2015年日本オープンの舞台になった六甲国際ゴルフ倶楽部のグリーンキーパーを勤める橋本康弘さんに迫ったノンフィクションの第2回目。

全員で力を合わせ
最高の舞台に整備する

橋本は43歳で六甲国際GCのグリーンキーパーになったが、ゴルフ場に勤務して、コース管理の仕事に携わるようになったのは、30歳を越えてからだという。そこまでの経緯が少々、変わっている。

「出身は九州最西端の五島列島で、幼少の頃に兵庫へ越してきました。会計事務所のバイトで経理を学んだ後、21歳で人材派遣会社を起業。25歳からは神戸でショットバーと画廊を開き、経営をしていました。

ところが、30歳のときに起きた阪神淡路大震災で被災。やむなく閉店することになったんです」 被災で負った深い心の傷を癒すため、橋本は半年間に渡り、アジア諸国を巡る放浪の旅に出た。このとき、橋本はゴルフと出会う。

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「フィリピンを訪れたときに、ゴルフをする機会があって、これは面白いとすぐにハマりましたね」 プレーも楽しかったが、それよりゴルフ場で仕事がしたいと思うようになり、帰国後すぐに播州東洋GCに入ったという。

「最初は副支配人見習いで、クラブハウス内の業務をしていたんですが、面白くなくてね(笑)。頼みこんで、2年間の約束でコース課に“移籍”させてもらったんです」 

コース管理の仕事にやりがいを感じた橋本は、2年間の約束を無視してコース課に居座り、グリーンキーパーとしての修業を積んだ。

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そして37歳のとき、グリーンキーパーが心臓病で突然亡くなってしまい、サブを務めていた橋本さんがキーパーに昇格。そこから先は前頁に記述のとおりだ。

「去年のサントリーレディスは、硬くて速いグリーンに仕上がりましたが、LPGAからは“やりすぎ”と言われちゃって(笑)。でも、やればまだ速くできる。グリーンの芝は目砂で茎を守り、葉だけが表面に出るようにして、短く刈るのが理想。

粒が角張った目砂だと転圧で硬さが出せるんですが、ウチは角の取れた目砂を使っているので、横根を張らせて芝の力で硬さを出すんです。薬や肥料で調整するのではなく、まずは健康な芝に育てることが大事なんです」

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6月開催のサントリーレディスで優勝争いを展開したのは、今季平均パット数3位の成田美寿々と同1位のイ・ボミ。これがグリーンの質の高さを証明している。

「昔は自分と同じようにできない部下に腹を立てたこともあった。でも、ある人から言われたんです。できないからといって、頑張っている人間を責めるのは“イジメ”だと。その一言で目が覚めた。それからは信じて仕事を任せ、みんなで最高のコースを作り上げていこうと思うようになりました」

日本オープンを目前に控え、橋本さんはこの3年間を回想する。「みんなで力を合わせて、日本一を決めるのに相応しい舞台に仕上げました。でも日本オープンは通過点。今後は更に六甲国際GCをワンランク上のレベル、ステージに上げるのが目標。

コースだけじゃなく、レストランやキャディさんも含めた、全員で作っていけるといいですね。関西には廣野GCを筆頭に名コースが幾つもある。まだまだ、これからですよ」

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昨年の日本オープンはアダム・スコットの2年連続の参戦によっても話題となり池田勇太の連覇を阻む小平智の優勝で幕を閉じた。日本オープンにふさわしい舞台となった六甲国際ゴルフ倶楽部、来週のサントリーレディスではどんなドラマを見せてくれるだろうか。

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