2番のイーグルで見せた圧倒的な技術力
「今回の4日間を通じて一番良かったのはアプローチだったと思います。会場のファイアストーンCCのラフは、逆目になるとクラブが抜けないんじゃないかというほど粘っこいものでしたが、それをモノともせずにタッチを合わせていました。さすがは世界のトップ選手です」
そう語るのは、今回のブリヂストン招待を現地で取材した吉田洋一郎。最終日の18番ホール、思い切り振って350ヤードを飛ばしたショット力もさることながら、松山の“進化”をもっとも感じたのは、アプローチのテクニックだったという。
「カット目(ストレートに下ろしてきて、ややインサイドに抜けていく軌道)に入れつつ、フェースを返さずに抜いていくイメージで、打ち終わった後、フェース面が自分のほうを向くような打ち方をしています。基本的にはフェアウェイからはこの打ち方でボールを止めています」
そのアプローチの冴えが生んだのが、2番ホールのチップインイーグルだった。
「2番のチップインイーグルを、ちょうど真後ろから見ていたんですが、これが凄かったんです。セカンドがグリーンの奥にこぼれ、ラフから結構な下り傾斜に打っていくアプローチでしたが、打った瞬間は“ポッコン(ボールがフェースに乗らず、真上にポンと上がってしまうミス)”かな? と思ってしまったほどでした」
ところがそのボールがグリーン上の複雑なスネークラインをスルスルと進み、見事カップインする。
「ラフの中から、完璧にボールを殺して、落とし所をコントロールしていたんですね。ボールの下に絶妙にフェースをくぐらせることで、狙った場所にスピンをかけずにボールを落としているわけです。完璧にコントロールされたアプローチでした」
現地で取材していると、飛距離でも世界のトップであるダスティン・ジョンソンに遜色ないものがあったという松山のショット力。そこに、ここ数年大きく進化した、世界基準のアプローチ技術が加わっている。松山英樹に、いよいよ死角がなくなってきた。
現在発売中の月刊ゴルフダイジェスト9月号では、巻頭折り込みで松山英樹の進化系アプローチを特集しています。
(写真:姉崎正)