パットが入るための条件は「いい転がり」にあると言われる。では「いい転がり」ってなんだろう?動作解析が専門の大学教授がその答えに迫り、ひとつの答えを出していた! コロンブスの卵的、驚愕のレポートをお届けしよう。

パッティングには「正解」があった

パットに型なしというように、パッティングには「正解がない」というイメージがある。しかし、運動の動作解析の専門家(学)日本医科大学 日本獣医生命科学大学 運動科学教室の濱部教授はどうやら「正解」を知っているようだ。

画像: (学)日本医科大学 日本獣医生命科学大学 運動科学教室の濵部教授。動作解析の専門家であり、パッティングの転がりを研究テーマのひとつとしている

(学)日本医科大学 日本獣医生命科学大学 運動科学教室の濵部教授。動作解析の専門家であり、パッティングの転がりを研究テーマのひとつとしている

「いい転がり」とはインパクト直後から順回転

濱部教授によれば、パットの成否を分かつのは「転がり」にあるという。

「パッティングが得意ではない人の転がりにはふたつの特徴があります。ひとつはインパクトの後にボールがすぐに回転しないで横に滑ってから転がる場合。もうひとつは、インパクトの瞬間にボールが浮き上がり、ジャンプしてから転がり始める場合です。いずれも、ラインから外れやすく、カップインの確率が低くなります。同じ位置から打っても同じように転がらない理由はインパクト直後の転がり方にあるんです」(濱部、以下同)

インパクト直後の転がり方がボールの曲がり度合いに影響することを、濵部教授は突き止めた。図の左が良い転がり、右が悪い転がりのイメージ

パターヘッドの浮かせ度合いに転がりの秘密があった

つまり、転がりが悪いと、同じラインに同じ強さで打ってもカップインしない可能性が出てくるということ。となれば気になるのは「どうやったら転がりが良くなるのか」という一点だ。

どうすれば「いい転がり」になるのか考えてみてほしい。普通に考えれば「パターの芯で、スクェアにインパクトする」ことが一番大切だと思うはずだ。それはもちろん正解。だが、それとは別に“転がりの良さ”に決定的に影響する、今まで解明されてこなかった要因があるという。それが「インパクト時のヘッドの浮き具合」だ。

「インパクト時、多くの一流ゴルファーはパターヘッドをわずかに浮かせてインパクトしています。にも関わらず、その具体的数値は明らかになっていませんでした。では、どれだけ浮かせるのがいいのか、そこに注目したんです」

そこで濱部教授が制作したのが、ストロークを変えずに、ヘッドの「浮き具合」だけを1ミリ単位で変えられる器具。

画像: 濵部教授の製作した実験装置は同じストロークでヘッドの地面からの距離を変えられるように作られている

濵部教授の製作した実験装置は同じストロークでヘッドの地面からの距離を変えられるように作られている

地面から浮かせることでパターの重心とボールの重心が「揃う」

「2メートル以内のストレートラインのパットを例に、芝の影響を受けずに真っすぐ転がる最大の条件を探るため、パターヘッドを地面から1ミリ浮かせたところから1ミリずつ上げて実験をしてみたんです」

そして、その実験の結果、驚くべき事実が浮かび上がってきたのだという。今まで解明されてこなかったパターヘッドの「高さ」は、やはり転がりに大きく影響していることがわかったのだ。

「実験の結果、ほとんどのパターではヘッドが地面から8~14ミリ浮かせた状態でインパクトすることで『いい転がり』の順回転で転がすことができるようになっていました。キャッシュインやL字型は8~12ミリ、ピン型やマレット型は12~14ミリ浮かせてインパクトをするときれいな順回転がかかることが確認できました」

画像: キャッシュインの場合、地面から8〜12ミリ浮いた状態がいいインパクト。インパクトロフトは「0度」が理想だという

キャッシュインの場合、地面から8〜12ミリ浮いた状態がいいインパクト。インパクトロフトは「0度」が理想だという

なぜ、パターを浮かせた状態でインパクトすると転がりが良くなるのか? その答えは上の図にある。浮かせることでヘッドの重心とボールの重心が同じ位置に揃い、それがいい転がりを生むというわけだ。そして、パターの重心高さは形状によって異なるため、形状によって最適な「インパクト高さ」には誤差がある。

最後に、どうやったら地面からちょと浮かせたインパクトを身につけられるのかも聞いてみた。濱部教授は、そこにもユニークな「答え」を用意してくれていた。

乾電池2本で「ちょい浮き」インパクトは身につけられる

「自宅のパターマットでできる簡単な練習方法があります。まず単4と単3の乾電池を1本ずつ用意してください。単4電池を手前、単3電池をカップ側に2本並べます。そして、手前の単4電池には触れずに単3電池だけを打つようにストロークしてみて下さい」

画像: 乾電池2本で「ちょい浮き」インパクトは身につけられる

おー、なんと! この練習やってみると意外と難しい。でもたしかにヘッドを少し浮かしてインパクトする感覚がつかめる。

「単4電池の直径は10ミリ、単3電池の直径は15ミリ。この練習を続けることで、10ミリ以上15ミリ未満のちょうどいい高さのほどよいアッパーブローでインパクトを迎えられるようになります。それこそが、『いい転がり』を得られるストロークなのです! 電池を2本置いて実際にボールを打ってみるのもいい練習法ですよ」

実際に打ってみたところ、カップに吸い込まれるように転がった。この練習を繰り返せば、転がりのいいパッティングをマスターできる気がしてきたぞ。

濱部教授によると、「赤道の少し下を約4度のロフトを生かしてアッパーブローにこすり上げるように打つ方法と、ハンドファーストに構えてロフトを相殺して赤道を打つ方法と2タイプあるが、どちらを選ぶかは好みにより、どちらでもよく入りますよ」とのこと。いずれにしてもインパクト時に12~14ミリ浮かせて打つことがキーポイントのようだ!

濱部教授の研究室は、まるでインドアゴルフスタジオのような設備。実は濱部教授、教壇に立つ前はレッスンプロをしていたという異色の教授。なるほど、だからこそこんなお役立ちドリルも考案できるのかと納得してしまう。現在はゴルフの授業とスポーツ実習をする傍らゴルフの普及活動と研究も続けている濵部教授。今後も研究成果楽しみにしてますよ!

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