3発打てば“スウィングDNA”がわかってしまう
試打ブースには最新アイアンへッドが並び、見るだけでテンションが上がりますが、フィッティング体験ということもあり、まずはスウィング診断からスタート。
フィッティングは、ミズノがエプソンのスウィング解析機「エムトレーサー」の技術を使って開発した最新の「シャフトオプティマイザー3D」という機械を使って行います。
グリップの下に「シャフトオプティマイザー3D」を装着したクラブでボールを3発打つだけで、その人のスウィングの特徴「スイングDNA」を診断してくれます。今回はアイアンのフィッティングということで、7番アイアンに装着して3発ショットし、フィッターさんの持つiPADに送信されるデータをチェックします。
シャフト選びは重さだけじゃない。合う・合わないを知っておこう
スウィングの診断結果は9項目。
1項目は「ヘッドスピード」。Sは35.8m/sで平均よりやや速め。
2項目めは「スイングテンポ」。トップでのシャフトのたわみ量を元に算出され、平均「5」に対してSはやや小さめの「4」。切り返しのテンポがややゆっくりであることを示します。
3項目めは「トウダウン」。インパクトでのシャフトの下方向へのしなり量を表わし、平均「4」のところSは「3」でやや少なめだそうです。
4項目めは「前反り角」。インパクトでシャフトが前側に逆しなりする量の大きさを示します。これは平均「4」のところ「6」で、Sは前反り角は大きめ。前反り角が大きい人は、手元調子のシャフ
トが合うとのこと。
5項目めは「しなり係数」。スウィングのタメの大きさを示し、平均「4」のところSは「5」でやや強めのタイプ。タメが大きい人ほど、先側が硬めの手元調子のシャフトが合うそうです。
これらの5項目は、おもにシャフトマッチングの参考にされ、Sの場合は100~110gくらいの中元調子で、S~SRくらいのフレックスのシャフトが合うだろうという診断。具体的なシャフト名を挙げれば、ダイナミックゴールドのS200、またはモーダス125のSが合うだろうということでした。
平均スコア90台なのに、合うのは上級者向けの“マッスルバック”だった!
上記5項目は、従来のフィッティングシステムでも計測できたのですが、「シャフトオプティマイザー3D」ではこのほかに新たに4つの項目が診断できるようになり、これらはおもにヘッドチョイスの判断材料に使われます。
6項目となる「インパクトライ角」は、その名のとおりインパクト時のライ角を示し、クラブのライ角を決めるうえで重要です。Sは「59度」と、平均値よりも2度もフラットでした。
7項目めの「シャフトリーン角」は、インパクト時のハンドファースト度合いを示し、Sの場合は「-11度」と平均の「-8度」よりも3度ほどハンドファーストが強め。
8項目めは「アタック角」。ヘッドの入射角を示す数値で、平均「-8度」のところSは「-9度」。
このシャフトリーン角とアタック角は、ヘッドタイプの適正を見るのに有効。合計マイナス値が大きいほどボールを上からとらえるタイプであることを示し、重心が高くロフト設定も多めなセミキャビティやマッスルバックタイプが合うとのこと。反対にレベルブロータイプの人は、ディープキャビティタイプのヘッドがおすすめだそうです。
最後の9項目めは「フェーストゥパス角」で、ヘッド軌道に対してフェースがかぶっているか開いているか。Sは「-6」でややシャットフェースなタイプ。つかまりすぎないストレートネックのヘッドとの相性が〇。
これらの条件からSがおすすめされたのはマッスルバックタイプの「MP5」でした。平均スコア90を切れないSとしては、腕前的にマッスルバックなんて身分不相応だと思っていたのですが、ヘッドの機能として「ロフト多め、重心高め、ストレートネック」のモデルが合うとすれば、意外にアリなのかもしれません。
現実的には、本格的マッスルバックではさすがにミスへの許容量が心許ないとしても、一般的に「やさしい」といわれる低重心・ストロングロフトアイアンがいいとは限らないということがわかったのは新たな発見と言えるかもしれません。
ヘッド、シャフトを決める
