2017年の国内男子ツアーが終わった。数多くのクラブが優勝に貢献したが、ボールに限って言えば、今シーズン26試合のうち優勝を飾ったのは4銘柄のみ。タイトリスト「プロV1x」が11勝、「プロV1」が2勝、ブリヂストン「ツアーB X」(新旧)が11勝、スリクソン「ZスターXV」が2勝となっている。ハイレベルな男子プロが選んだ“4球”。それぞれどんな特徴があるのか徹底比較してみた。

同じプロ使用ボールでも、アプローチのスピン量は500回転違った

2017年の男子ツアーの“優勝ボール”は、プロV1、プロV1x、ツアーB X、ツアーB330X、ZスターXVの5モデル。そのうちツアーB330XはツアーB Xにシーズン途中でモデルチェンジしているため、現行品としては4モデルに絞られる。その4モデルにはそれぞれどのような特徴があるのだろうか。試打結果を見ていこう。

画像: 東京都葛飾区のインドアスタジオ「PGST」で、堀口宜篤プロがフライトスコープを使って試打&計測。SW・7番アイアン・ドライバーを4球打ち、平均値を出した

東京都葛飾区のインドアスタジオ「PGST」で、堀口宜篤プロがフライトスコープを使って試打&計測。SW・7番アイアン・ドライバーを4球打ち、平均値を出した

まずはSWで50ヤードを打ってみた。4球打った平均で比較してみると、打ち出し角や弾道の高さはほとんど横並び。しかしスピン量を見てみると最大で約500回転の差が表れ、スピン量が多かったのは賞金王・宮里優作の使用ボールである「ツアーB X」と、プロボールの代名詞的存在とも言える「プロV1」だった。

画像: 同じプロ使用ボールでも、アプローチのスピン量は500回転違った

たとえばプロV1とプロV1xを比べるとV1xのほうがスピンが少ないことからもわかる通り、プロ使用ボールは「X」がつくと、より飛距離重視でスピン少なめのハードタイプである場合が多い。なので、ZスターXVとプロV1xがスピン少なめなのは納得で、むしろこの結果はツアーB Xが健闘していると言えるだろう。

「ツアーB Xは打感が軟らかく、その感触の通りアプローチでのスピン性能も高いですね。おそらく実際のグリーンに打ったら2バウンド目にスピンがギュッと効いてピタッと止まる感じだと思います。プロV1は軟らかさの中に芯があり、こちらもアプローチでのスピン性能は非常に高いと思います」(堀口)

画像: シーズン途中で切り替えた選手たちが次々に優勝し、一躍プロボールの“台風の目”となったツアーB X

シーズン途中で切り替えた選手たちが次々に優勝し、一躍プロボールの“台風の目”となったツアーB X

ツアーB Xといえば、7月に旧モデル「ツアーB330 X」からモデルチェンジし、翌週の「ダンロップ・スリクソン福島オープン」で宮本勝昌が優勝と早々に結果を出スト、宮里優作、片岡大育、時松隆光(契約外)らにも次々に優勝をもたらしたボール。その実力を遺憾なく発揮した。

【7番アイアン】球の高さでプロV1、弾道のバランスでプロV1xが光った

続いて7番アイアンでテスト。飛距離は横並びだが、弾道には個性が表れた。

画像: 【7番アイアン】球の高さでプロV1、弾道のバランスでプロV1xが光った

もっとも弾道が高かったのはプロV1。スピン量ももっとも多く、「止まる」という性能の高さを数字から読み取ることができる。その上で飛距離もしっかりと出ている点にも注目だ。兄弟ボールのプロV1xも、スピン量5000回転超えと実力を示した。高さがあり、飛距離も出ているこのボールの弾道を、堀口プロは高く評価する。

「プロV1xはスピンがしっかり入り、落ち際までスピンが残るのでスピン量が少なすぎて球が上がらない人におススメです。基本性能の極めて高いボールで、飛距離とスピン量、硬さのバランスはプロボールの基準になると思います」

