「チーム松山」一丸となって、メジャーの舞台にピークを“持ってきた”
2017年の全米オープンは初日から「記録」が続出する展開でした。初日は44名がアンダーパー。リッキー・ファウラーの出した7アンダーも初日の最少スコア。続く2日目は世界ランクトップ3が予選落ちを喫しました。
そんな中、初日2オーバーと出遅れた松山英樹も、2日目7アンダーで82位から8位タイにジャンプアップし、優勝争いに加わります。
3日目の主役はジャスティン・トーマスでした。上がり15番ホールからバーディ、パー、バーディとスコアを伸ばすと、18番で決めればメジャー最小スコアを更新する「63」というイーグルパットも落ち着いて決めました。伸ばさないと勝てない。それが今回の全米オープンだったと言えます。
最終日は、朝から肌寒く風の強い荒れた天候でのスタート。グリーン上でボールが動き、パットを仕切り直す選手も出るほどでした。
その中で、ジョーダン・スピースが最後にようやく彼らしいプレーを見せてくれて「69」の好スコアをマークします。一方で、復調してきたスピースでも69止まりかという空気でもありました。
そんな中、松山も首位と6打差を追ってスタート。出だしからバーディパットをしっかり決めたことで、優勝のために必須だった「ビッグスコア」への期待が膨らみます。その後上位陣が伸び悩む中、次々とバーディを重ね、気がつけばトップとは2打差。日本人初のメジャー制覇、その歴史的瞬間に立ち会えるか! という興奮を覚えました。
松山に関して言えば、練習量が多いこともあり、ここに至るまでは故障や体の痛みもあったはずですが、トレーナーやサポートするチームが一丸となってメジャーにピークをもっていけるようにしっかり準備してきていました。
飯田光輝トレーナーの話では「この数週間で体を休めながら痛みをとり、体の痛みがない状態で挑めた。メジャーで優勝することを目標にしているので、2位になったからといって満足することはない。次の全英オープンに向けてまた準備します」とのこと。見事な戦いぶりでした。
「自分のやるべきこと」を最後まで実行し続けたケプカ
最近の米ツアーやメジャーでは、最終日にさらに伸ばせなければ優勝できないというのが当たり前になっていますが、優勝したブルックス・ケプカは落ち着いて、それを実現したことで勝利を手にしたように思います。風の中でも持ち味のパワーと正確性で、自身がやるべきことをシンプルに実行していました。
日本人選手では、小平智、宮里優作も決勝ラウンドに進出しました。大会を3オーバー、46位タイで終えた小平の言葉が印象に残っています。
「自分の持ち味であるドライバーショットを生かせば戦えるという手応えを感じた。米ツアーだけでなく欧州ツアーにも挑戦したい」というもの。自分の武器を信じて、全米オープンという舞台を戦い抜きました。
宮里優作は2日目までは危なげないゴルフで予選を通過したものの、「3日目、最終日は手も足も出なかった。シビアなホールのロケーションにしっかりと攻められなかった」と語っていました。
ただ、彼のアイアンのショット力を持ってすれば手も足も出ないことはないはず。やはり、優勝を争った松山やケプカは「やれる、できる」と自分を信じる力が、他の選手に比べて強かったように感じました。
そうやって自分を信じられるのは普段の練習やトレーニングの積み重ねの賜物であることは間違いありません。一方で、普段から「自分はメジャーで勝てる」と信じているからこそ、練習やトレーニングを続けられるということもあるんだと思います。
自分で自分を信じられなければ、誰が信じてくれるでしょうか。明日は舞台となったエリンヒルズGCをプレーできることになりました。「俺はあそこに打てる」「このバットは入る」と、一打一打自分を信じて、明日は激闘の余韻が残る全米オープンの舞台を回ってみようと思います。