泥が付着しやすくなる(撮影/姉崎正)

雨で土が軟らかくなることによって、着弾時に泥が付着しやすくなる(撮影/姉崎正)

「プリファードライ(Preferred Lies)」とは、コースがぬかるんでいる際、フェアウェイなどに止まったボールに泥が付着したり、テンポラリーウォーター(一時的な水)や荒れたライに沈んでプレーの公平性が損なわれるのを防ぐための救済ルールだ。

通常は、プレーヤーが自身のボールの位置をマークして拾い上げ、付着した泥を拭き取ったうえで、定められた救済エリア内にプレース(置いて)、その後、プレーを再開できる。国内外のツアーでは、天候悪化の際におなじみの特別処置である。

今回の追加ローカルルールに見る「4つの特徴と注意点」

今回のTOTOジャパンクラシックで告知された内容を読み解くと、一般的なプリファードライと比べていくつかの注目すべきポイントがある。

① 救済対象に「パッティンググリーンのカラー」が含まれる

画像: パー5の第3打をグリーン左のカラーに運んだ吉田優利。ここでもプリファードライの救済ルールを適用して処置を行った

パー5の第3打をグリーン左のカラーに運んだ吉田優利。ここでもプリファードライの救済ルールを適用して処置を行った

ゴルフ規則の標準的なモデルローカルルール(E-3)では「ジェネラルエリアのフェアウェイの長さかそれ以下に刈られた部分」と定められることが多いが、今回は明示的に「(パッティンググリーンのカラーを含む)」と記載された。これにより、グリーン周りのいわゆるカラー(フリンジ)に止まったボールも、罰なしで拾い上げて拭き、置き直すことが可能となっている。

② 救済エリアが「基点から1クラブレングス」と広めの設定

画像: 原英莉花、ハナ・グリーンと同組のアルピチャヤ・ユボルもティーショット後にプリファードライを採用。1クラブレングスに拡大されたため、ドライバーを用いて救済エリアを計測し処置を行った ※人が立っている場所の右側に白ティーが2本ある

原英莉花、ハナ・グリーンと同組のアルピチャヤ・ユボルもティーショット後にプリファードライを採用。1クラブレングスに拡大されたため、ドライバーを用いて救済エリアを計測し処置を行った ※人が立っている場所の右側に白ティーが2本ある

ローカルルールの運用によっては「6インチ以内(約15センチ)」や「スコアカードの長さ以内」に制限されることも少なくない。しかし今回は、ドライバーなど最も長いクラブ1本分の範囲でボールを動かせるため、水はけのよい場所や芝付きのよいライをより柔軟に選べる大きなアドバンテージとなる。

③ 【最大の注意点】カラーにあっても「グリーン面の上」には置けない

ここが競技上、最も気をつけなければならない重要ポイントだ。カラーにあるボールを拾い上げたとしても、「パッティンググリーン面の上にプレースすることは認められない」。

ルール上の制限として「ホールに近づいてはならないこと」に加え、「ジェネラルエリアでなければならない」と明確に規定されている。ゴルフ規則においてパッティンググリーン面は独立したエリアであり、ジェネラルエリアには含まれない。

そのため、カラーから1クラブレングスを測ってグリーン面にかかる場合であっても、ボールをグリーン上に置いてパターで打つ行為は認められない。もしグリーン面に置いてプレーしてしまうと、誤所からのプレー(規則14.7a)となり、2罰打(一般の罰)が科されてしまう。あくまで「カラーから別のカラーの場所」、または「カラーからフェアウェイ」といったジェネラルエリア内に置き直さなければならない。

④ 「別の球」に取り替えてプレースすることも可能

救済を受ける際には元の球だけでなく、「別の球」に取り替えてプレースすることも認められている。前のホールまでに傷がついたボールを、このタイミングで新しいボールへ交換してプレーできる点も選手にとっては心強い味方だ。なお、競技では当然だが、「ワンボール条件」が適用されているため、取り替えるボールは「同一ブランド・同一モデル」に限られることも付け加えておく。

処置の際の盲点! 「マークの義務」と「置き直し不可」

競技ゴルファーがセルフプレー等でプリファードライを適用する際にも役立つ、知っておくべき手続きがある。

まず、ボールを拾い上げる前には必ず元の位置をコインやティーでマークしなければならない(規則14.1a)。これを怠ってマークせずにいきなり拾い上げると、それだけで1罰打となってしまう。

また、救済は「1度だけ」と規定されており、規則14.2b(2)および規則14.2eに準じた手続きが求められる。慎重にライを選んで手を離し、ボールをプレースした瞬間にそのボールは「インプレー」となる。「思ったより沈んだから別の場所に置き直そう」と再び拾い上げて動かすと、インプレーの球を動かしたことによるペナルティが発生するため注意が必要だ。

ピンをデッドに狙えるバーディ合戦へ

常に泥のないクリーンなボールを、1クラブレングス以内のベストなライから打てるため、出場選手たちにとってはピンを果敢に攻め込める絶好の条件が整った。

フェアウェイからの第2打はもちろん、グリーン周りからも思い通りのスピンコントロールが可能になるため、15時の段階で、トップは17番までホールアウトした髙橋彩華で6アンダー、次いでホールアウトした菅楓華、17番まで終了の藤本愛菜、14番まで終了の岩井明愛が5アンダーと、初日からハイレベルなスコアの伸ばし合いが展開されている。

文/幅克成

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