高弾道で適度なスピン。松山英樹の「スリクソンZ‐STAR XV」
まずは松山英樹が使うスリクソンZ-STAR XVから。ドライバーからアイアンまで、打ち出しから高く飛び出し、そのまま落ちてこない弾道が特徴です。高い打ち出し角で放たれたボールがそのまま落ちてこないのはスピン量が適正に保たれているからだと思われます。打感はやや硬めで、しっかりとボールの芯を感じられます。
アプローチでのスピンはというと、硬めの打感の印象とは裏腹に、厚さ0.5ミリという極薄のウレタンカバーの効果か、しっかりとかかってくれます。球離れはやや早いものの、サンドウェッジのフェースの溝にしっかりと食いつく手ごたえは感じられました。
松山がこのボールを選んだ理由は、弾道の高さにあると思います。彼が優勝した「三井住友VISA太平洋マスターズ」で実際に弾道をチェックしましたが、他のどの選手よりも弾道が高く、ミドルアイアンより上の番手でも、グリーンに対し上空から垂直に落とすような止まり方でした。
もう一つはスピン性能です。ショートアイアンでピン奥から下り傾斜を利用してバックスピンで戻すような狙い方をしたときに、戻り過ぎずにしっかりコントロールされてピンそばに止まってくれる適度なスピン。もちろん打ち方でもスピン量をコントロールしているものの、ショートアイアンでも増えすぎないスピン性能も大きな要因になっているでしょう。
打感 硬めでしっかり
弾道 高い
スピン性能 高い
タイガーの選んだ「ブリヂストンTOUR B330S」
タイガー・ウッズがツアーの復帰にあたり選んだボールとして注目を集めたのがブリヂストンゴルフの「TOUR B330S」。このボールの特徴は打感の軟らかさとスピン性能です。今回試打した3種類プロボールの中で一番スピン量は多く感じられました。
また、打感がかなり軟らかいのも特徴と言えそうです。パターやウェッジだけでなく、ドライバーでも打感の軟らかさを感じさせてくれます。本来、ドライバーで打感が軟らかく感じる=低スピン傾向なのですが、このボールはスピンの効いた中弾道で飛んでいってくれました。
高いスピン性能をもっとも感じられたのはアイアンショットのとき。めくれ上がるような弾道が上空で一瞬ピタリと止まり、そこからゆっくりとグリーンに落ちていく。そういう印象の弾道が打てました。それはバックスピンがしっかりと球の落ち際まで残っている証拠。
スピンが落ち際まで解けないと、ボールが前に「飛びすぎない」。そのため、縦の距離感を合わせやすくなるんです。それでいて吹き上がって前に飛ばないということはない。打感の軟らかさとスピン性能を両立に成功していると思います。
タイガー・ウッズは、以前「スピンはいくらかかってもいいんだ。スピンがかかり過ぎても僕がコントロールできるから」とコメントしたと聞いたことがあります。幼少期に糸巻バラタでゴルフを覚えて、デビュー当時も「コンプレッション90」という軟らかめの糸巻きボールを使っていたタイガー。彼が、この打感の軟らかさとスピン量に惚れ込んだのは、大いに納得がいきます。
打感 軟らかい
弾道 中弾道
スピン性能 非常に高い
タイトリストニュー「プロV1X」で早くも結果をだしたスピース
2017年モデルの「プロV1X」を使用して「エミレーツ オーストラリアオープン」を制したジョーダン・スピース。彼の愛用ボールはモデルチェンジを経てどのように変化したのでしょうか。実際に打ってみると、弾道の高さは今までのプロV1Xと同じくやや高弾道でほとんど変わらないものの、飛び方が力強くなったことに気づきます。スピン量・弾道・飛距離の三要素がバランスよく進化したという印象です。3種類の中での打感は中間の硬さで、弾道はやや高弾道。スピン量は「スリクソンZ-STAR XV」と同等といったところでしょうか。
実は筆者も古くから「プロV1X」ユーザー。ですが、一発打った瞬間に「これはすぐにでも使える(現行モデルから移行できる)」と直観しました。前作と比べてやや軟らかくなった打感には違和感がなく、初速は十分に速く、風に対する強さも感じられたということに加え、前作までと同じコンセプトのままバランスよく進化したことで、コースマネジメントを大きく変える必要がないからです。ジョーダン・スピースがスムーズにボールの切り替えを行い、速やかに結果を出したのにも、個人的には非常に納得がいきます。
打感 やや硬い
弾道 やや高弾道
スピン性能 高い
正直に言って、3モデルで飛距離性能の差はそれほど感じられなかった。それよりも違いが出たのは打感と弾道の高さ。どのボールを選ぶかは、打感と弾道の高さが自分がイメージした通りかどうかの判断になるだろう。打感の軟らかさで選ぶなら「ブリヂストンTOUR B330S」、弾道の高さで選ぶなら「スリクソンZ-STAR XV」、その中間を選ぶなら「タイトリストプロV1X」。
それでも悩んだら、タイガー、松山、スピース、どのプレーヤーを目指したいかで選んでしまってはどうだろう。いずれ劣らぬ名ボール。それくらい思い切った選び方が一番の正解……かもしれない。