しっかり握るとリズムがよくなる
タイ式アプローチの極意を学ぶために聞いたのが、2017年の日本シニアオープンを制したプラヤド・マークセン。マークセンは、グリップの握る強さが何よりも大事だと話してくれた。
「タイの芝は粘りが強いので、インパクトで少しでもゆるんだら、全くボールが飛びません。よくグリップは力まずにと言われますが、ラフは別。特にバミューダ芝のように粘る芝の場合は、自分が思っている以上に強く握るべきでしょう。ただし、肩や腕に力みが入るとスムーズな動きができないので、グリップを誰かに引っ張られても抜けないくらいの強さで握ることを心がけるといいでしょう」(マークセン、以下同)
マークセン曰く、グリップがゆるまなければ、フェース面の動きも安定するとのこと。だからこそ、ゆるまない握りの強さが必要なのだ。
グリップを「しっかり握る」ことのメリットは2つ。ひとつは、どの番手でも同じように振れること。しっかり握ると、打ち急ぎがなくなるという。
「トップ、インパクト、フォロー、どの位置でも同じ強さでグリップに圧をかけていると、スウィングリズムが整います」
もう一つのメリットは、クラブが暴れにくくなることだ。ゆるまなければ一定のインパクトに近づく。フェースの向きもブレなくなる。
「フェース面のコントロールをするにはグリップをゆるめないことが絶対です」
インパクトの先にポイントが隠れている。
グリップを強く握る必要性は理解できた。でも、それだけでは寄せ名人になれるはずもない。マークセンにさらなるポイントを聞いたところ、ヘッドの走らせ方を教えてくれた。
「アプローチは、どうしてもインパクトでヘッドを強く入れたくなります。でも、それではダメ。ポイントはインパクトではなく、フォロー側にあるんです。僕らは芝を切るように振っているんです」
芝を切るというとカット打ちかと思いきや、そうではない。
「インパクトで左腕を止めることで、ヘッドを走らせます。インパクトで加速させようと手元を急ぐと、ヘッドは逆に減速します。フォロー側で走らせる必要があり、そのためには手を止めてあげればいいんです。ヘッドが走ると、どんな芝でもスパッとヘッドが抜けてくれます」
グリップを強めに握り、左手を止めてヘッドを走らせることがタイ式アプローチの秘密。意識してスウィングするようにすれば、寄せ名人になれるかもしれない。
写真/渡部義一
(週刊ゴルフダイジェスト2016年11/1号より)