カーステン・ソルハイムがアンサーに与えた幅広のスクープソールは、フェースアングルをも安定させるというメリットも見逃せない。たとえばパットに迷ったとき、グリップが悪いためにフェースが間違った方向を向いてしまうことがある。ところがアンサーは、はじめにフェースを目標に合わせてからソールし、その後にグリップしても、フェースは一定の方向を指している。
さらにこの安定感を増しているのが、ソールのセンター部分に残されている平面である。一般のパター(この場合は1980年代のモデル)はトウからヒールにかけて、ソールが丸くなっているのが普通だ。ところがピンパターのソールをよく見ると、全体には舟底型であるにもかかわらず、センター部分に必ず平面が残されている。このわずかな平面が、安定性を増すとともに、ヘッドを芝に吸い込ませるような感覚をもたらす。
他メーカーが真似しようと思っても技術的にそうそう簡単に真似できるものではなかったからだ。普通パターのソールを研磨する場合は、ヘッドを手に持ってソールを回転しているヤスリに押し当てるようにして磨くが、この方法だとどんなに熟練した職人でも、平面を残すことは不可能である。どうしても丸くなってしまうものだ。
そこでカーステンが採用したのが震動研磨法である。砂利のような小さな砥石とヘッドを機械の中で震動させて磨く方法で、これなら鋳造の段階でできた平面がそのまま残っているのである。付け加えるなら、ピンパターの独特の色調も、震動研磨法によって生まれたものなのだ。
ロフトにも秘密があった
カーステンが作ったパターのロフトは4度前後が普通だが、ソール角がマイナスのため、ソールに対して測定すると8度にもなる。これがピンパターの隠された大きな機能といってもいいだろう。パターにこれだけのロフトをつけたのも、ピンが最初である。ロフトのついたフェースは、インパクトの瞬間、ボールを持ち上げるようなかっこうになり、芝面の状態にかかわらず、ボールにオーバースピンをかけやすくなる。
ここまで見てくると、それぞれの角度が性能面で重要な役割を果たしていることが分かる。そしてピンパターは非常にソフトなイメージに仕上がっている。その秘密は、ヘッドの周囲で角ばったところが一点も見当たらないところ。あらゆる部分の角がとれ、丸みを帯びているのだ。このことは、イメージもさることながら、フィーリングもソフトに見せる上で意外に大きな働きをしていると思われる。
※チョイス1985年9月号などから再編集
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