自分自身で入るラインを創造する
最近は、大きなグリーンや10フィートを超えるような速いグリーンが見られるようになりました。さらに、ポテトチップスのような傾斜が加わると、かなり精度が高い、ラインの読みの技術が要求されることになります。
以前、こんな実験をしたことがあります。2メートルの下りのスライスラインで、ボールとカップの間の斜度は4度。かなり傾斜のあるグリーンでどんなラインならカップインするのか、というものです。
結果は、ボールとカップを結んだ直線に対して、120センチ左に出したラインも、30センチ左を狙ったラインもカップインする、というものでした。つまり、入るラインの膨らみは30~120センチの幅で存在し、ボールのスピード次第でどのようにでも変化するというわけです。言い換えれば、入るラインは無限にあるということ。そしてそれは、スピード(タッチ)とラインの読みが合っていなければカップインは難しいということにもなります。
ラインを読むということは、実は、「自分でラインを創造すること」なのです。ボール速度によって入るラインが無限にある中で、グリーンをどう見極め、どういうラインを自ら創造するか。そして、イメージどおりに打てるかどうかが入る(寄る)か否かの分岐点になるのです。
ラインを創造するための六つの基本
私は科学者として、ラインの読み方を何とか理論化できないものかと色々考えてきました。しかし、残念ながらラインを読むための明確な公式はありません。しかし、次の六つの基本を押さえておくことで、ラインの読みの精度は大きく変わることがわかりました。
【1】傾斜の方向と角度を見る
【2】カップ周辺の1~2メートルの距離の曲がり方を創造する
【3】仮想カップを創造する
【4】転がる時間をイメージする
【5】打ち出し速度をイメージする
【6】ボール速度と減速の仕方を思い描く
特に大切なのが、【3】【4】【5】です。【3】の仮想カップを創造するためには、【4】【5】の転がる時間と打ち出し速度をもとに、カップまでどう転がるかをイメージすることが大切なのです。
また、仮想カップの設定でも、「何となくあの辺り」ではなく、「カップの右10センチ」というように明確にすることが大切です。そして、曲がるラインに対してシステマチックに直線的に打っていきます。
打つときは実際のカップは見ません。そうすれば、左右の曲がりに対する苦手意識が消えて、カップインの確率はグンと上がるはずです。
また、ラインを創造するためには、打ったボールを観察することも忘れないでください。ボールの曲がり方が自分のイメージと同じなのか、違うのかをじっくり見ます。そして、頭に描いたラインと実際にボールが進んだラインとの誤差を埋めていく。この経験を蓄積するのとしないのとでは、上達の度合いが著しく変わってきます。
もちろん、自分ではなく、一緒に回っている人のパットもしっかり見ましょう。私はよく「アプローチ上手はパット上手」だと言っています。なぜなら、アプローチが上手い人は、4人のうちで最後にパットするケースが多いので、それまでの3人のボール速度や切れ具合を学習できるから。そのぶん、ラインの読みの精度が高くなるのです。
外れたパットにも、上達への栄養はたっぷり詰まっているということを、頭に入れておきましょう。
「入っちゃう! パットの法則」(ゴルフダイジェスト新書)より
写真/田中宏幸、有原裕晶