オーソドックスなピンタイプがマッチした
3日目に「気分転換」とパターを換えたことが功を奏し、復調したショットとあいまって一気に2位タイの好フィニッシュにつながった石川遼。使用していたのはオデッセイの「ツアーミルドPrototype #1」いわゆるピン型のごくオーソドックスなモデルだ。
石川はなぜパターを換えたのか。裏側を知るオデッセイのツアー担当・島田研二はこう言う。
「とくに明確な理由はないそうなのですが、エースパター(L字マレットのオデッセイ ix #9プロトタイプ)のストロークに若干違和感があったので、矯正も兼ねて試打をしたところ、エースパターと同じようなフィーリングが出せたので使用に至りました。今後はこの2本のパターを状況に応じて使い分けると思います」
初日は33パットの74(パー72)、2日目は31パットで70。3日目と最終日は28パットで66とショットとパットがかみ合った格好。ではL字マレットからピン型に変えたことでどんな変化が起きたのだろうか? プロゴルファー・中村修によると、キーワードは“重心アングル”だという。
「もともと石川選手が使っていたL字マレットは、重心アングルが小さく、シャフトを地面と平行にした状態で持つと、トウ(先端)側が地面を向くタイプのヘッド。その対極にあるのが同じように持ったときにフェース面が上を向く“フェースバランス”と呼ばれるパターですが、今回石川選手が採用したピン型はその中間に位置するヘッド。
重心アングルが大きいほど、パターの場合フェースの開閉は起きにくくなります。そのため、L字タイプとピン型では、ストロークしたときに大きなフィーリングの違いがあるはず。テークバックでフェースが開こうとするL字タイプだと、開き過ぎないようキープしたり、インパクトで戻したりする必要が出てきますが、ピン型の場合、それに比べるとオートマチックに打てます」
当然ながら、どちらが優れているとは一概に言えず、フィーリングに合う・合わないがポイント。石川の場合、普段はL字マレットにピタリと合っているフィーリングが、今週はピンタイプにマッチしたということがいえそうだ。
近くに寄せれば合格点のもらえるショットと違って、パットはカップインさせることが合格ライン。打ち出しの方向がわずかにズレただけで、前の百発百中だった2、3メートルの距離がかすりもしなくなってしまう。その結果、たとえプロでもちょっとしたフィーリングの違いが、1日数ストロークの違いとなって現れてしまうのだという。
パットが全然上手くいかない! という人は、石川遼にあやかって、たまには“気分転換”もアリだ。