どの数値を見るかで選ぶクラブが変わる
ぶっ飛び系のアイアンではないがアスリート系でもない。やさしさと飛びを両立させたセミアスリートアイアンといえるのが、今回試打した7番アイアンのロフトが30度前後の4モデル。打ったのは、タイトリスト「718 AP3」(30度)、ヤマハ「RMX218」(30度)、ピン「G400」(30度)、ブリヂストン「ツアーB JGR HF2」(ロフト31度)といういずれ劣らぬ人気機種だ。
ロフトはJGR HF2だけが31度と1度寝ているものの、他の3モデルは30度。下の画像の結果を見てみると、飛距離ではRMX218 、打ち出しの高さではG400、初速はRMX218、ヘッドスピードが上がったのはJGR HF2、スピン量が多いのはAP3とおもしろいように特徴が分かれた。
同じロフト30度の中で比較した場合、特筆すべきはRMX218の飛距離。他の2モデルよりも6〜9ヤード飛んでおり、7番で185ヤードとヤマハの激飛びアイアンUD+2を思わせる飛距離を実現している。それに対し、もっともアイアンらしいスピンの効いた弾道だったのがAP3。RMX218に比べると1.5度以上高い打ち出しとなったのがG400となった。唯一ロフト31度のJGR HF2は、ヘッドスピードが上がったことからも、クラブトータルでの振りやすさがうかがえる。
「同じようなロフト」でありながら、結果には微妙な、しかし明確な差が現れた。ここからは、各モデルそれぞれに関して、計測データに現れていないインプレッションを試打者に解説してもらおう。
見た目のカッコよさNO.1……だけじゃない! 「718AP3」
まずはタイトリストの718AP3。アスリートモデルとして大人気の「AP2」の姉妹モデルとして新たにラインアップに加わったモデルで、その売りはズバリ飛距離。とはいえ、そのルックスは実にシャープで、アスリート感が漂う。ゴルファーの物欲を刺激してくるアイアンだ。
「AP3はヘッドの形状はオーソドックスですが、アスリートモデルと比べると一回りサイズが大きく、構えたときに安心感があります。打ってみると吸い付くような打感に弾き感がプラスされていて、シビアな感じがありません。ソールの幅も広くなく、打ち込んでいっても抜けが良いため引っかけにくいのも好感触。やさしく飛ばせるアイアンですが、見た目はアスリートモデルなので、カッコよさを求めるならAP3がおススメです」(堀口)
弾き感 ★★
打感の柔らかさ ★★★
やさしさ ★★★
カッコよさ ★★★★★
プロの5段階評価は以上の通り。4モデルの中で、もっともアスリート色を残した性能と言えそう。そして間違いなくカッコいい。やさしくて、カッコよくて、ちょうどよく飛ぶの三拍子が揃った、安心して選べるアイアンだ。
打感の良さは「JGR HF2」がダントツ!
ツアーB JGRといえばブリヂストンの大人気クラブ。そのアイアンには「ツアーB JGR HF1」と今回試打した「ツアーB JGR HF2」の2モデルがあり、HF1のほうは7番アイアンのロフトが26度の典型的な激飛び系アイアンだ。そして、HF2はそれとは明確に作りが異なっている。
「内部に充てんされているという振動吸収材が効果を発揮しているのか、弾きのいい素材をフェースに使っているのに打感がマイルドです。形状を見ても、トップブレードの厚さやネックの短さ、フェース高さを抑えたヘッド形状から予想される通り、重心が低く、やさしさが満載。アスリートモデルを使いこなせないゴルファーにとっては、やさしく飛距離もでるのでスコアアップの可能性が高いモデルです」
弾き感 ★
打感の軟らかさ ★★★★★
やさしさ ★★★
カッコよさ ★★★★
打感が非常にマイルドなため、弾き感は「星ひとつ」の評価だが、7番アイアンの飛距離は174ヤードと十分に出ている。あえてシルバー一色の外観もカッコよく、こちらも万人におすすめできるクラブと言える。
ジャンボはこれでエージシュート。「G400」は高弾道が魅力!
契約外のジャンボこと尾崎将司が2017年シーズンに愛用し、エージシュートを達成したことで話題となったのがピンのG400。現在じわじわと口コミで評判になっているクラブだ。
「ジャンボさんも使っているというG400ですが、見た目的には4機種の中でもっともフェース長いです。そのためスウィング中のフェースの開閉がゆるやかになります。これにはメリットとデメリットがあります。デメリットとしては、フェースの開閉を使いたいタイプのゴルファーには合わない可能性がある。一方で、テークバックからインパクトまでフェースを開かないように意識すれば抜群の方向性を発揮します。ワイドソールでダフリにも強く、打ち出しの高さと飛距離があり、ミスヒットに強いところも特徴です」(堀口)
弾き感 ★★★
打感の軟らかさ ★★
やさしさ ★★★★
カッコよさ ★★★
ミスへの強さは4機種の中でも屈指。ジャンボも魅了したやさしさと飛距離は、アマチュアゴルファーにとっても大きなメリットとなるはずだ。
飛距離がすごい! ミスヒットにも強い「RMX218」
ヤマハのUD+2アイアンが「プラス2番手の飛び」ならば、同社のRMX218は「プラス1番手の飛び」が売り文句。その言葉通り、今回テストした4モデルの中でもっとも飛んだのがこのアイアンだ。
「弾き感がすごいです。それだけに、初速の速さを強く感じることができましたし、実際に飛んでいましたね。フェースは大きく見えて、明らかにやさしく見える。セミアスリートの中でもやさしい方向に振り切ったモデルと言えるでしょう。そのためミスヒットにもかなり強い。フェース下目に当たっても飛距離の落ち込みは少なく、球もある程度上げてくれる。打ち込むよりも払うように打ったほうがより性能を生かせるモデルとも言えると思います」(堀口)
弾き感 ★★★★★
打感の軟らかさ ★
やさしさ ★★★★
カッコよさ ★★★
4モデルの中で形状のシャープさや打感の柔らかさがもたらす「アスリート感」がもっとも少なく、その代わりに弾き感、飛距離性能、ミスヒットへの強さといった“実利”の部分でのメリットが多いのがRMX218。アイアンにも飛びは必要と考えるゴルファーにとっては、購入検討リストにオンする価値のあるクラブと言える。
「4機種を打ち比べてわかったことは、7番のロフトが30度前後のアイアンは、アスリートモデルのカッコよさと打感の良さを併せ持っている、ということです。もちろんアスリートモデルはカッコいいのですが、扱い切れない、しっかり飛距離を出せないというゴルファーは少なくないと思います。激飛び系では飛び過ぎるという人、飛びは欲しいけどアイアンらしいシャープな形状でなければ嫌という人は、今回試打した“セミアスリートアイアン”がベストな選択と言えると思います」(堀口)
やさしさ・飛距離・カッコ良さ。どれも犠牲にしたくない欲張りな人は、7番アイアンのロフトに注目してクラブを選ぶと、求めるものに近づきやすいかもしれない。
※12月4日内容を一部修正いたしました