タイトリストから“中空アイアン”登場
このところのタイトリストの人気アイアンといえば「AP2」がその筆頭に挙げられるが、「AP2」に勝るとも劣らない人気を見せ付けているのが、登場後すぐにツアープロもチェンジしたという「T-MB 716」だ。
ご覧のように、形状こそマッスルバックだが、ソールからヘッド後方にかけて、銅色のデザインが施されている。これは、ソールにタングステンが装着されていることを「イメージさせる」デザインなのだ。
もちろん内部にはタングステンウェートが内蔵されているが、ここまで広範囲ではなくトウとヒール側に分割して入れられている。タングステンが入れられているこの「T-MB」は中空構造で、素材と製法はステンレスの鋳造。「マッスルバック」と謳ってはいるが、実際のところは中空のハイブリッド構造。ではどんなアイアンなのか、じっくりと見てみよう。
丸みのあるカタチだからマッスルなのに“やさしく”感じる
フェース自体は大きくもなく、小さくもないといった大きさ。グースの度合いも「MB」らしくほぼストレート。それでも、全体的に丸みを帯びているフォルムで、マッスルバックと言えどもやさしさを感じる。トップブレードが厚いので、さらにやさしく感じるのとともに、強い球が出そうな印象を受ける。また、リーディングエッジとトレーリングエッジ(ソール後方)が削られていて、ライへの対応力が高そうに見える。中空構造らしく、ヘッドの上部まで厚みがあるカタチだ。
多少芯を外しても飛距離が落ちない!
今回は7番で試打。打った感じは非常に手にやさしい。打感の柔らかさでいったら、軟鉄鍛造のマッスルバックと何ら遜色ない、人によっては、こちらの方がソフトに感じるかもしれないほどだ。軟鉄鍛造のマッスルバックで芯を喰った時の「打感の厚さ」のような手応えは乏しいが、柔らかさという点ではまったく問題ない。
また打球音だが、中空のような「パチン」というような音は極めて小さく、耳に心地いい。軟鉄鍛造マッスルとは違うが、球を弾きつつもフェースに球がくっつく感じも残されている。ロフト角は7番で33度と、今どきのアイアンのロフト設定としては標準的。中空構造と相まってか、弾道はやや高めといえるだろう。高さとスピンでしっかり止められそうな弾道を打つことができるクラブだ。
そして「T-MB 716」のロングアイアンをユーティリティ代わりに使う選手もいるようだ。そこで、3番アイアンも打ってみたが、ロングアイアン特有の難しさはなく、楽にボールが上がっていく。かといって、そこはアイアン。高すぎることはなく、目線の高さから大きく外れることはない。飛距離も十分に出ている。狭いホールのティショットや、シビアなパー5の2打目にも重宝できる。
通常、中空アイアンというと、飛距離を重視するモデルが多い。もちろん、この「T-MB 716」も飛距離は十分出るのだが、それ以上に「やさしさ」が際立った。そのやさしさは、人気の「AP2」以上といってもいいくらいだ。マッスルバックのシンプルさを求めながらもミスへの寛容性を求めたい人には最適のアイアンと言えるのではないだろうか。