ぶっ飛び系なのに「軟鉄鍛造」アイアン
7番でロフトが30度。飛び系アイアンなので当然ではあるが、一般的なアイアンよりはロフトが少し立っている部類になる。そして珍しいのは、軟鉄鍛造だということ。飛び系というと、鋳造製法で作られたアイアンが多い中、このクラブは上級者が好む鍛造製法で作られている。そのあたりに「上級者にも飛び系を使ってほしい」というメーカーの狙いが感じられるが、実際に打ってみて体感してみよう。
飛び系だけど「打感」や「顔の良さ」も抜群
構えてみた感じでは一般的な軟鉄鍛造のヘッドに比べるとやや大きめ。トップラインも丸みがあり、やさしいそうなイメージだ。若干グースが入っているところを見ると、つかまりも良さそうな印象を受ける。座りがいいので、「ポンッ」と置いただけでターゲット方向に対して、スムーズに構えることができる。ヘッドは大きめではあるものの、形状自体はオーソドックスで、精悍な顔つき。いい意味で、飛び系らしくはない。
フェースに喰いつくように軟らかく、ボールの感触が手に伝わってくる打感だ。高初速で飛んで行ってくれるので、自分のヘッドスピード以上に飛んでいるような感じがする。
飛び系アイアンだと、どうしてもインパクト直後に球が飛び出すような「球離れが早い」ものがほとんど。しかし、「TC544」はインパクトした時にしっかり球をとらえた感触があり、「球を操作している」という実感が沸いてくる。アイアンを使う上で、ここはとても重要なポイントである。
また、深重心設計となっているからか少しフェースの下目にヒットした場合でも、球はしっかりと上がってくれ、打感の良さを損なうことはない。
このクラブはダウンブローで上から打つよりも、“払い打つ”イメージでスウィングした方が、球をうまくとらえることができた。ソール幅が広いので滑らせるイメージも沸きやすい。ソール幅は広いが、うまくラウンドさせた形状であるために「抜けの良さ」は抜群にいい。
ロフトが若干立っているだけに、球の高さに不安を持つゴルファーも多いと思う。しかし「TC544」は、ネックを短くすることで、低重心設計となっており、球はしっかり上がる。
飛び系ではあるが、そのことを忘れるくらい細部の完成度が高い。というのも、飛距離性能は申し分ないが、「喰いつくような打感の良さ」「顔のよさ」「やさしさ」「抜けの良さ」など、あらゆる性能が秀でている。飛距離だけを求めるゴルファーには、もっと適したアイアンがあると思うが、これだけ「総合力の高い」アイアンは少ないのではないか?
「アイアンでも飛ばしたい。だけど打感の良さや顔の良さも捨てられない」と思っているそゴルファーに「TC544」はリコメンドできる。