「ライザップKBCオーガスタ」で2017年初勝利を挙げた池田勇太が、昨年と比べてドライバーの飛距離を20ヤード近く伸ばしているのをご存知だろうか。2016年の282.8Y(28位)から300.1Y(6位)と大躍進。その背景には「C6」というまるで“女性用”のようなバランスのドライバーの存在があるようだ。

ヘッドがどれくらい効いているかの目安

バランス(スウィングウェート)とは、ヘッドの効き具合を表記した数値。アルファベットと数字の組み合わせで表され、日本では「D2」バランスが標準であるとされる。

写真は、契約フリーの池田が現在使用している「M1」ドライバーを提供しているテーラーメイドのツアーサポートバスの中にあるバランス計。同メーカーの男子プロのクラブの標準は「D3」。それに対し、池田勇太が使用するドライバーのバランスは「C6」なのだという。数字だけ言われてもピンとこないかもしれないが、これはそれだけ“ヘッドが効いていない(軽く感じる)”ということで、数字だけを見れば女性用クラブのようなバランスだ。

画像: テーラーメイドのプロ用クラブの標準値は「D3」。そこからプロの好みにより調整する

テーラーメイドのプロ用クラブの標準値は「D3」。そこからプロの好みにより調整する

池田のクラブを調整するテーラーメイドのツアー担当・宮野敏一さんに、池田のドライバーに関して話を聞いてみた。

「今シーズンからテーラーメイドのM1 440を使っていただいています。テストの段階で、グリップにウェートを入れて、総重量とバランスを調整しながら試打したところ、一番しっくりきたバランスが『C6』だったんです。かなりヘッド側が軽く感じる仕様ですし、全体の重量も上がっているので相当体力がないと振れないと思います」

画像: テーラーメイドツアー担当宮野敏一さん

テーラーメイドツアー担当宮野敏一さん

ムチの先に重りが付いているのをイメージしてもらうと分かりやすいが、ヘッドが重ければ重いほど、シャフトはしなりやすくなり、ヘッドの重さを感じながら振ることもできる。池田のドライバーは、逆に手元に重さがあり、先端が軽い仕様。その分だけ、シャフトを“自分でしならせる”必要があるわけだ。

では、なぜそのような扱いにくいドライバーを、わざわざ池田は使用しているのだろうか? その答えは、飛ばしに直結するヘッドスピードアップにある。宮野さん曰く、アマチュアゴルファーならば総重量を軽くするのがヘッドスピードアップの一番の近道。しかし、プロの場合、総重量を軽くすると球質が軽くなったり、スウィングが安定しなくなるなどのデメリットが生じる。

総重量が重いことで安定感がありつつ、バランスが軽いことでヘッドスピードはアップする。ただし、使いこなすには技術と体力の両方が求められる。それが、池田の「C6バランスドライバー」の正体のようだ。

C6バランスでも飛ばせるのは体力が上がっているから

ツアーのご意見番的存在の伊澤利光プロに、池田のドライバーについて、話を聞いてみた。

「ボクのドライバーのバランスはD3。テストをしてヘッドの重さやシャフトのしなりを感じながら打てるバランスなんです。勇太が『C6』にしているのはヘッド側が軽く感じてもシャフトをしならせられるくらい体力が上がっているからだと思いますよ」

画像: 自身は「D3」のウェートバランスを好んで使用する伊澤利光

自身は「D3」のウェートバランスを好んで使用する伊澤利光

「プロの使う道具に求められるのは、1日18ホールに合わせるのではなく、4日間72ホール、もっと言えば一年間戦い抜くためにベストなスペックなんです。パワーアップに成功した勇太にとっては、『C6』が一年間トータルでもっとも結果を出せるスペックだと判断したんでしょう」

C6バランスのドライバーを手に、プラス20ヤードの飛距離アップに成功した池田勇太の、シーズン後半戦での“飛ばしっぷり”に、ぜひ注目してみよう!

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