春先から口コミが広がり始め、8月以降使用者が激増した
M2ドライバーがツアーに登場したのは2016年1月のファーマーズ・インシュランスオープンから。この試合では63人の選手がテーラーメイドのクラブをバッグに入れ、うち19人の選手が「M2」を使用していた。ただ、同シリーズの「M1 460」は17人、「M1 430」 は8人が使用しており、トータルでは「M1」ユーザーのほうがこの時は多い。
そこからどう潮目が変わっていったのか。テーラーメイドのクラブを使用した選手(契約外も含む)のうち、何人が「M2」を使用したかの推移を見てみよう。括弧内はその使用率の数字だ。
2月 ノーザントラストオープン 26/59(44.0%)
3月 シェルヒューストンオープン 31/67(46.2%)
4月 バレロテキサスオープン 31/70(44.2%)
5月 ウェルズファーゴチャンピオンシップ 29/61(47.5%)
6月 フェデックスセントジュードクラシック 31/75(41.3%)
7月 バルバソルチャンピオンシップ 34/63(53.9%)
8月 ウインダムチャンピオンシップ 41/70(58.5%)
9月 ドイツバンク選手権 24/39(61.5%)
10月 セーフウェーオープン 38/56(67.8%)
11月 シュライナーズホスピタルフォーチルドレンオープン 47/65(72.3%)
こうしてみると、8月以降に使用率が跳ね上がっているのがわかる。これは、M2の性能がツアーで徐々に評判になっていったのに加え、ナイキがゴルフクラブ事業から撤退したことも影響している。クラブ契約フリーとなった同社の契約プロが使用を開始したことで使用者が増え、11月の試合に至っては、47人がM2を使用。これはその試合に出たうちの約「3人に1人」がM2を使用したということになる。
マキロイも、タイガーも使用した
もうひとつ特筆すべきは使用率ではなく使用「者」のほうだ。先に挙げたクラブ契約フリーのプロの中には、ロリー・マキロイとタイガー・ウッズが含まれる。
2016年10月のHSBCチャンピオンズではロリー・マキロイがM2を使用。11月のダンロップフェニックスでは優勝したブルックス・ケプカがやはりM2を使用。極めつけはなんと言ってもタイガー・ウッズ。タイガーが12月の復帰戦で「M2」を使用したことはゴルフ界全体で大きな話題となった。
また、セルヒオ・ガルシア、ラッセル・ノックス、ポール・ケーシーといった契約外を含む好調選手が「M2」を使用していた事実も印象的だ。
2016年の全米オープンを制したダスティン・ジョンソンや、世界ランク1位(2016年12月26日現在)のジェイソン・デイは「M1」を愛用するが、それでもツアー全体でのインパクトという点では、M2に軍配があがると言って間違いなかろう。
飛ばし屋として知られ、自身ゴルフクラブ設計家でもあるプロゴルファーの吉田一尊は、週刊ゴルフダイジェスト2017年1/10・17合併号の記事内でこうコメントしている。
「やさしいヘッドを使ってミスがミスにならないから嫌、というプロもいますが、ラフに行っていたボールがファーストカットに残るほうがいいに決まっています。いいものはいいと素直に認め、実戦投入する米ツアーのプロは合理的ですね」
M2はM1に比べ直進性が高く(逆にいえば球筋を操りにくく)、やさしいクラブ。プロでも飛んで曲がらないクラブを使いたい。そう思うのは当然で、その時に選ばれたのが「M2」だったということだろう。
日本ツアーでは「M1 430」が人気
PGAツアーで圧倒的に「モテた」M2。きっと世界中どこでも大人気に違いない……と思いきや、さにあらず。チャンピオンズ(米シニア)やネーションワイド(米二部)ツアー、欧州ツアーではPGAツアーとほぼ同じ傾向(シーズン中盤からじわじわ使用者が増え、8月以降に顕著に増える)だが、LPGA(米女子)ツアーや日本ツアーでは「M1」のほうの使用率が高いのだ。
LPGAではほぼシーズンを通じて「M1 460」が使用率1位をキープ。日本ツアーでは「M1 460」「M1 430」と「M2」の3モデルがほぼ横一線、といった様相を呈している。ちなみに日本の女子ツアーでは「グローレF」の使用率が圧倒的。ただし数少ない(ほぼ唯一と言っていい)M2ユーザーのジョン・ミジョンは2勝を挙げている。
アメリカでは早くも2017年モデルの新しい「Mシリーズ」が発表になっている。新モデルがさらなる人気を集めるのか、現行モデルの人気が2017年も続くのか、その辺りも気になるところ。週刊ゴルフダイジェスト1/10・17号「2017PGAツアー飛ばし最前線」でも、M2ドライバーの人気っぷりを詳細に分析している。こちらも要チェックだ!