熊本地震で大会中止に、女子プロたちの長い一日
「KKT杯バンテリンレディス」開催前夜(2016年4月14日)の午後9時26分に熊本を襲ったマグニチュード6.5、震度7の大地震。余震はひっきりなしに続き、その夜、多くの選手たちがホテルのロビーや駐車場で、眠れない夜を過ごしていた。
熊本地震で中止になった女子ツアーと同週に開幕した男子ツアー「東建ホームメイトカップ」。選手たちが自ら声を挙げて、賞金の10パーセントを任意で被災地復興のために支援することを決めた。大会中には、チャリティサイン会も行い、出場選手以外にも、テレビ解説でコースを訪れた石川遼や丸山茂樹らが、集まったギャラリーに義援金の支援を求めた。
4月17日には、マスターズから帰国した松山英樹が同じダンロップ契約の香妻琴乃とともに、神奈川県の練習場でチャリティサイン会を行い、寄付を募った。
青山加織はSNSで全国と熊本をつなげた
青山加織は、16日の未明の本震からわずか10数時間後には、自身も避難所にいながら自分の元に届く支援物資を、同じ被災者に届けることを決意。翌日には知人宅に拠点を移し、軽トラックも借りた。自らハンドルを握り、配送を始めた。
威力を発揮したのが、青山たちが仲間内で立ち上げたフェイスブックページだ。ここで集まった情報から、マスコミではほとんど報道されない高齢者ばかりの過疎集落へと青山自ら物資を運んだ。
度重なる余震の中でも、被災後の様子や感謝の気持ちをフェイスブックページを通じて発信。普段は2000件のアクセスが、17万件に跳ね上がった。全国から支援物資が届けられ、支援の輪はどんどん広がった。
「最初は何をしたらいいのかわからなかった。でも、動くしかなかった。熊本の人のために何でもしたいという気持ちでいっぱいだった」(青山)
熊本出身の女子プロたちが一念発起。熊本が第二の故郷の大山は賞金を寄付
熊本で青山が奮闘する一方、試合で元気にしようと出場を決意したのが上田桃子、笠りつ子、一ノ瀬優希の熊本勢。熊本地震で中止になったKKT杯バンテリンレディスから一週間後、「フジサンケイレディス(静岡・川奈ホテルGC)」が開催された。自宅も被災、家族が小学校に避難している上田は、悩みに悩んだ末の出場だった。
フジサンケイに出場した5人の熊本出身ゴルファーは、全員予選通過。また、熊本勢ばかりではなく、熊本を応援する女子プロたちが、熊本で被災するファンとひとつになろうと戦った。
このとき優勝したのは、宮崎出身で熊本中央高校出身の大山志保だ。日大に進んだ後、再び熊本に戻り、元LPGA会長・清元登子の下で4年間、熊本空港CCで腕を磨いた。高校ゴルフ部と研修生時代、大山のプロゴルファーとしても下地を築いた7年間を過ごした熊本は第2の故郷だった。
「1日も早く元の生活に戻って、皆さんの笑顔が戻るように願っています。少しですけど、気持ちだけでも届けば」と、優勝賞金1440万円を被災者支援のために寄付した。
顔晴れやかに!「顔晴ろう」
フジサンケイレディスを終えた翌日、古閑美保の呼びかけに上田桃子、有村智恵、笠りつ子らが東京都内で募金活動を行った。1時間半で792人から計146万4343円の義援金を集めた。
手製のくまモンイラスト入り募金箱に書かれた文字は「頑張ろう」ではなく「顔晴ろう」。つらいことにも下を向かず、顔を晴れ晴れしていこう、との意味を込めた。
震災から1年が経ち、今年2年ぶりに「KKT杯バンテリンレディス」が開催される。大会コンセプトは「みんなde熊本!みんなのクマモト!」に決定。熊本の復興への思いが詰まったメッセージだ。女子プロたちの思いの詰まったトーナメントで繰り広げられる熱戦を、楽しみにしよう。