パットを科学的に研究している星谷孝幸先生は、パットは「法則さえ知っていれば、簡単に入ります」と豪語する。そして、「『ボールの5センチ先を見ること』がカップインのコツ」だというのだが……一体どういうことか教えてもらった。

多くのアマチュアはボールを右に押し出している

私はこれまで、何千人というアマチュアゴルファーのパットを調査してきました。その傾向を言うと、右に2~3度の角度で押し出している人が多い。そしてそれは、ボール位置と深く関係していることがわかりました。

右に押し出しやすい人の多くは、ボールをスタンスの真ん中に置いていました。しかし、ボールの位置が中に寄ることによって、体の向き(肩のライン)が目標より右を向いてしまう傾向があり、クラブの引き方も変わってしまいます。

実際に試すとわかりますが、2支点縦振り子ストロークの基本である左足つま先前にボールを置く場合と、スタンスの真ん中にセットする場合では、明らかに後者のほうがインサイドに上がり、これが右に打ち出す原因になっているのです。

ボールを真ん中に置いても、インパクトでアドレスの位置にしっかりヘッドを戻せばいいのですが、多くの人はボールを真ん中に置くと、テークバック側に意識が向きやすくなり、ヘッドの動きを目で追ってしまうので、クラブを引いた時点で目線そのものが右にずれます。そしてそのままインパクトに向かうので、押し出すパットになりやすいのです。

左足つま先前にボールを置けば、ビハインドザボールでボールを見ることができるので、ターゲットが意識しやすく、ターゲットに対して体の向き(肩のライン)がスクェアになり、ターゲット方向へのフォロー意識が強くなります。

画像: パットのストロークは多少なりとも弧を描くため、パターヘッドを目で追ってしまうと、無意識のうちに目線が右に傾きやすい。目線が傾いてしまうと、インパクトにかけてその目線に沿ってヘッドを動かそうとするので、当初のラインに対してボールを押し出してしまう

パットのストロークは多少なりとも弧を描くため、パターヘッドを目で追ってしまうと、無意識のうちに目線が右に傾きやすい。目線が傾いてしまうと、インパクトにかけてその目線に沿ってヘッドを動かそうとするので、当初のラインに対してボールを押し出してしまう

右に押し出すより、引っかけで悩んでいる人のほうが多いのではないかと思う方もいるかもしれません。しかし、実はこれも右に押し出してしまうことと関連しています。引っかけはボールを押し出すのを修正する過程で、オープンスタンスにして左に打ち出そうとする、アウトサイドにクラブを上げて相殺しようとする、というようなクセが付いてしまっているから。いずれにしても、ボールをスタンスの真ん中に置くと、パット自体は確率の悪いものになってしまいます。

打った後は目線を残しすぎない

パットのミスの原因の根本は、ヘッドの動きに目線が動かされることにあります。こう言うと、「テークバックの大きさで距離を打ち分けているからヘッドを見ないと不安」、という方もいるかもしれません。

しかし、距離感はストロークのスピードを変化させることでつかむもの。距離が長ければ速く、短ければゆっくり振ればいいだけなので、テークバックを見る必要はまったくありません。

さて、目線の話に戻すと、よく「打った後はボールがあったところを見続けておきましょう」というレッスンがありますが、目線を残しすぎれば引っかけやすくなるし、クラブを引く方向もフォローの方向もバラバラになってしまいます。しかも、つい目標を見たくなり、打った直後に体を左に向けて「パッ!」と頭を上げてしまうと、ヘッドの軌道は歪み、押し出しも引っかけも起きてしまいます。ヘッドアップを戒めるアドバイスでしょうが、問題点が潜んでいると私は考えています。

ですから、ボールがあったところを見続けておくのではなく、アドレスでは、1.ボールの5センチ先の目印、2.ボールの中心、3.パターヘッドの重心、の3点を結んだラインをイメージしてみてください。そうすることで、パターを狙いに対して真っすぐ引きやすくなり、芯でヒットできるようになります。

画像: アドレスでは目印を凝視。目印を見たまま視界の端にヘッドをとらえながらテークバックし、切り返し後は、ヘッドが目印の上を通過するように、かつヘッドを上昇させるようにフォローを出す

アドレスでは目印を凝視。目印を見たまま視界の端にヘッドをとらえながらテークバックし、切り返し後は、ヘッドが目印の上を通過するように、かつヘッドを上昇させるようにフォローを出す

そして、打つときは、ボールの5センチ先の目印、を見たままストロークします。この一連の動作は、テークバックでなかなか真っすぐ引けないという人にとっての特効薬にもなります。

もう一つ大切なのは、打った後にボールが目印を通過したか、思ったとおりにボールが転がっているかを観察することです。頭は上げず、後頭部を水平にしたままで顔だけを左に向けてください。ボールが転がる姿を見ないと、ボールの切れ方やスピード感覚が身に付かず、上達が遅れてしまいます。このストローク中の目線は、とても重要です。

※「入っちゃう! パットの法則」(ゴルフダイジェスト新書)より

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