中古クラブを選ぶときはまず「アイアンセット」から
中村修(以下、プロ):ゴルフは14本のクラブを使ってプレーしますが、中古とはいえ5万円台でフルセットを揃えるのはなかなか大変では?
藤川さん(以下、藤川):そうでもないですよ。ただ、多少のコツはあります。まず初心者の方が中古クラブを選ぶ際にオススメしたいのが、アイアンセットから選ぶことです。
プロ:アイアンは14本のうち6〜8本を占めるクラブ。なるほど、まずはそこを決めちゃうわけですね。
藤川:そうです。多くのアイアンは「5番アイアンからピッチングウェッジ(PW、あるいはPと表記)」の6本セットになっていますが、初心者の方は「サンドウェッジ(SW、あるいはSと表記)とアプローチウェッジ(AW、あるいはAと表記)」までセットになっているものを選びましょう。
プロ:上級者はサンドウェッジやアプローチウェッジを“単品”で揃えますが、そうするとたしかに意外と値段がいってしまいますもんね……ということで、キャロウェイの「ERCフュージョン」を選んでみました。5番アイアンからアプローチウェッジまでの8本セットで、値段は税込み2万4980円。やや古めですが、今でも十分使えるモデル。
藤川:これでアイアンとウェッジが一気に揃いましたね。
プロ:このアイアンは、カーボンシャフト装着モデルです。アイアンには、カーボンよりも重い(場合がほとんどの)スチールシャフト装着モデルがありますが、カーボンか、アイアンか、そのあたりの判断基準はありますか? やはり、体力に合った重さのクラブを使ったほうが、上達も早いように思います。
藤川:ひとつの基準として握力を聞いたりしますね。握力が40以上ある方はスチールシャフトでもいいのかなと思います。
続いて選ぶのは「ドライバー」
プロ:アイアンを選んだ初心者が次に選ぶのは、やはりドライバーでしょうか。ドライバーは14本のクラブの中で一番飛ぶクラブで、いわば14本の中でもエース的存在です。これを選ぶ際、基準はどうしたらいいでしょうか?
藤川:やはりアイアンを基準にしてもらいたいですね。ゴルフクラブは、シャフトに硬さの設定があります。硬めの「S」、軟らかめの「R」、その中間の「SR」などありますが、先ほど選んだアイアンセットはシャフトの硬さがRでしたので、同じRシャフトで探しましょう。また、初心者の方は、ヘッド容量はなるべく大きいものを選んでもらいたいですね。
プロ:ゴルフクラブのヘッド容量はルールで規制されていて、マックスは460CC。基本的には、大きいほどミスヒットに強くなります。
藤川:いくつか選んでみましたが、ここは「ツアーステージ ファイズ」でいきましょうか。ツアーステージはブリヂストンゴルフがかつて展開していたブランドです。ちなみにお値段は1万990円とかなり安い。アイアンセットと合わせて……3万5970円ですね。
プロ:ファイズといえば2011年モデル。体感的には“ちょっと前”のモデルですが、この値段は驚きですね。多くの場合、初心者はボールが右に曲がるスライスに悩まされるのですが、これは“つかまるクラブ”といって、ボールが右に行きにくいクラブ。ヘッドが大きくてミスヒットにも強いし、いいと思います。
藤川:これでクラブは9本。あと必要なのはグリーン上でボールを転がすためのパターが1本。それと、ドライバーとアイアンの間を埋めるフェアウェイウッドにユーティリティですね。まずはフェアウェイウッドから探していきましょう。
初心者には「5番ウッド」と「ユーティリティ」がおすすめ
藤川:プロゴルファーのセッティングを見ると、ドライバーの次には3番ウッドを入れるケースがほとんどですが、3番ウッドはロフト角というフェース面につけられた角度が少なく、ボールが上げにくいため、初心者には少々難しい。ですので、ウッドは5番からでいいと思います。
プロ:同感です。これは全然恥ずかしくもなんともないですからね。90を切るレベルのゴルファーでも、3番ウッドを抜く人は普通にいます。
藤川:5番ウッドを1本と、あとはユーティリティがあるといいでしょう。選び方のコツとしては、まずアイアンとドライバー同様、シャフトの硬さは統一したほうがベター。また、ユーティリティはロフト角の大きいものを選んでもらいたいですね。そのほうがボールを上げやすいし、やさしいですから。具体的には、24度から27度くらいがいいと思います。
プロ:ということで「ツアーステージ F-HT」の5番ウッドと、ユーティリティは「テーラーメイド バーナーレスキュー」の6番、ロフト28度のものを選びました。それぞれ1990円と8980円。ツアーステージの5番はかなりの掘り出し物と言えるんじゃないでしょうか。
藤川:いいですね。
プロ:5番ウッドは、パー5といって、距離の長いホールで飛距離を稼ぐため。ユーティリティは、初心者の方にとって文字どおりユーティリティプレーヤー的に、非常に多くの場面で活躍してくれると思います。
藤川:これで残ったのはパターだけ。残り金額は1万2000円ほど。パターコーナーへ行ってみましょう。
パターは「ヘッドが大きいもの」を選ぼう
プロ:最後はパターですね。グリーンにオンしたボールをカップまで転がすための道具で、他のクラブと違って様々な形状があります。「パットに型なし」なんて言いますし、僕たちプロの間でも使っているパターの形状は人それぞれです。初心者の方には、どんなモデルを勧めますか?
藤川:ズバリ、大きさです。「パターは大きいものを選びましょう」と言います。
プロ:うーん、シンプル。なぜ、初心者は大きいヘッドを選ぶべきだと?
藤川:大きいヘッドは、余計な動きが制限されやすく真っすぐ引いて真っすぐ打ちやすいので、初心者でも結果が安定しやすいんです。初心者だけではなく、パターに苦手意識を持っている方もぜひデカヘッドパターをお試しください。
プロ:パターの場合は中古ゴルフショップでも試打が可能な場合が多いので、いくつか自分で打ってみて決めるのもいいでしょう。その上で、フィーリングの合うものを選ぶのがおすすめです。ということで選んだのはピンの「TRスコッツデール クレージー」。こちらが1万990円。これで12本ですが……あと2本、どうしましょうか。
藤川:12本でいいと思いますよ。むしろ、12本くらいに抑えるほうがオススメなんです。自分の上達によって買い足していくのもひとつの楽しみだと思いますから。まずは10~12本を目安に選んでみましょう。
ドライバー「ツアーステージ ファイズ」1万990円
5番ウッド「ツアーステージ FシリーズHT5W」1990円
ユーティリティ「テーラーメイド バーナーレスキュー6番28度」8980円
アイアンセット「キャロウェイ ERCフュージョン(5番~PW、SW、AW)」2万4980円
パター「ピン TRスコッツデール クレージー」1万990円
プロ:総額は12本で5万7930円。見事5万円台で揃いましたね。いやあ、揃うものですね。
藤川:そうですね。もちろん、予算次第ではクラブの本数を少なくするなど、もっと低こすとで揃えることもできますよ。まずは我々ショップ店員を味方につけて、何でも聞いてみるのがいいと思います。初心者の方にこそ、ゴルフを好きになってもらいたいですから、懇切丁寧に説明させていただきます!
プロ:クラブが揃ったら、次は我々プロの出番ですね。技術的なことは、なんでも聞いてください。というわけで、5万円台でもクラブは十分揃います。ぜひ、気楽にゴルフの世界へ足を踏み入れてもらいたいですね。
写真/小林司