飛距離、スピン量、性能は三者三様
一昔前まで、プロモデルは小さく、小さいがゆえに芯が小さく、アマチュアには扱いにくいものというのが定説だった。しかし、昨今はプロの間でもやさしいクラブの需要が高まり、それによって「アマチュアでも使えるプロモデル」が増えてきている。
その代表格といえるのが、鍛造(フォージド)製法のセミキャビティアイアン。プロモデルのカッコ良さと、セミキャビティのやさしさ、さらにはフォージドの打感の良さも相まって、スコア100前後のゴルファーからプロまで、実に幅広い層から支持されている。
そのラインアップに、この秋強力な3モデルが加わった。このジャンルを開拓したクラブのひとつとも言えるキャロウェイの「Xフォージド」、そして複合素材の高機能アイアンとして、今や一番人気の座を不動にしたとも言えるタイトリストの「718AP2」、さらには、近年そのクラブ作りが高く評価され続けているヤマハの「RMX118」だ。
西の海外ブランド二横綱に国産勢としてヤマハが挑む構造とも言えるが、果たして試打結果はどうか。見ていこう。
試打データを見ると、一番飛んだのはRMX118。ロフトが他の2機種の33度に対して31度とややストロングなこともあり、強く前に飛んでいった。それでいてスピン量は顕著に少ないことはなく、グリーン上で止まらない球では無論ない。
それに対して、高さがもっとも出たのが718AP2。スピン量も多く、このあたりは古き良きプロモデルらしい弾道と言える。それに対し、スピンと打ち出しのバランスが取れていたのがXフォージドというイメージだ。
スピン量は3機種ともに6100〜6300rpm台に揃った。少し前までは「番手×1000回転」がひとつの目安と言われたが、今回の結果はおよそ「番手×900回転」前後と言えそう。ボールの低スピン化が進む中、この数字が新たな基準となっていきそうな気配だ。
球が強いヤマハ「RMX118」
個別のモデルの試打インプレッションはどうだったのか、試打を担当したプロゴルファー・中村修に聞いてみよう。まずはヤマハ「RMX118」から。
「ロフトが31度とわずかに立っていることもあり、弾道は上というより前に進むイメージです。セミキャビティというと、左右に球筋を打ち分ける操作性の高いモデルを連想しますが、このクラブはむしろ直進性の高さが魅力のクラブ。シンプルに真っすぐ、ドーンと強い球で攻めることのできるアイアンですね」(中村)
「構えた見た目の話をすると、3機種の中では1番ヘッドが大きかったのがRMX118。その分安心感が高く、トウとヒール側がミラー仕上げになっているから、フェース面をターゲットにスクェアに構えやすいのも魅力です。フェースの開閉で打つというよりインパクトゾーンでフェースを直線的に動かすようなイメージが湧きやすいアイアンですね。性能と顔がマッチしているのは好印象です」(中村)
3モデルの中でもっとも“やさしさ”に性能を振っているのがRMX118。ネックのグース度も他のふたつに比べると強めで、つかまりの良さを思わせる。下目のヒットへの強さも魅力で、まさしく“やさしいプロモデル”と言える。
コンパクトでシャープな「718AP2」
このジャンルの“本命”とも言えるのが718AP2。マイナーチェンジを繰り返しながら、ニューモデルが発売されるたびにその性能と高いデザイン性で人気を博したきたモデルだ。その最新形の打ち心地はいかに。
「トウ側とヒール側、それぞれタングステンウェートが配置されていることで、スウィートエリアが広く、ミスヒットへの強さも感じられました。それでいて打感も良好。相変わらず、いいアイアンです。高さとスピン量が高く安定していたましたね。高い球や低い球、ドロー、フェードと球筋を操ることにも長けています。ただ、マッスルバックのように大きく曲がるというわけではなく、現在のボールとマッチさせた直進性を兼ね備えています。今回試打した中では唯一の複合素材アイアンですが、このシリーズならではの“高機能”を今回も感じました」(中村)
「718AP2は今回試打した3機種の中でヘッドサイズが一番コンパクト。ラフやらいの悪いところでもシャープに振りぬける感じが出ています。マッスルバックの形状が好きな人にはばっちりハマると思います」(中村)
構えた顔は伝統的なマッスルバックの形状だけに、振り抜きの良さ、ラフからの抜けの良さといったイメージが湧いてくる。またネック形状がほとんどストレートであるため、ちょっとフェースを開いたり、かぶせたりといった場合でも構えやすいのも、“技術”を使いたい人にはありがたい。そして、実際に打つと明らかにマッスルバックよりもやさしいのが718AP2の真骨頂と言えそうだ。
直進性の高さと打感を合わせ持つ「Xフォージド」
2007年に初代が発売されて以来、とくに日本のゴルファーの心を鷲掴みにしてきたのがキャロウェイのXフォージド。今回試打したのは、その最新モデルだ。
「直進性、球の高さ、スピン量がバランスよく両立しています。以前取材した深堀圭一郎プロがこのアイアンを『狙ったラインに素直に飛んでくれる』と話していましたが、実際に打ってその通りだと感じました。ソールの抜けもよく、芝の上から使ったときに真価を発揮する、実践的なアイアンというイメージですね。とにかくクラブとしてのバランスが秀逸です。ボールが当たる部分のバックフェースに厚みを持たせているから、打感も軟らかく、分厚いインパクトを感じられます」(中村)
「3機種の中ではヘッドのサイズも中間でプロも使うモデルなのに安心感があります。前作と比べると、スコアラインの入り方が大きく変わりました。本数が減りボールを面で押すようなイメージが強くなりラインに打ち出すように打てますね」
718AP2とXフォージドは、構えた顔がよく似ている。ヘッドサイズがわずかに大きいのがXフォージドで、その分AP2から高い操作性をわずかに減らし、その分オフセンターヒットへの強さや安心感は、Xフォージドのほうがやや高いという印象を受けたと中村は言う。また、Xフォージドの軟らかい打感も、高く評価していた。
最後に、3モデルを試打した中村に、それぞれがどんなゴルファーにオススメかを提案してもらった。
「ある程度ミート率の高いゴルファーで、アイアンに操作性とやさしさを求めたいならば、『718AP2』がオススメです。ミスヒットへの強さと直進性、そして飛距離も求めたいという欲張りなゴルファーには『RMX118』がハマるはず。『Xフォージド』は多くのプロがスイッチしていることからもわかるように総合性能の高さが魅力。打感の良さも出色でした」
プロでもアマでも使える鍛造セミキャビアイアン3モデル。どれを選んでも、必ずや頼れる武器になってくれるはずだ。