3打差リードで迎えた最終ホールで
まさかのトリプルボギー
1打1打を丁寧に、慎重に、苦労して、我慢して71ホール目まで積み重ねてやってきたゴール直前の72ホール目で、フランスのジャン・バンデベルデは悪夢と出逢った。1999年の全英オープンだった。この年はスコットランドのカーヌスティ・ゴルフリンクスで開催された。
最終日、最終ホールで2位に3打差をつけていたバンデベルデが、まさかのトリプルボギーを叩いてしまったのだ。
問題は、最終ホールのプレーだ。第1打をドライバーで右に押し出し、運よく隣のホールのフェアウェイに落ちて、浅いラフに止まった。次の第2打である。もうプレッシャーで腕の振りのバランスの悪いスウィングは、ボールを右に押し出すしかできなかった。
落ちた場所が、ひざまである深く絡まっているラフ。そこからの第3打、ボールは勢いもなく飛び出して失速し、グリーン手前の小川に落ちた。彼は、ウォーターショットを「本気で考えた」が諦めて、再びラフから打ち直し、バンカー。結局トリプルボギーを叩いた。
そして先にホールアウトしていたジャスティン・レナードと無名の選手、ポール・ローリーと並んで通算6オーバーとし、プレーオフとなって結局敗れ去った。
「まるで、おとぎ話のようだよ。どうやって自分が冷静さを保ってプレーしたのかさえ覚えていない」ほど無我夢中で追いかけ、優勝したローリー。
そしてバンデベルデは「100年経ったら、僕のことなんか忘れているさ。これはたかがゴルフじゃないか。ゲームじゃないか。人生には、もっと辛いことがいっぱいあるんだから……」と憔悴しきった。
ゴルフの神様は、ときに残酷極まりない。(文・三田村昌鳳)