南アフリカの雄、ゲーリー・プレーヤーが活躍し続けた1970年代。その後'80年代前半にかけての南アフリカ勢は少し衰退する。そんな折、ひとりのプロゴルファーが一風変わった形で注目を集めることとなる。それが'82年、ニック・プライスの専属コーチとなったデビッド・レッドベターである。
イギリスで生まれ、現在はアメリカを拠点としているレッドベター。そんな彼が南アフリカとどう関係があるかというと、'70年代に南アフリカツアーを転戦した事実が物語る。彼はそのツアーで「自分はプレーをすることよりも、スイング技術やメカニズム、複雑かつ精巧な動きに興味がある」ということに気付く。そこでニック・プライスとタッグを組み、結果を残していく。
そして次に、ニック・ファルドを指導することで、それまでメジャー未勝利だったにもかかわらず'87年の全英オープンをはじめ、メジャー大会6勝という輝かしい結果を生んだ。
そんな優勝請負人とも言えるレッドベターの処女作『ザ・ゴルフ・スウィング』が世界的な大ヒットを飛ばす(邦題はザ・アスレチック・スウィング)。そして、ほぼ同時期にレッドベターは南アフリカ出身のアーニー・エルスを指導することになる。
「膂力(りょりょく)を制御して、方向性とボールコントロールをメカニカルに追求する」というレッドベターの2軸打法理論は、エルスをはじめさまざまな愛弟子たちが取り入れ結果を出す。
そしてエルスは、'94年と'97年に全米オープンを制し、2002年、2012年に全英オープンを優勝。そしてPGAツアー19勝、欧州ツアー28勝という輝かしい成績を残した。つまり、レッドベターに指導によって、再び南アフリカが脚光を浴びることになった。
※チョイス No.198より