あなたはセベ・バレステロスを知っていますか?
欧州ツアー50勝、米PGAツアー9勝、日本でも日本オープン2年連続優勝など全世界で91勝を挙げたゴルフ史上に残る名プレーヤーの一人です。
若干19歳にして、欧州ツアーの賞金王、80年には23歳の若さでマスターズを制覇という輝かしい戦績を残しました。
貧しい家庭に生まれ、幼いころからキャディをして家計を助け、やっと手に入れた3番アイアン1本でゴルフをマスターしたという彼は、常識はずれのミラクルショットで世界のゴルフファンの度肝を抜きました。
スペインが誇るカリスマゴルファーの強さの理由は何だったのか。彼の言葉から、その秘密を紐解きます。
天才ゆえにわかる、タイガーの凄さとは?
ーでは、タイガーとあなたの共通点はファイティングスピリットですか?
セベ それは言えるでしょうね。ただ中身はちょっと違います。タイガーのゴルフをひと言で表現すると”パワーゴルフ”という言葉がぴったりきます。アスリートとして優秀だし、ゴルフに関する感性やセンス、直観力にも秀でています。
もちろんメカニカルな部分も完成されていて、すべてをバランスよく備え持っているといっていいでしょう。わたしは当時としてはパワーもある方でしたが、フィーリング=感性に頼ってプレーをするタイプでした。イマジネーションを最大限に駆使するゴルフを身上としていました。
ーイマジネーションがミラクルショットを生んだわけですか?
セベ わたしは次に打つショットの球筋やライン、それからその球が落下して転がっていく様子まで、すべてがはっきりと見えてしまうことがありました。
ー実際に打つ前に?
セベ その通りです。きっとタイガーは、そういう領域でゴルフをしているんだと思いますよ。
ーところで、カリスマ性を持ったスターは、我々にとって必要な存在ですが、本人は居心地が良いものなのですか?
セベ 今振り返ると、もしかしたらわたしがスターになったのは、早すぎたかもしれない、という思いがあります。何しろ19歳でヨーロッパツアーの賞金王になって、20代前半で全英オープンやマスターズに勝っていましたから、どこに行っても注目されて、窮屈な思いもずいぶんしましたよ。
引き換えに自由を失ってしまったんです。常に若者たちの目標やお手本でいなければならないから責任は重大、そんな風にも感じていました。
2002年3月 月刊ゴルフダイジェスト