松山・石川より若い世代が台頭
小平智が「3位」。今平周吾が「4位」。そして藤本佳則が「7位」。2017年9月4日現在、男子ツアーの賞金ランキングトップ10には、3人の20代選手がいる。ほんの3年前、2014年の賞金ランキングトップ10に20代の選手が一人もいなかったことを思うと、男子ツアーにもついに世代交代の波が押し寄せているように感じられる。
現在20代の男子プロとして、もっとも早く頭角を現したのは言うまでもなく15歳でツアー優勝を果たした石川遼。その後石川遼と同い年の松山英樹が登場し、世界のトップ選手にまで上り詰めたのはご存知の通りだ。松山が戦う世界の舞台に目をやると、松山を含めて世界ランクのトップ10は10人中7名(J・スピース、松山、R・マキロイ、J・ラーム、J・トーマス、J・デイ、R・ファウラー)が20代という驚くべき状況になっている。
再び日本ツアーに目を向けると、1989年生まれですでに実績を重ねている小平、藤本らに続き、昨年あたりから1991年生まれの松山・石川よりもさらに下の世代の活躍が目立つようになってきた。それが、関西オープンで初優勝を遂げた92年生まれの今平、94年生まれの稲森佑貴、96年生まれの星野陸也といった顔ぶれだ。
そんな彼らは「我々の世代とはまったく異なるゴルフをしている」と語るのは、そう語るのは1968年生まれのプロゴルファー・中村修。
「曲がらない道具」に最適化したのが今の20代ゴルファーだ
「たとえば今平選手。9歳からゴルフを始めたとプロフィールにありますが、92年生まれの彼が9歳というと2001年。もう“メタル”という言葉さえ古くなったチタンヘッド全盛期です。ボールも糸巻きボールの時代は終わり、ソリッドボールに完全に置き換わっている。現代の用具とほぼ同じもので、彼らはゴルフを始めている。これがすごく大きいんです」(中村)
今平がゴルフを始めたのが2001年だとして、それから2017年に至るまでに、ゴルフギアは大型化、高慣性モーメント化、そしてなにより低スピン化が進んだ。その結果、ざっくりとまとめるならば、「曲がらない道具」になった。
「20代の選手に共通して言えるのは、曲がらない道具の使用を前提に、インパクトを意識せずに思い切り振り抜いているという点です。私を含めて現在40代、50代のプロは、インパクトの瞬間にボールをコントロールする意識が絶対的にあり、それが抜けません。昔は100%のパワーを出す“マン振り”を滅多なことではしませんでしたが、今の20代はドライバーに関して言うと全ショット“マン振り”。そして、現代の曲がらない道具では、それが正解なんです。振れば振るほど曲がらないわけですから」
中村いわく、現代の大型ヘッドと低スピンボールで曲げずに飛ばす究極のコツは、“インパクトで合わせずに、思い切り振り切ること”なんだという。その先駆者は誰かといえば、タイガー・ウッズ。
1990年代に登場したタイガーは、スピンの多いヘッドとボールで、思い切り振り切るスウィングを実践し、卓越した技術でボールをコントロールしていた。今の若手は、そのタイガーを見て育ち、タイガーの時代よりも進化した曲がらない道具を手にして、タイガーのように思い切り振っている。鬼に金棒状態なのだ。
「タイガーの登場する1990年代後半まで、ゴルフには経験が絶対的に必要と言われていました。それが、タイガーの登場により根底から覆された。そして、ボールとクラブの進化がその傾向に拍車をかけ、今世界中でゴルファーの若年齢化が加速しています。この傾向は、ゴルフギアの進化が続く限り、止まらないのではないでしょうか」(中村)
若手が活躍すればするほど、そのスポーツは盛り上がる。その意味で、プロゴルファーの若年齢化は歓迎だ。一方で、左右高低自在にボールをコントロールする“ワザ師”的ゴルファーがいなくなってしまうとしたら……それは寂しい気もする。