名器と呼ばれるクラブを比較する月刊ゴルフダイジェストで連載中の企画「ギア!名勝負」。第14回の今回は、2000~2001年に登場し、高反発ドライバーとして市場を賑わせた キャロウェイ「E.R.C.Ⅱ」とテーラーメイド「R300Ti」をご紹介。

21世紀ドライバーとして、「高反発」が登場した

“飛びすぎ”によるヘッドの反発を規制しようとする動きがUSGA(米ゴルフ協会)を中心として高まったのは、90年代後半。当時高反発化に狙いを定めていた多くのメーカーが反対したのは当然のことである。キャロウェイはこうした状況にあって、00年初め、「E.R.Cドライバー」を発売。USGAが設けた反発規制値をはるかに超えるもので、実際その飛びは大きな話題となった。

画像: 左:キャロウェイ「E.R.CⅡ」(2000年発売)、右:テーラーメイド「R300Ti」(2001年発売)

左:キャロウェイ「E.R.CⅡ」(2000年発売)、右:テーラーメイド「R300Ti」(2001年発売)

「E.R.C」は日本専用モデルだったので、必ずしもルールに違反するものではなかった。日本はR&A(英ゴルフ協会)傘下にあり、USGAの規制は適用されず、キャロウェイもあくまでレジャーゴルファー向けとしていた。さらに同年末、「E.R.CⅡ」が登場、「E.R.C」はつかまりすぎるという声が多かったため、重心特性を調整したもので、ヘッドも一回り大きくなり、反発は「E.R.C」に優るとも劣らなかった。

ゴルファーから「つかまりすぎる」と言われたキャロウェイの「E.R.Cドライバー」(2000年発売)

反発規制に関してダブルスタンダードの状況が続く中、01年にテーラーメイドは「新生テーラーメイド」としてロゴも一新。その象徴となるモデルとして300シリーズ・タイプ‐Rドライバーを発売した。本シリーズは「R300Ti」をはじめ、「320」、「360」の3機種をラインナップ、米国でも発売されたが、それはタイプ‐Rではなく単に300シリーズだった。タイプRの「R」はR&AのRで“R&A承認の日本市場専用モデル”を意味していた。「E.R.CⅡ」同様に高反発である。

画像: 日本限定で発売されたテーラーメイドの「R360Ti」(2001年発売)。高反発モデルであり、ゴルファーの飛距離アップに一役買っていた

日本限定で発売されたテーラーメイドの「R360Ti」(2001年発売)。高反発モデルであり、ゴルファーの飛距離アップに一役買っていた

08年1月からいわゆるSLEルールが適用されることになったため、高反発競争も下火になるが、高反発化の技術がその後のドライバーの進化につながっていることは否定できない。両モデルとも構造的にはフェースの肉厚を部分的に変えることで反発性能を高めたモデルだった。その後反発が一定のレベル内に規制されることになったわけだが、するとクラブメーカーは、規制値内で高いレベルの反発性能が得られるエリアを拡大する方向へと転換。初期の高反発ヘッドはフェースの中央部分の反発性能は飛び抜けて高かったが、センターを外すと高反発のメリットはさほど大きくなかった。

だがその後、高反発エリアが広がったことで安定して飛ばせるようになったという意味では高反発の技術は飛距離性能に大きく貢献している。大型化や低重心とともにドライバーの進化を促した主要な技術であった。

文/近藤廣

(月刊ゴルフダイジェスト2015年7月号より抜粋)

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