今週の月→金コラムはボールの話。「飛んで、止まる」相反する2つの性能をひとつのボールに込める、ある意味、無理難題にトライするメーカーの裏話を、わたくし月刊ゴルフダイジェストの編集長、福田清実が、ブリヂストンスポーツ・ボール企画室ボール商品企画担当課長の宮川直之氏から聞き出しました。
GD 今回はブリヂストンが糸巻きから、ソリッドに切り替えたあたりからお話いただけますか。
宮川 はい、当時私が入社してすぐの(1994年)頃なんですけど、競合他社の糸巻きボールの方が人気があり、うちのザ・レクスターは劣勢だということを聞いていました。入社してすぐだったので、これは負けていられないという気持ちがありました。
GD ロイヤルマックスフライは糸巻きのボールの「最高峰」を極めたと、言われていましたからね。
宮川 ちょうどその頃、ブリヂストンの強みである「コア」の反発がとれるようになってきたことで、プロでも使えるツーピースボールを目指そう、ということになりました。
GD 糸巻きをやめるきっかけは、プロが使えるツーピースができたといことですね。
宮川 ソリッドに着目したのは、ボールとしての飛距離性能に加え、真球度や均一性といった品質面もあります。やっぱり糸ゴムを伸ばしてグルグル巻きつけないとボールの反発がとれない糸巻きボールよりも、単層コアだけで反発がとれるなら、ソリッド、つまりツーピースボールの方が優れていると考えたわけです。
GD 糸巻きボールの時代は、プロだとハーフで3個、ラウンドで6個。ホールごとにボールを取り換える、そんな時代でしたからね。
宮川 糸巻きボールは打撃によってボールが若干変形してしまい飛びに影響を与えることもありました。また製法上コンプレッションを揃えるのに非常に苦労しましたのでソリッドになり品質面は格段に向上しました。
GD それでできたのが、歴史を変えることとなる「レイグランデWF432」というボールですか。
宮川 WFは「Wound Feeling」の略で、糸巻きフィーリングがソリッドでできた!とのメッセージが込められています。当時はどうにか糸巻きの打感をソリッドで出したいというのが目標でした。
GD 思い出せば、プロが使えるか使えないかと言ったら、グリーン周りのスピン量でロイヤルマックスフライ VS レイグランデWF432という図式でしたよね。
宮川 はい、そうでした。ツーピースでコアとやわらかいカバーを組み合わせると、ボール全体の反発がとれなかったので、WF以前のツーピースはとにかくカチカチにして、コアでもカバーでも反発をとりながら、ただ飛ぶだけのボールしか出来ませんでした。プロが使えるには、カバーをやわらかくしなくてはいけない。そこで出合ったのが「軟サーリン」と私たちは呼んでいたんですけど、やわらかいサーリンでした。WFができたきっかけです。
GD 今のボールと比べたら?
宮川 今のツアーボールと比べたらスピン性能は劣っていますが、そうですね・・・イメージ、ブリヂストンでいえば、今の「ジョーカー」くらいのカバーの硬さです。
GD 今のジョーカーだと、プロからグリーン周りのスピン性能が足らないと言われるレベルですね。
宮川 でも糸巻きに比べたら圧倒的に飛距離がでたので、プロの考えも変わったのだと思います。
GD ジャンボが使って、あれだけ活躍したわけだし。
宮川 PGAツアーでもニック・プライスが使って、トッププロの“お墨付”をいただいたというのが大きかったと思います。
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