”ロイコレ”を一躍有名にした「タイプH」
今世紀初めからの7~8年、国内のツアーでは、片山晋呉、伊澤利光、谷口徹の三つ巴の戦いが続いていた。この時代はクラブが大きく変わろうとしていた時代でもあった。ドライバーは大型化が進み、また"長尺”という言葉が生まれるほどに長さが注目されていた。
そんな中、フェアウェイウッドでも後に名器と呼ばれるモデルがいくつか生まれている。
代表的なのは、90年代末デビューのキャロウェイ・スチールヘッドだ。ドライバーもあったがチタンへの移行期に勝負できず、姿を消した。しかしフェアウェイウッドはその後末永く生き続ける。シャローフェースでしかも内部にウェートチップを装着して、低重心にしたことで、芯でとらえやすく、弾道も強い点がプロたちを惹きつけた。片山や谷口が長く愛用したことからも、このクラブの性能の高さを窺い知ることができるだろう。
シャローフェースのフェアウェイウッドといえば日本ではロイヤルコレクションが先駆け。スチールヘッドが発売された年、メジャーチャンピオンのニック・プライスと使用契約を結び、2000年にスーパーCV BBDがデビューする頃には、国内ツアーに深く浸透。
「フェアウェイウッドウッドのロイコレ」を決定付けたのは04年に登場したスーパーCV BBDタイプHだった。ヘッドはコンパクトでなおかつ後方側の高さがあり、フェースは完全に右を向いていた。安心できるその顔に多くのプロがそそられた。また低重心ではあったが、低すぎないのが特徴であり、スピンコントロール性に優れていた。
当時この両社が覇を競っていたのは、クラブに並外れたこだわりを持つ片山晋呉が初の賞金王に輝く2000年シーズンに両方使っていたことでも明らかだ。ついでに4Wはテーラーメイドのレイラーと実に多彩だった。
一方彼の好敵手だった谷口のお気に入りは一貫してスチールヘッドである。彼が片山から賞金王の座を奪ったのは2002年だが、当時キャロウェイの契約だったので使うのは不思議でないにしても、その後キャロウェイを離れても、4+Wと5Wだけは、不動。いわば不可侵の領域となっている。
今ではフェアウェイウッドに飛びを求めるプロが多いが、職人肌の谷口にしてみればコントロール性を犠牲にすることはできないのだ。
ロイコレは現在、スーパーCVの名こそ消えたが、BBDは依然同社のフラッグシップの地位を保ち続けている。
文/近藤廣
(月刊ゴルフダイジェスト2014年12月号より)