谷原秀人、畑岡奈紗、川岸史果、片岡大育。この4人に共通するのはなんだろうか? 答えは、「目標を設定したことで、結果を出した」という点。アマチュアでも参考になりそうな、プロたちの目標設定。その“効果”と“やり方”を探った。

「勝ちたい」理由があると、パフォーマンスがアップする!?

2017年9月第3週、男子ツアーは片岡大育、女子ツアーは畑岡奈紗の勝利で幕を閉じた。この二人に共通していたのは、「この試合で勝つ必要があった」という点だ。片岡は、目標である欧州ツアー出場のためには、欧州との共催が多くあるアジアンツアー出場権を獲得したかったため、アジアンツアーとの共催である「ダイヤモンドカップ」に勝つ必要があった。

画像: 勝ちたい試合で、見事勝利。歓喜の涙を流した(2017年アジアパシフィックダイヤモンドカップゴルフ 最終日、写真/姉崎正)

勝ちたい試合で、見事勝利。歓喜の涙を流した(2017年アジアパシフィックダイヤモンドカップゴルフ 最終日、写真/姉崎正)

そして、2017年は米ツアーを主戦場としていた畑岡にとって、日米ツアー両方の出場権を獲得するためには、11月末に開催される米ツアーの最終予選会までに、日本ツアーで“勝っておく”必要があった。ともに、勝利しなければならない理由があったことが、勝利に結びついたのだろうか。プロゴルファー・中村修は言う。

「片岡選手、畑岡選手だけではなく、マスターズ出場のために2017年の年明けから春先にかけて世界中を転戦し、見事出場資格を得られる世界ランク50位内に滑り込んだ谷原秀人選手もそうですし、畑岡選手の勝利の前週に勝った川岸史果選手も“米ツアーの予選会出場までに……”という思いがあったと聞いています。“この試合に勝つ”または“出る”という確固とした目標がある選手の強さ、それを見た思いです」

ゴルフに限らずプロスポーツの世界では、試合前のインタビューで「最後は気持ちの強いほうが勝つ」というコメントが散見される。いつかは、とか、年末までに、とかではなく「この試合に勝つ」「今週勝つ」という強く具体的な目標意識が、勝利を手繰り寄せるのかもしれない。

この件について、ゴルフを研究テーマとする、日本獣医生命科学大学の濱部浩一教授にも見解を聞いてみると、目先の「目標」だけでは不十分で、その先のさらに大きな「目的」が必要だという。

「4選手ともプロアスリートですから、その“目的”は『メジャーで活躍する』ことだと思います。その“目的”を達成するために、自らが達成可能だと思える“目標”をひとつひとつ達成し、“目的”達成を目指しているのではないでしょうか。そして、その目標を強く意識することで、他の選手との目標意識の差が生じ、それが結果の差として現れたのだと思います」(濱部)

画像: 最終的な「目的」を達成するためには、目標を適切に設定する必要がある(2017年ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン 最終日、写真/岡沢裕行)

最終的な「目的」を達成するためには、目標を適切に設定する必要がある(2017年ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン 最終日、写真/岡沢裕行)

ここで重要なのは、「目的」と「目標」を履き違えてはいけないという点だ。たとえば、平均スコアが120のゴルファーの「目的」が「シングルになること」なのはまったく問題がないが、次のラウンドの「目標」が「スコア70台」なのは意味がないということだ。

「サラリーマンでいえば、一般社員の70%近くが『無理な目標設定は働き手のモチベーションを下げる』と感じているというデータがあります」(濱部)というように、無理な目標設定は、かえってモチベーションを下げてしまい、結果に結びつかない。

話を片岡・畑岡らに戻せば、片岡にとっての「欧州ツアーで活躍する」という目標、畑岡にとっての「日米両ツアーで活躍する」という目標を達成するために、彼らの前には「今週の試合に勝つ」というもうひとつの“目標”が存在したということになる。

背後により大きな目標があるからこそ、目の前の目標への意識が強くなる。その結果、彼らは勝利という成果を得たのかもしれない。

This article is a sponsored article by
''.