ロングパットはランニングアプローチのイメージ
15メートルを超えるようなロングパットになると、2メートルや3メートルは簡単にオーバーやショートしてしまう、そんな人も多いと思います。私も以前はそんなゴルファーの一人でした。
ミスの原因は、長いパットのときにも下半身を固めて肩の動きだけで振る、いわゆるショルダーストロークで打っているからです。これではなかなかカップまで届きません。ショートしたと思ったら、今度はありえないほど大きく振ったり、インパクトで「ガツン!」と力を入れて打ったりする。
距離感どころではなくなり、毎回3パット4パットという結果になってしまいます。つまり、15メートル級のロングパットは、通常のパットの振り方の延長では攻略できないのです。
そこで、非常に有効なのがアプローチの感覚を取り入れることです。イメージは転がしのアプローチ。グリーンの速さにもよりますが、7番アイアンぐらいで転がすときの感覚です。
プロや上級者の転がしの打ち方を見ていると、積極的に右ひざを飛球線方向に送っているのがわかります。これは、フィーリングを出しているのと同時に、小さな振り幅でも下半身を使うことでボールに力を伝えていることを意味します。ロングパットの場合は、ランニングアプローチのように、より積極的に下半身を動かし、体重移動を使ってボールを転がしていきます。
グリップは、ショットと同じように握っても構いません。スタンスはあまり広げないように立ち、インパクト前から、右ひざを軽く左ひざに寄せていくように振ります。フェース面は無理に真っすぐ動かそうとせず、フェースの開閉動作は自然に任せてストロークします。こうすると、思った以上にボールは転がってくれます。
この打ち方は、パットだけではなくアプローチの距離感も養われる相乗効果が期待できます。さらに、ランニングアプローチの際には、「ロングパットだ」と思えば、ダフるミスが防げますし、ダフりそうなライからの状況なら、逆にパターを使うことで芝の抵抗に負けず距離を出せるようになります。
重いパターは距離の打ち分けが難しい
もうひとつ、ロングパットで大切なのがスピード感です。距離感を出すには、どれぐらいのスピードで打ち出せば、どれぐらい転がるか、というイメージをつかむ必要があると言いましたが、そのためには、使っているパターの重さが適正か、ということも重要な要素になります。
最近は、ヘッドまたはパター全体が重いものが増えていますが、重すぎると慣性モーメントが大きくなり、自分の思ったようにパターヘッドを制御できず、ヘッドスピードをコントロールすることができなくなるので、距離の打ち分けが難しくなってしまいます。また、重いパターだと、一旦スピードが乗ると逆に飛びすぎるという意識が働くので、インパクトで緩めるクセが付くという悪循環に陥ることもあります。
「最近ショートが多いからヘッドに鉛を貼ろう」という人がたまにいますが、むやみに貼ると培ってきた距離感を失うことにもなりかねませんので、重量調整は慎重に行うようにしましょう。
距離感は「距離勘」ともいいますから、経験の中で身につけていくものですが、振り方が間違っていたり、道具がそれにフタをしているとしたら、もったいない話。ちょっと考え方を変えたり、理屈を知ることで、ロングパットも臆することなく、自信を持って寄せることができるようになります。
「入っちゃう! パットの法則」(ゴルフダイジェスト新書)より
写真/増田保雄、大澤進二