どんなに体を鍛えても、どんなにスウィングの研究をしても、それだけでゴルフがうまくなるとは限らない。良いショットを生み、良いスコアを残すためには、プレー中の動きを正しくコントロールすることが大切なのだ。
世界でも数少ない、フィジカル(体)、メンタル(心)の両面からゴルフを教えることができるティーチングプロ、ドクター・デビッド・ライトの実戦メンタル・トレーニングで効率良く、素早く上達しようではないか。
メンタルトレーニングは
なぜ必要なのか?
不調に陥ってしまったとき、多くのゴルファーは、スウィングをチェックします。また、ほとんどのティーチングプロも「今のスウィングはトップの位置が悪かった」とか「アライメントがおかしかった」といった指摘をします。みんな、スウィングのメカニカル・チェックに大わらわなのです。
しかし、ゴルフは非常にメンタルなスポーツです。メカニズムそのものよりも、メンタルな面でスウィングを崩している場合も、多々あるのです。ほんの少しメンタル面を考えるだけでスウィングが良くなるのに、メカニカルにスウィングを考えすぎて、よけいにスランプに陥っていく人もいるわけです。
ちょうど精神病の人に、胃潰瘍と同じような、腹を切る手術をするようなものです。結果は言わずと知れたものでしょう。
私はゴルフでは、ルーティン(手順)を最も重要視しています。ルーティンは、日常の生活に必要なっだけでなく、ゴルフにも必要なものです。多くのゴルファーはこのルーティンを、軽く考えすぎているのではないでしょうか。
私の言うゴルフのルーティンは、フィジカル面とメンタル面からなっています。フィジカル面のルーティンとは、ボールの飛球線後方に立つ、ボールに近づく、アドレスする、打つ前にワッグルする、といった体の動きをいいます。
メンタル面のルーティンとは、打つ前に何を考えるか、緊張した場面ではどうするか、ミスショットした後どう対処するか、といったことです。
ギャラリーがたくさん見ている中での1番ティでのショットや、優勝のかかったパットでは、誰もが緊張すると体が固くなり、リズムが速くなります。これはメカニカルな問題ではないのです。フィジカル面とメンタル面はちょうど、チェーンの輪のようにつながっています。メカニック・スウィングを追求するだけでは、ゴルフが上達しないという理由はここにあります。
私は、スウィングをメカニカルな面とメンタルの面の両方で教えていますが、今回は、メンタル面を中心に説明しましょう。
緊張を克服することが
メンタルトレーニングの第一歩
ゴルフにおいて重要なルーティンを私は①プレスウィング・ルーティン(スウィング前の手順)②インスウィング・ルーティン(スウィング中の手順)③パストスウィング・ルーティン(スウィング後の手順)の3つのカテゴリーに分けています。
この3つを順番に説明していこうと考えているのですが、その前にまず、プレスウィング・ルーティンを妨げる最大の要因である”緊張してあがる”という状況をどう克服するかについて、考えてみましょう。メンタル面のルーティンがなぜ必要なのか、どういう効果があるのかを理解する、手助けになるはずです。
1936年、サム・スニードが初めてマッチプレートーナメントに出場したときのことです。1番ティで非常にあがってしまったスニードは、ボールが見えなくなってしまったのです。偉大なプロですらあがることがあるわけですから、アマチュアが1番ティのファーストショットでドキドキするのは、当たり前のことなのです。
あがってしまったサム・スニードはどうしたのでしょうか。
彼は、自分が今までたくさん練習してきた中で、一番いいショットを思い出し、頭の中でそのイメージを強く描きました。そしてナイスショットをして、1番ティを出ていったのです。
あがってしまう、緊張するとどうなるか。科学的に言いますと、胸がドキドキし、血圧が上がり、呼吸が荒くなり、体が固くなり、そして体の動きが速くなります。緊張を抑えるためには、まず体の動きをゆっくりにすることです。ゆっくり歩き、クラブをバッグから取り出して、クラブの重さを感じ、グリップの握りの強さを感じてみることです。
次に、プレッシャーの原因となる”先のこと”を考えるのをやめます。右にOBがあるとか、左にバンカーがあるとか、先のことを考えるから興奮し、緊張するのです。目の前のこと、自分が今すべきことだけを考えることです。サム・スニードのように、練習場で打ったナイスショットのボールだけを強くイメージしてみてください。
(1995年11月チョイスVol.89)
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