いよいよ開幕する2017年のマスターズ! なんといっても松山英樹に日本人として初めてのマスターズ制覇に期待がかかるが、勝てばキャリアグランドスラムのロリー・マキロイや、世界ランク1位のダスティン・ジョンソンら強豪もこの試合に照準を合わせている。果たして勝つのは誰か!? マスターズウォッチャーのプロゴルファー・中井学が大予想!
ダスティン・ジョンソンは優勝候補……ではない!?
毎年マスターズの予想をいろいろな媒体でしてきましたが、今年は非常に予想が難しいマスターズとなりました。正直にいえば、本命不在。本命は世界ランク1位のダスティン・ジョンソン(DJ)だろって? たしかに、現段階で予想するならば、全米オープンも、全英オープンも、全米プロも、優勝の本命はDJです。ただ、マスターズだけはそう言いきれないんです。
というのも、マスターズはロングヒッターが有利と言われますが、DJの場合ちょっと“飛びすぎる”ように思えるんです。コースに対して「余っている」というか。13番や15番はスコアを伸ばしたいパー5ですが、DJがドライバーで気持ち良く振ると、セカンドのライが悪くなってしまう。だからこそ、過去にマイク・ウィアーやザック・ジョンソン、ジョーダン・スピースといった、飛距離自慢でない選手たちも栄冠を手にしているのです。
また、DJは持ち球がフェードです。オーガスタはドローヒッターが有利……というか、ドローが持ち球のほうがティグラウンドで「立ちやすい(違和感なく構えられる)」ホールが多くあります。だからこそランガーやカプルス、ミケルソンやバッバ・ワトソン(左利きのフェードヒッター)らが毎度上位にくるのですが、その点でもどうもDJとオーガスタはしっくりこない印象です。
松山は初日を“スッ”とスタートできるかがカギ
松山英樹選手はといえば、こちらはもちろん優勝候補の一人と言って間違いがありません。ここ数試合調子を落としていますが、それはその分しっかり休めているということ。ピーキング(調子を合せること)にはむしろ好影響ではないでしょうか。ロングアイアンの精度は世界でもトップクラスで、技術的には十分勝てる、普通に勝てる、という領域にいます。
そして、松山選手はなんといってもオーガスタのグリーンとの相性がいい。彼は、アンジュレーションのないグリーンで強く真っすぐ打つよりも、傾斜の強い、速いグリーンをしっかり読みきって入れるパッティングスタイルの持ち主。初日“70”くらいでスッと出て、本人のなかで「いけるぞ」というフィーリングが出たら、そのまま優勝争いに加わってくると思います。
一方で、本人はパッティングを“課題”と感じているようです。いい意味で「入ればいい」と割り切ること。これもメジャーを勝ち切るために必要なことです。
対抗は、2016年にプロ転向したスペイン期待の星
ただ、松山選手が本命かといえば、正直に申し上げて、本命と対抗は別にいます。まずは“対抗”から挙げるならば、それはスペインのジョン・ラーム。2016年にプロ転向したまだ22歳の若者ですが、プロ転向初戦で3位に入り、2017年に「ファーマーズ・インシュランスオープン」で初優勝。
谷原秀人選手がベスト4に入る活躍を見せたデルマッチプレーでも準優勝しました。アマチュアで輝かしい実績を挙げた選手が、勢いそのままにプロ入りし、あっという間に勝ってしまう。タイガーも、スピースも、松山も同じで、スターが出てくるときは、いつもこんな感じです。
ラームは、現代クラブの申し子。クラブが曲がらないことを前提に、ゆるみなく、思い切りよく振り切ってきます。パワーもあって、小技もうまい。しかもオーガスタで有利なドローが持ち球。そしてなにより今現在乗りに乗っている。本命にしてもいいくらいですが、唯一惜しむらくはコースとの相性が未知数。初出場初優勝も十分あり得ると思いますが、ここは対抗にとどめます。
本命は、2016年のライダーカップで大活躍した“PR”
本命に挙げたいのが、パトリック・リード。現在26歳でツアー通算4勝。2016年のライダーカップではシングルスでロリー・マキロイを撃破するなど大活躍し、名を挙げました。
この選手を本命に推すのは、決して一芸に秀でているからではありません。スウィングの精度が極めて高く、なにが上手いとかなにが得意という前に、「ゴルフが上手い」という選手です。トータルバランスがとにかく高いんですね。
最後に、マスターズの知られざる法則をひとつだけ。2009年にマスターズを制したアンヘル・カブレラから2016年に制したダニー・ウィレットまでの8人のマスターズチャンピオンにはある共通点があるのですが、おわかりでしょうか。
2008年〜2016年のマスターズチャンピオンの共通点は?
これ、正解は「全員、契約先のクラブを14本使用」なんです。キャロウェイの選手なら全部キャロウェイ、ピンの選手ならボール以外全部ピンで統一したセットで、戦っている。
実は違うメーカーのクラブを入れてマスターズに勝ったのは、2008年のトレバー・イメルマンまで遡ります。とはいえ、そのイメルマンもウェッジを1本入れただけ。クラブの思想が統一されていることがアドバンテージとなる。マスターズとはそういう試合なのでしょう。
私が本命に挙げたパトリック・リードはといえば……61度のウェッジだけ、タイトリスト。それ以外はボールを含めすべてキャロウェイで統一されています。惜しい! 対抗のジョン・ラームは14本すべてテーラーメイドです。うーん、悩ましいところです。やっぱりラームを本命にしようかな(笑)。
スピースは「忘れ物」をとりにいくことができるか?
もちろん、昨年12番ホールで2度池に入れて優勝戦線から脱落したジョーダン・スピースも、忘れ物を取りにくるはずです。
ロリー・マキロイも当然勝ちにくるはずですが、疲労骨折でツアーを休んだり、その間にドナルド・トランプ米大統領とゴルフをして批判されたりと、どうにも脇の甘さは否めません。今回は優勝争いには絡んでも、勝ち切るところまではピーキングできていないのでは……と予想します。
ジェイソン・デイも本来なら予想に入ってきてしかるべき選手ですが、彼がゴルフをする理由である母親がガンに侵され、手術をした直後。その心の中までうかがい知ることはできないので、今回は予想対象外としました。
そして忘れてはいけないのが池田勇太選手、谷原秀人選手の日本勢です。彼らには、日本ツアーのレベルの高さを証明するようなプレーを期待したいと思います。もちろん、上位争いをする実力は二人とも持っています。
というわけで、最後に私なりの予想をまとめます。
◎パトリック・リード
◯ジョン・ラーム
▲松山英樹
△ジョーダン・スピース
みなさんも、自分なりに予想をすると、マスターズがより楽しめますよ。オススメです!