さて、ここからは実際にクラブを打ちながらヘッド、シャフトを決めていくのですが、せっかくなので最新モデルのマッスルバック「ミズノプロ118」を打たせてもらいました。シャフトはとりあえず、現在Sが使っているものと同じダイナミックゴールドのS200。
実際に打つ前にまず驚いたのは、試打クラブにライ角のバリエーションが豊富で、普段なかなか打てない「2度フラット」のモデルを試打できたこと。試打クラブではライ角のバリエーションが少なく、アップライトさが気になって試打結果もあまり参考にできない場合も多いのですが、2度フラットなモデルを打てた今回は、構えた段階で気持ちいい。とくにこの「118」は、ミズノの軟鉄鍛造アイアンならではの顔の美しさも相まって、構えたときのフィット感は抜群でした。
実際に打ってみても、「118」の顔にもライ角にも、引っかかりそうな雰囲気が一切ないので思い切ってつかまえに行けます。その結果、マッスルバックならではのぶ厚くソフトな打感を十二分に感じることができました。
さらに驚いたのは、5番アイアンで27度とロフトが多めの設定なので、予想以上にロングアイアンが打ちやすい点。とくにSの場合、シャフトリーン角もアタック角も多めのため、ストロングロフトモデルのロングアイアンでは、ティアップすると驚くほど飛ぶのに、芝の上からではキャリーが不足しがち。
しかしこの「118」は5番アイアンでも気持ちいい弾道の球が出ました。フィッティングでマッスルバックやセミキャビティが合うと言われたのはこういうことかと改めて納得しました。
人工芝のマットの上では、マッスルバックの「118」でも気持ちよく打てましたが、現実問題、コースで使うとなるとやはりミスヒット時のことを考えると心配です。
そこで残る「ミズノプロ518」と「ミズノプロ918」も試打させてもらいました。こちらも2度フラットのモデルが打てるのがうれしいです。
「518」は、比重の小さいチタンをヘッド中央部に内蔵。4~7番にはトウ側に比重の大きいタングステンを内蔵してヘッドの慣性モーメントを大きくし、ミスへの強さを高めた高機能セミキャビティ。構えた感じは「118」より少しヘッドが大きいかなというくらいで、グースもさほど強くないので非常にシャープ。それでいて打ってみるとはるかにやさしくなっています。ロフトは5番で25度とややストロングながら、球の上がりにくさは感じません。
芯を食ったときの打感は「118」にはやや劣るものの、基本的には「非常にソフト」といえ、かなりバランスのいいモデルです。これならSでも使えるんじゃないかと感じました。
バックフェースが大きくえぐれた「918」は、ボロンを0.003%添加して強度を増した「軟鉄ボロン鋼」を採用することで、軟鉄鍛造でありながらフェースを薄くすることに成功しているそうです。
打ってみるとたしかにやさしく、飛距離も出るのですが、「118」と「518」が顔の感じや打感なども近かったのに対し、「918」はヘッドサイズが明らかに大きくトップブレードも厚いので、上記2モデルとは一線を画し、従来の「JPX」シリーズを髣髴とさせます。
このタイプのディープキャビティにしては顔もきれいですし打感もソフトですが、正直な印象としては、「ミズノプロ」のブランドイメージとしては、背伸びをしてでも「118」か「518」がほしいなというところですね。
結局Sは、「ミズノプロ518」に「モーダス120」を装着したモデルがいちばんいい球が出て、このまま予約してしまおうかと思ったくらいでした。
この「ミズノプロ」シリーズは、構えた顔や打感なども「さすがミズノ」という出来栄えで、ヘッドの仕上げやバックフェースのロゴも非常にカッコいい。さらにいわゆる「吊るし」では売らず、販売にはフィッティングが必須という点で、こだわりのギアという所有感を満たしてくれます。
この「シャフトオプティマイザー3D」を使ったフィッティングは基本的には無料で受けられるため、正直非常にお得です。
自分のスウィングを知るという意味でも、「ミズノプロ」に興味がある人はもちろん、まだ買うと決めていない人でもぜひ受けてみてほしいですね。
※2017年8月21日、一部内容を修正しました