画像: 2017年の男子ツアー“最多勝ボール”であるプロV1x。唯一の二桁である11勝に貢献した

2017年の男子ツアー“最多勝ボール”であるプロV1x。唯一の二桁である11勝に貢献した

賞金王の座を最後まで争った小平智をはじめ、同じく賞金王レースを盛り上げたチャン・キム、そしてダンロップフェニックスで連覇を達成したブルックス・ケプカなど、外国人選手たちからも幅広く支持された結果、11勝を挙げて“最多勝ボール”となったのがプロV1x。やはり、その総合性能は高い。

【ドライバー】プロV1がここでも大活躍! 低スピン性能はZスターXVが高い

最後にドライバーで打ってみると、スピン量が多いはずの「プロV1」が一番飛ぶという意外な結果となった。

画像: 【ドライバー】プロV1がここでも大活躍! 低スピン性能はZスターXVが高い

ヘッドスピードが平均で0.5〜1m/s異なるため、あくまで参考記録といったところだが、アプローチやアイアンのスピン量の多いプロV1が、ドライバーでも飛距離が出せるのはお見事。そもそも、4モデルのうちプロV1は唯一名称に“X”の文字が入らないソフトタイプのボール。本来ショートゲームでのタッチを最優先させたモデルであるはずが、ハードタイプのボールに一歩も引かない飛距離性能を示した。

画像: 小鯛竜也らが愛用するプロV1。ソフトタイプとしては唯一勝利を挙げた

小鯛竜也らが愛用するプロV1。ソフトタイプとしては唯一勝利を挙げた

そして、もうひとつ持ち味を発揮したのがZスターXV。松山英樹の勝負球として知られ、愛用者であるプラヤド・マークセンがシニアで4勝を挙げ、賞金王に輝くなど結果を残しているボールだが、ドライバーで打った場合に顕著な低スピン性能を示した。ヘッドスピードの速いゴルファー、スピン量が多くて飛距離をロスしているゴルファーにとって、この数字は魅力的だろう。

「Zスター XVのイメージはとにかく“高初速”。弾道の最高到達点まで、一気にボールが突き進む感じです。また、プロV1が一番飛距離が出たことには正直驚きました。ドライバーでのスピン量も思ったより少なく低スピンで打ち出しも高い。しっかりと芯のある打感も実に好感触です。」(堀口)

画像: ZスターXVには片山晋呉も信頼を寄せる。松山がこだわり抜いたパット時の“澄んだ音”はぜひ一度確認してもらいたい

ZスターXVには片山晋呉も信頼を寄せる。松山がこだわり抜いたパット時の“澄んだ音”はぜひ一度確認してもらいたい

試打の結果は、やはりというかなんというか、4ボールそれぞれに個性が光る結果となった。賞金王・宮里優作が愛用したツアーB Xはアプローチ性能に強みを見せ、松山英樹の勝負球、ZスターXVはドライバーでの低スピン性能を発揮。最多勝ボールであるプロV1xが総合力の高さを示した。

そんな中、今回のテストではプロV1の性能が目を引いた。アプローチのスピン量、フィーリングの良さだけでなく、飛距離性能の高さも実証し、むしろ2勝にとどまったことが不思議に感じられるほどだった。

画像: ツアーで結果を出した4モデル、どれを選んでも“不正解”はない。自分のタイプと合うものを選べば“大正解”が待っている

ツアーで結果を出した4モデル、どれを選んでも“不正解”はない。自分のタイプと合うものを選べば“大正解”が待っている

アマチュアゴルファーにとって、ボール選びは難しく「正直、違いがわからない」という人も多い。しかし、総合性能の高いボールの使用はスコアにいい影響を与える可能性が高い。今回試打した4モデルは、プロがツアーの現場で性能をすでに実証してくれている。普段のゴルフにも取り入れてみると、スコアアップが実現するかもしれない。

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