今週の月→金コラムは、いまやプロアマ問わずバッグに1本は入っているユーティリティ。その初めの「1滴」にまつわる話です。1988年(昭和63年)9月に発売されたインテストは、「タラコ」の愛称で爆発的に売れ、ユーティリティという新たなカテゴリーを誕生させました。
同伴競技者がキャディさんに向かって「タラコの5番ちょうだい・・・」などと言ったら、一瞬「?」。首をひねることだろうが、いずれこのような会話がゴルフ場のあちこちで聞かれるようになるかもしれない。
ともかく評判の「インテスト」である。このロングアイアンが形状といい、色といい、タラコに似てなくもないのだ。タラコの3番にタラコの4番、なんとなく語調もいい。
このユニークなアイアンを開発したのが横浜ゴム(株)スポーツ事業部に席を置く例の3人組である。例の、というのは、先にハイテクドライバー「μ-240」を開発して評判をとったという意味であり、3人組とは斉藤真吉主管、朝吹英世氏、そして工業デザイナーの後藤照雄氏のことを指す。
ではインテストは何が評判になっているのか。それは従来のリニアで考えられていたアイアンセットを、ノンリニアで設計した点である。
リニアとは直線。つまりこれまでのアイアンセットは、軟鉄を素材にするならロングアイアンからショートアイアンまですべて軟鉄を用い、製法も鍛造なら全部鍛造で作っている。ステンレスのロストワックスにしても、これは同じだ。
このようなセットの仕切りをリニアという。しかしインテストは非直線(ノンリニア)でセットを作ってしまった。
それがどのようなものであるかについてはおいおい説明するとして、ノンリニアの発想はどんなところから生まれたのだろう。まずそのへんについて斉藤主管が語る。
「プロゴルファーのクラブセッティングを見ると、だいたいバラバラ。ロングアイアンだけはピンを使うとか、ピッチングやサンドだけは昔からの使いなれたものを使うとか。
これはキャリアの豊富なアマチュアについても同じ。
それならばロングアイアンならロングアイアン、ショートアイアンならショートアイアンの性能を際立たせた別々のものを作って、その個性を組み合わせてみたらどうかと考えた。
キャリアのある人ならこの思想を受け入れてくれるだろうというのが出発点になっている」
つまりロングアイアンなら飛距離が出る。ショートアイアンならグリーン上でピタリと止まる。そのようなボールを打ちやすいクラブが作れないか、ということなのである。
(1989年チョイスVo.46)
その②の記事はこちら↓↓
ユーティリティのルーツ 横浜ゴム「インテスト」② ロフト30度以下ならカーボンのメリットが生かせる・・・
その③の記事はこちら↓↓
ユーティリティのルーツ③横浜ゴム「インテスト」プロから届いた一通のFAX・・・「カーボンの1番を使わせてほしい」
その④の記事はこちら↓↓
ユーティリティのルーツ 横浜ゴム「インテスト」④200ヤードの“恐怖心”をなくすために・・・