“暗黒の欧州ツアー”と呼ばれた時代があった。
それは1970年代後半から1980年代半ばまでの時期を指す。当時の欧州ツアーは米ツアーに実力的に大きく離されて低迷していた。
その頃、スペインのセベ・バレステロス、そしてイングランドのニック・ファルド、スコットランドのサンディ・ライル、ウェールズのイアン・ウーズナム、ドイツのベルンハルト・ランガーら欧州ツアーのプロたちが、20代の若手選手として台頭してきた。彼らは「“暗黒の欧州ツアー”をなんとか活性化しよう」と意気込んでいた。
「やはり、なんといっても1985年の“ライダーカップ”で、アメリカチームに勝ったことがブームの発端だったと思う。セベ、ライル、ウーズナム、ランガー、それに僕も含めて頑張ったことが、ヨーロッパのゴルフ熱を高めたと感じている。欧州ツアーは賞金も安かったけれど、僕たちは年齢もほとんど同じだったから、それがいい意味でのライバルになれた。お金じゃなく、まずお互いの技術を研鑽しあって、いずれ世界レベルの選手になろうと頑張ったんだ。そうすれば欧州ツアーも次第に活性化してくるだろうと……」(ファルド)
彼らの目標は、世界のメジャーを制することだった。まずセベが1980、83年にマスターズで優勝。その後のマスターズでも、ランガー(85、93年)、ライル(88年)、ファルド(89、90、96年)、ウーズナム(91年)と続けざまに優勝するなど大活躍し、欧州勢の強さを見せつけた。ちょうど1957、58年生まれの選手たちである。
彼らによって、欧州ツアーが蘇ったことは言うまでもない。(文・三田村昌鳳)