今週の月→金コラムは、世界でも数少ない、フィジカル(体)、メンタル(心)の両面からゴルフを教えることができるティーチングプロ、ドクター・デビッド・ライトの実戦メンタル・トレーニングをご紹介しています。
スウィング前に
何を考えるべきか
緊張する、あがるという、一見救いようのない状況でも、理論的に考えて緊張する要因を取り除いていけば、克服できるということがおわかりいただけたでしょうか。コースに出て実践してみれば、ゴルフにおいてメンタルな側面が、いかに重要なものなのか理解できると思います。
さてそれでは、第1の手順、プレスウィング・ルーティンについて説明していきましょう。
フィジカル面でのプレスウィング・ルーティンは、よく雑誌などで扱われています。ボールをティアップして飛球線後方に立ち、それからアドレスしてボールを打つまでの手順です。上手なプレーヤーほど、このフィジカルなルーティンは、いつも一緒なのですが、さらにレベルの高いプレーヤーは、この時、何を考え、何をイメージするかまで、いつも決まっています。これがメンタル面でのプレスウィング・ルーティンなのです。
メンタル面では、まずターゲットをはっきり定めること。それに対して、どういうボールを打つのか、しっかりとビジュアライズすることです。以前に経験したことのある最高のショットを頭の中に描いてみましょう。
スコアのことや、ここでバーディーを取ろうとか、右にあるOBラインというような、先のことを考えてはいけません。今、ボールを打つために何をすべきかだけを考えることです。私がスウィング前に行うメンタル・トレーニングは次のようなものです。
風を読み、ヤーテージを決めたなら、バッグからクラブを選ぶ。クラブを選んだら、できるだけゆっくり動きます。ボールの飛球線後方に立って、ターゲットラインを決める。ゆっくり深呼吸する。今まで経験したナイスショットのイメージを頭に描きます。
素振りをする。素振りをするときは、メカニックにスウィングを考えないことです。トップの形がどうとか、肩を深く回すとかを考えない。このときの素振りは、バランス、テンポ、フィニッシュをフィーリングするだけなのです。
ボールの前に立ったら、ボールを見すぎないこと。ターゲットを明確に描き、ターゲットに向かってボールが飛んでいくイメージを持ちます。再び深呼吸し、ターゲットに対してのイメージを強く持って、素振りで感じたフィーリングで静かにスウィングしましょう。スウィングは、素振りのフィーリングのリピートなのです。
スウイング中に
メカニカルな考えは禁物
次に、インスウィング・ルーティンについて説明しましょう。スウィング中は、プレスウィング・ルーティンで説明したように、ターゲットのイメージをしっかり持って、素振りの時に感じたフィーリングだけを大切にすることです。
テークバックはどこから始まるとか、肩を深く回そうとか、メカニカルな考えはしないことです。メカニカルなスウィングチェックは、練習場だけで十分です。コースに出たら、いかにスムーズにリラックスしてスウィングするかだけを考えましょう。
ひとついい例を紹介しましょう。私は、自分のチェック(小切手)にサインする時、何も考えずに、スラスラとします。何度も何度も繰り返し、体で覚えたサインです。すでに何千回、何万回と書いているサインですから、手が勝手に動きます。
しかし、どうでしょう。もし、私が今書いたサインを1ミリも狂わずなぞって書こうとしたら、まるで小学生のようなぎこちないサインになってしまいます。うまく書こうとすればするほど、線がふるえてしまうのです。ゴルフのスウィングもまったく同じ。機械的に考えてクラブを振れば振るほど、筋肉は緊張し、ぎこちないものになってしまいます。
素振りのときはバランス、テンポ、フィニッシュだけを考え、フィーリングをつかみます。部分、部分のチェックは不要です。そして、素振りで感じたままにスウィングすることです。何千回と練習し、体に覚えさせたスウィングを呼び起こすことなのです。
練習場でいいショットが出るのに、コースに出たら別人というプレッシャーは、スウィングをメカニックに考えすぎているのではないでしょうか。ゴルフは他のスポーツよりもメンタルな面が強いと言われます。その理由は、ボールを打つまで、そして打った後も、考える時間がありすぎるということです。
何度も繰り返すようですが、多くのゴルファーは、このタップリある時間をフルに使って考えすぎ(特に悪い方に)ているのです。
(1995年11月チョイスVol.89)
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