タイガー、キンクミ、トンプソン。「天才キッズ」がスターになる例はむしろ稀
“天才”と呼ばれる少年少女は星の数ほどいる。だが期待通りに成長しプロで活躍する者はさほど多くない。4歳の頃から全米で注目を浴び、米ツアー通算79勝を挙げているタイガー・ウッズは天才少年がそのままスーパースターに成長した稀有な例といえる。
そのタイガーに「勝ちたい」一心で世界ジュニアに挑戦し、タイガーと同じ8歳で世界ジュニアを制したのが金田久美子。小学生の頃から“ちょっと生意気”だった天才少女だがプロでの初優勝は21歳。ちょっと物足りない気はするが成功例のひとつだろう。
国内メジャーのワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップに来日したレクシー・トンプソンも数々の最年少記録を塗り替えてきた天才少女。14歳で男子の試合に出場し注目されたミッシェル・ウィはプロになってからなかなか期待に応えられなかったが、レクシーは今のところ順調にスター街道を歩んでいるといえそうだ。
「タイガーを超える」と言われた男は32歳。今もツアーを目指している
そんな成功例とは裏腹にいつの間にか“あの人は今”的存在になる元天才キッズも多い。最たる例が2001年、わずか16歳でPGAツアーデビューを果たしたタイ・トライオンだ。「タイガーを超える逸材」とまでいわれた彼だが、プロ入り直後に伝染症単核病という奇病に冒されまったく活躍できなくなってしまった。
当時彼がレッスンを受けていたデビッド・レッドベターアカデミーの関係者によると「試合中も突然眠気に襲われたり倦怠感が続くなど、若者に突然起こる病気」と説明していた。以降、まったく日の目を見ないまま月日は流れ現在32歳。フロリダ在住の彼は妻と子供とともにかつての夢=プロとして成功する夢を追いかけているという。ちなみにPGAツアーはプロ入りの年齢制限を18歳と定めているが、それはタイ・トライオンの失敗例を教訓とした判断だった。
日本に目を向けると10歳で世界ジュニアに勝っている伊藤涼太が思い浮かぶ。14歳で日本アマ2位、その年の世界アマでも予選突破を果たし、国内男子ツアーのサントリーオープンで史上最年少(14歳2カ月)予選通過記録を樹立した。しかし次第に表舞台から遠ざかると、プロ入り後はほとんどメジャーツアーに出場できていないのが現状。凄かった時期を目の当たりにしているだけに、残念という思いは強い。
さらに“リトル・タイガー”と呼ばれた加賀崎航太も期待通りにはいっていないようだ。10歳(2009年)のときタイガーと9ホールのエキジビションマッチを行ったとき、緊張よりも自信を身にまとっていた天才レフティは、居を構えるオーストラリアのほか、カナダ、アジアなどのツアーカードを取得しているが、未だ優勝などの朗報は聞こえてこない。とはいえまだ20歳。勝負はこれからだ。
天才とうたわれたゴルファーがただの人になってしまうことは多い。逆にアマチュア時代まったく注目されなかった選手がプロで大輪の花を咲かせるケースもある。1つ確かなのはゴルフが上手い子供は大人にちやほやされる傾向があるということ。おだてられて育った天才たちは必ずしも逆境に強くない。良いときもあれば悪いときもあるのがゴルフ。どんな天才キッズも“普通”に育てることが大事だと思うのだがいかがだろう?